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小高まあなさん

鳥と怪異と特撮ヒーローが好き。 ひねくれつつも清々しい物語がモットー。

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マウンティングランチ

17/12/18 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:278

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「またコンビニ? 高くつくじゃない、勿体ない」
 今日も今日とても隣から掛けられた嫌味にうんざりとため息をついた。
「お弁当、作ればいいのに」
「できれば外に食べに行きたいんですよ、ずっと会社の中にいると息が詰まるから。ただ、今日は会議が長引いたので仕方なくコンビニなんです」
「ならお弁当作ればよかったのに」
 人の話、理解しないなぁ。
 ぶん殴りたくなる衝動を抑えながら、買ってきたコンビニ弁当の蓋をあける。ミニカツ弁当はお気に入りだ。
 メールのチェックをしながら、デスクで食事を済ます。社畜っぽくって好きじゃないんだが。
「そんなカロリー高そうな。自分で作れば安いしお野菜も取れるし」
 隣の席の年上の同僚はまだ一人で喋ってる。この会社は昼の時間は自由にとっていい。同僚はさっき手作りのお弁当を食べていた。お前の昼休みは終わったんだろ、黙ってろよ。
「聞いてる?」
「カツ、美味しいんで」
 毎回毎回、親の敵のようにコンビニ弁当を叩かれたら、コンビニ弁当の肩を持ちたくなる。
「今はそれでいいかもしれないけど」
「白崎さん、ちょっといい?」
「あ、はい」
 さらなる攻撃は上司のおかげで途切れた。同僚が席を立つ。
 しかしまあ、毎回毎回よく飽きないものだ。
「マウンティング女子だなぁ」
 思わずつぶやくと、反対側の隣にいた同僚がクスッと笑った。
 あれはマウンティングだ。あの同僚にとって、「お弁当を作ってきている私」がかなりのステータスなのだ。お料理が出来て、節約してて女子力高い! コンビニでご飯を買ってる女子力皆無の同僚を気にしてあげて私優しい! 的な。
 引っ掛けたいような男もいない、女性ばかりの会社でよくやる。
 まあ、「毎日お弁当作るなんてすごいですー、私には出来ないですぅー」とか言えば満足するのがわかってて、決して言わない私も大概性格悪いが。

 マウンティングをかわしながら、特に代わり映えもなく日々を過ごしていた。事態が動いたのは、別のチームから人が異動してきた時。
 ショートカットで、シンプルな服装で仕事はできるけど女っぽさは少ない。同僚が上から目線でそう言っていた。
「女を捨ててちゃダメよねー」
 何様だよ。またランチの時にうるさそうだなぁ。
 しかし、意外なことに、お昼時のその人は小さなお弁当箱をカバンから出してきた。
 同僚がガン見してる。
 コピーを取りに行く時にちら見したら、色とりどりの野菜が綺麗に並び、美味しそうなハンバーグも入っていた。
 出来映え的に同僚の負けでは?
 しかし、その同僚は、
「あんなの毎日作れるわけないし」
 とかブツブツ言っていた。必死か。
「お弁当派ですかー?」
「ううん、今日は特別」
 聞こえてきた会話に、
「ほらね!」
 と何故か勝ち誇った顔で同僚が言う。怖いな。
「たまたま恋人が今日休みだから作ってくれただけ」
「えー! 愛妻弁当ってことですかー?! いいなぁー」
 愛妻弁当ではないと思うけど、確かにいいなぁー。
「お、男に作らせるなんて、女として」
 唇をワナワナさせて隣の同僚が呟く。
「たまにお互いに作りあって交換してる」
「えー、ラブラブじゃないですかー」
 隣の同僚は沈黙した。
 プライドが折れたらしい。
 自分でなんにもしてないけど、なんかスッキリした。これで静かになればいいけどなぁ。そんなことを思いながら、財布を掴んでランチに出た。

 マウンティングをこじらせた同僚は、何故か洋服の手作りで張り切りだし、しかしコスプレイヤーの別の子にナチュラルにダメだしされてまた心を折ったりもするのだが、それはまた別の話。
 ってか、懲りろよ。


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