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つつい つつさん

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面影ポロポロ

17/12/17 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 つつい つつ 閲覧数:313

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 私は鏡を見るのが好きだ。朝起きて顔を洗う前の自分の顔も、外を歩いていてふとガラスに映る自分の顔も、寝る前に歯磨きする時に見る自分の顔も好きだった。だからって自分がカワイイなんて自惚れてるわけじゃない。だいたい私の顔なんてクラスでも真ん中か、真ん中よりちょっと上くらいってのが自己評価だ。だけど、自分の顔を見ると落ち着くから、ついつい見てしまっていた。
 中学に入っても基本は給食だったけど、なぜかうちの学校は金曜日だけお弁当と決まっていた。だけど、今は親も忙しい子が多いから、コンビニでお弁当とかパンを買っても何も注意されなかった。だから、私は近所のパン屋で好きなパンを買うのを楽しみにしてた。でも、先々週からゆかりちゃんが張り切ってお弁当を作るって言い出した。私も最初はそれなら作ってもらおうかなって賛成した。賛成したはずだった。
 ゆかりちゃんがパパと結婚して一ヶ月経つ。ママが死んで三年も過ぎてるし、ゆかりちゃんとはそれまでにも食事やショッピングに行ってたから、結婚するのにも賛成だったし、うまくやっていけると思ってた。
 それが、先々週の金曜日の朝、嬉しそうにお弁当を作ってるゆかりちゃんを見て、なぜかむかついた。
「渚ちゃん、美味いこと出来たから期待してね」なんて言われたのも気に食わなかった。だから私は軽い気持ちで自分のこづかいでいつものようにパン屋でパンを買って学校に行った。学校から帰ってリビングのテーブルの上に朝と全く重さの変わってないお弁当箱を置くと「どうだった?」なんて微笑みながら聞くゆかりちゃんを無視してそのまま二階の自分の部屋に籠もった。パパが帰ってきて、私は怒られるかなって怖がりながらリビングに下りたけど、何も言われなかった。ゆかりちゃんの目は赤かった。
 次の週もゆかりちゃんは「今日のはうまく出来たかな?」なんて明るく私に弁当を手渡した。私は自分で何を意地になっているのかわからなかったけど、その日も自分でパンを買い、そしてお弁当箱をテーブルに置き、また自分の部屋に戻った。その日の夕食は不自然なくらい明るい表情でよくしゃべるゆかりちゃんがいた。でも、また目は真っ赤だった。
 お弁当のことでは対立してたけど、それ以外で別にもめていたわけじゃなかった。ちゃんと挨拶もするし、普通に会話もしてた。たぶん、パパに怒られたらやめようかなってそれぐらいで始めたことだから、隠されてしまうと自分でもどうしていいかわからなくなっていた。
 あっとういう間に一週間が経ち、明日は金曜日だった。私は寝る前にシャワーを浴びながら、ためいきをつくと、ふと、鏡に映る自分の顔を見た。
 嫌な顔……。
 私はずっとママにそっくりって言われてきた。近所歩いてても、幼稚園の送り迎えも、学校の授業参観の時も、みんな私のママを見て、「そっくり。姉妹みたい」って言った。私はそれが嬉しかった。
 いつも明るく元気だったママ。誰にでも優しくて、ハキハキしていて、ママの顔はいつも輝いていた。そんなママのとなりで、私もいつも笑ってた。だけど、三年前、急に交通事故でいなくなった。
 今、鏡に映っている私の顔は少しも笑ってなかった。どこもママに似ていなかった。私に有ったママにそっくりなものがポロポロ、ポロポロと顔の表面から剥がれ落ちてしまったような気がした。
 金曜の朝、今日もゆかりちゃんは明るく「お弁当、楽しみにしててね」なんて、お弁当を渡してくれた。少し顔はひきつっていたけど、パパは何も気づかず、「毎週、毎週、渚はいいな」なんてニコニコしている。絶対に怒らなくていつもゆったりしているパパが大好きだけど、こんな時は「ちょっとくらい気付けよ」って怒りたくなる。
 放課後、学校から帰るとゆかりちゃんはいつものように夕食の用意をしていた。私は何も言わずテーブルの上にそっとお弁当箱置き、自分の部屋に戻ろうとすると、ワンワン大声で泣く、ゆかりちゃんの声が聞こえた。
 私はお弁当箱を両手で抱え泣きじゃくっているゆかりちゃんにしがみつき、「ごめんなさい、ごめんなさい」って、何回も何回も謝りながら一緒に泣いた。
 少し落ち着いてからゆかりちゃんは、「軽くなったお弁当箱を持ったら、涙が止まらなくなっちゃった」と言ってはにかんだ。私はゆかりちゃんのびっくりするくらい赤く泣きはらした目を見て、「さすがにパパも気づいちゃうね」なんて言って二人で笑った。
 しばらくしてパパは帰ってきたけど、私とゆかりちゃんを見て気にする様子もなく、「お、今日はハンバーグか」なんて間抜けな感想を呟いた。私は呆れ果ててパパをおもいっきり睨んだ。
「あれ、渚、ハンバーグ嫌いだったか?」
 それを聞いたとき、この先こんな鈍感なパパと二人きりだったらとぞっとした。私は本当にゆかりちゃんがいてくれて良かったって思った。


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