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j d sh n g yさん

学生時代に中国へ行き、漫画創作から小説創作の面白さに本格的に気づく。 なぜか中国語の方がすらすらと小説が書け、日本語での小説はその後から徐々に挑戦。 日常をテーマに書いていきます。

性別 男性
将来の夢 中国語の翻訳家 漫画家昔の夢
座右の銘 芸術は爆発だ

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奇妙な弁当箱

17/12/15 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 j d sh n g y 閲覧数:241

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「取引は極秘だ。くれぐれも用心しろよ」
小太りの男は低い声でそう言った。
「こちらも危ない橋渡ってるんだ。ミスはしないさ」
痩せた体格の男は外を確認しながら答えた。
机には一箱の弁当が置かれている。
「それじゃあな」
痩せた体格の男は事務所の外へ出て行った。
――――――――――
倉前保は弁当販売会社の従業員だ。
あちこちのオフィスや工場へと弁当を宅配している。担当のエリアを回るのだが、なかなかに忙しい。販売車に戻り、次の目的地に向かう。

オフィスの廊下で、倉前保は事務員、宅配員、警備員とすれ違った。
「?」
弁当が段積みに入っているケースを台車で運びながら、保はかすかな重量の変化を感じた。
「…一箱だけ、変わった」
そう、直感した。ありえない話ではない。
そのことを倉前保はよく知っていた。
なぜなら、この世界には”スピリット”を操る者たちが存在するからだ。
ー犯人は、今すれ違った奴らの中にいる。
しかし、向こうも常にスピリットを使用しているわけではない。巧みに隠している。
保は注意深く三人を観察した。早くしないと逃げられてしまう。
「ケータラー(配膳員)!」それが保のスピリットの名前だ。能力は”保存”。あらゆるものをそのままの状態に保つことができる。
スピリットエネルギーの片鱗をケータラーの眼を通して確認する。
「…お前だな!そのビニール袋を見せろ!」
警備員が振り向く。
「…どうか、されましたか?」
その手、いやスピリットの手を保のケータラーが掴んでいた。
「…こいつを、止めろといっているんだ」
警備員は目を見開くと、次の瞬間倉前保の自由が奪われた。
「まさか、スピリットを使えるとはな…驚いたよ」
そう言い終わると、景色が変わった。
顔をあげると、事務員が保のすぐ前を歩いている。慌てて振り向くと、警備員は離れた位置にいて、宅配員があたりを見回している。
…どうなってる?俺は奴の腕を掴んだはず…それに、俺と宅配員の位置が変わった
警備員は足早に去っていく。
「ケータラー!あいつの位置を保存しろ」
ケータラーの指が光り、警備員の足が停止した。
「…どうやら、キミを倒すしかないらしいな。穏便にと思ったんだが」
保存が解け、こちらへ警備員が歩きだす。
「…なぜ弁当を狙った?」倉前保は警備員に尋ねたが、警備員は無視して殴りかかってきた。
「この世は交換で成り立っている。カネとモノ、行動と結果とかな」
ようやく警備員のスピリットが姿を現した。
「こいつの名はチェンジスター」仮面を被った手品師の外見をしている。
「邪魔するようなら…容赦はしないッ」
保はケータラーを発現、拳を叩き込む。
警備員の口元が歪む。保の身体に激痛が走った。
な、何が起きた?殴られたのは…オレ?!
「あまりうかつに攻撃しない方がいい…痛い目を見たくなければな…次はここだ!」
突然保の左眼が見えなくなった。痛みはないが、左の視野が真っ暗になった。すかさずチェンジスターが攻撃を仕掛けてくる!保はケータラーに身を守らせダメージを防いだ。だが、今度は左脚がパイプ管になった。
「何が起きているか考えているなッ?」
「………」ダメージを受けたのは、腹部、左眼、左脚。左眼周りを触ると石化しているのがわかる。

チェンジスターは右腕を電動ノコギリに変化させた。一気に勝負をつける気だ。
保はゆっくりとチェンジスターに身体を向ける。
チェンジスターが右腕を大きく振り上げる!
「…ケータラー、保存しろ」
半透明な正方形がチェンジスターの足元から出現し、閉じ込める。ケータラーの保存能力の一つ、クロージングボックス(密閉の箱)だ。
「う、動けんッ」そう叫ぶ間もなくケータラーの左脚、パイプ管がチェンジスターの腹部を直撃した。

保は弁当箱の袋を取り返し、蓋を開けた。
「こ、これは…」
ケースに小分けされた透明な液体が全部で16個、弁当箱に詰め込まれている。
「み、見てしまったな…これで、終わりだ」
警備員が消え、仮眠中の男が現れた。
「に、逃げられた…ハッ!ニセの弁当箱も元の弁当箱に交換されているッ」
倉前保はなすすべもなく、弁当箱をすべてチェックしたあと配達を再開した。

「やけに時間がかかったじゃないか…それに渡し方が打ち合わせと少し違うようだが…何かあったのかね?」
白衣の男が、弁当箱の中の透明なケースを取り出す。
「実は…」
警備員の男はすべてを話した。
「なるほど…それで、見られた…と」
白衣の男は眼鏡をかけ直した。
「それなら、消すしかないだろうな。このスピリット覚醒薬はまだ表に出てはいない兵器だ。これからは精神を武器とする時代になる」
二人の男は眼下に広がる平穏な都市を眺めた。
倉前保はこの町のどこかにいる。
警備員の男はドアの向こうへと姿を消した。


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