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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

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ベントーベンと呼ばれて

17/12/14 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:408

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学年トップを誇る僕はクラスのみんなから神童と呼ばれていた。誰もが僕の成績を羨ましがり慕われている。
「期末テスト返すぞー」
中学三年の期末テスト。僕が通う学校は周りの学校と比べて難易度が高いと評判。その中でも歴史の授業は特に難しかった。
「今回もトップは白川だ。みんなも白川を見習って頑張ってほしい」
先生はテストを返す前に僕がトップだったことを明かす。もちろん僕は満点なのだから当たり前だが。しかし先生は僕にテストを返す時、ニヤニヤしながら返してくる。いつもと違う先生の表情に疑問を抱く。
「白川にしては珍しく98点だ。惜しい間違いだったな」
この僕が間違いを犯した?神童と呼ばれる僕が間違うことなんて。僕は早くその真実を確認したくて仕方ないのに、先生は未だニヤニヤしている。
「白川らしくない間違いだぞ?問32の問題【最期は聴覚を失っても音楽家として活動をしていた『悲愴』や『月光』を作曲した音楽家は?】答えはベートーベンだよな?」
先生は僕が間違えた問題を大袈裟な声のボリュームで説明してくる。ただその問題、僕はちゃんと答えたはず。
「白川、お前の答えはベントーベンになってた」
先生は僕が間違えた答えを笑いながら言った。もちろんこの会話はクラス中のみんなが聞いている。クスクス笑う声が聞こえてくる。
ただ僕はベントーベンなんて書くはずがなかった。僕がよく聞くクラシックはベートーベンなのだから。なのにどうして?
先生がやっとテストを返してくれたので急いで確認を取る。そこには確かにベントーベンと書かれていた。ただよく見てみると[ン]の上の線は間違ってシャーペンで書かれてしまっただけだった。
「すみません!この字...上の部分は間違って書いてしまっただけで、ちゃんとベートーベンって書いたんです」
僕は間違いではないと主張した。しかし先生はニヤニヤしながら
「往生際が悪いぞ。それはベントーベンだ」
小馬鹿にしてきて話を聞いてくれなかった。僕は悔しかったが、テストの見直しの時に見直さなかった罰だと受け取り、泣く泣く受け入れることにした。ただこの日を境に僕は神童と呼ばれなくなった。そしてみんな僕をベントーベンと呼ぶようになったのだ。
ベントーベンと呼ばれるようになってから、僕はとても辛い思いをするようになった。中でも月に一回給食が無い日は最悪だった。
「おい!見ろよ。ベントーベンが弁当食ってやがる」
「ベントーベン弁当見たーい!」
調子付いたクラスメイトたちが僕のことを指差しながら、弁当を食べることをバカにしてくるのだ。こっちはお母さんが作ってくれた弁当をただ食べてるだけなのに。
「今度からそののり弁さ、一面海苔じゃなくてさ、海苔で音符マーク作ってもらいなよ!」
「ちょっとやめなって!...ベンが怒るって」
次第に僕に直接からかってくるようになり、ベントーベンからベンと略されるようになっていた。

そんなある日のこと、僕の弁当が無くなった。今まで僕に直接危害を与えてくる人はいなかったが、とうとう来たかと僕は考えた。今までイジメにあったことがなかった僕はとても不安を感じすぐに廊下にいた先生に相談した。
「すみません。持ってきた弁当が無くなってしまって」
「ちゃんともう一回確認してみろ」
僕の焦りに先生は見向きもせず適当に対応した。明らかに僕の弁当は誰かに隠されているはずなのに。
「ちょっと誰がやったの!」
何も聞いてくれない先生に諦めた僕の耳に誰かの叫び声が飛び込んでくる。その声はどうやら僕のクラスからだった。
急いでクラスに戻るとそこには、学級委員の片桐がゴミ箱を見て叫んでいた。普段穏やかで優しい雰囲気の片桐がどうして叫んでいるんだろう。
「誰?誰がやったの?このお弁当って誰のなの?」
怒り心頭に発する片桐の言葉に心当たりがあったので、ゴミ箱を覗き込む。そこには僕の弁当箱と中身がぐちゃぐちゃに捨てられている光景が広がっていた。
「これ。僕のだ」
片桐は僕の弁当だと知るとさらに犯人探しをし始めた。
「最低だよ!白川くんの弁当をこんなにしたなんて!誰よ!ねぇ!」
しかし犯人は出てこない。これだけ片桐が言ってくれても犯人は出てこないんだ。僕は諦めて片桐に
「ありがとう。でももういいよ」
と伝える。すると片桐が
「私だってあの問題、ベントーベンって書いたのに。なのに白川くんだけ馬鹿にされるなんて。不公平だよ」
と泣きながら言ってくれた。

その日から僕に嫌がらせをしてくる人はいなくなった。あの事件があったことを先生は知らないし、誰もあの事件のことを触れようとしない。
でもあの日以来、片桐が僕にたくさん話しかけてくれるようになった。
「白川くん、今日お弁当一緒に食べない?」
僕になぜかうしろめたい気持ちを抱いていたけど、その気持ちは解消されたようだ。


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