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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

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弁当インフルエンサー

17/12/12 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:437

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 今年、私が買った弁当箱はついに五十種類を越えた。すべては夫を始めとする『閲覧者』を飽きさせないため。どの弁当箱も、インスタ映えしそうな個性的な弁当箱だ。

 子供が生まれる以前は頻繁に外に出歩いていたので、行った場所や食べたランチなどをインスタグラムに投稿していた。でも子供が生まれて育児に追われる最近は家にいることが多くなったので、投稿するのは子供の成長の記録や、旦那に作った弁当ぐらい。自分が作った弁当を初めてインスタグラムに投稿したら思いのほか反響があった。それから私は、弁当作りに凝るようになった。
 毎日同じような弁当ばかり投稿していたら閲覧者に飽きられてしまう。なので常に閲覧者を楽しませる為の工夫は絶やさなかった。始めのうちは、ご飯の上に海苔で『私を食べてね』というメッセージを添えて私の顔を描いてみたり、『残したら許さない』とごはん全体に大きく太字で書いたりした。閲覧者はとても面白がってくれた。しかしそれを繰り返していると、やがて『いいね』の数が減っていった。飽きられてしまったのだろう。
 そこで今度は弁当箱を変えてみることにした。店で面白い形のかわいい弁当箱を探した。星型やハート型、十字型や便器型など色々あり、それを使ったらまた『いいね』の数が増えてきた。やはりインスタ映えするにはインパクトが大事なのだ。かといってそう頻繁に弁当箱を買っていたら、置き場所に困るし出費もかさむ。もう既に買った弁当箱は五十種類を越えてしまったし、インスタ映えするにはもう弁当箱ばかりに頼っていられない。
 そこで今度は私は、よりインパクトを出すために、弁当の常識を超える弁当を作ることにした。試しに梅干を容器いっぱいに敷き詰めて中央にご飯を数粒だけのせて、それをインスタグラムに投稿してみた。すると今までの数倍『いいね』の数が増えた。これだ。
 味をしめた私はその後も『珍弁当』を作り続けた。便器型弁当箱にミートボール、カラアゲ、ウインナーを敷き詰めたブラウン弁当や、ほうれん草、ピーマン、オクラを敷き詰めたグリーン弁当、そして沢庵、玉子焼き、菊を敷き詰めたイエロー弁当など、インスタ映えを重視した弁当を次々に作っては投稿した。すると、いつのまにかフォロワーの数が十万を超え、ネットでの知名度が一気にあがった。

 しかし日が経つにつれ、夫に笑顔が無くなった。それどころかやせ細り、ついには栄養失調で倒れてしまった。私は閲覧者を喜ばせたり驚かせたりすることを考えて弁当を作ってばかりで、肝心の、弁当を食べてくれる夫のことを考えてはいなかった。インスタ映えするようにと見た目ばかりに気をとられて、肝心の味や栄養のことなど考えてはいなかった。弁当を食べる側のことなどまったく無視していた。そのことに、夫が倒れるまで気付かなかったなんて……。

 それからまた、私の弁当作りは変わった。今の私が作る弁当は閲覧者を喜ばせる為ではなく、夫を喜ばせる為の弁当。私が作った弁当を、夫が嬉しそうに食べてくれる。それが今の私の何よりの生きがいである。


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