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デヴォン黒桃さん

「黒桃将太郎」名義でKindle作家として活動。「デヴォン黒桃」名義で猫面師としてアート活動も。人間ドラマや人の感情に興味があり、書きたい物をジャンル問わず書いております。「黒桃短篇集」発売中昭和浪漫のスコシばかり怪異なお話、アナタの脳髄へソット、注入サせて頂きます。 心の臓のヨワい御方は、お引き返し下さい。 精神に異常をキタしても、責任が取れませぬ故。http://amzn.to/2jPBe4m

性別 男性
将来の夢 りっぱなおとな
座右の銘 悔しいけど感じちゃう

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蓋のムコウに

17/12/09 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 デヴォン黒桃 閲覧数:194

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 どこのクラスにも一人は居るような……昼休みになると、弁当を隠して食うヤツ……
 うちのクラスにもそういうヤツが居た。

 教室の隅ッコの窓側の席に、アイツは居た。
 昼になると決まって、教科書やらノートやらを開いて立てて、壁を作ってゴソゴソと顔を伏せて食っていた。
 そんな冴えないアイツを、バカにしていたクラスの人気者の男がいた。
 昼休みになると、決まってアイツにチョッカイを掛けていた。
「何食ってんだよ、豚の餌か? ナンカ臭えんだよオメエ」
 何を言われても、返事もせずに、黙々と弁当を食うアイツ。
 人気者の男のクラスメートいじり、周りの女子もクスクスと笑っていた。
 それに気を良くした人気者の男が、調子に乗って、教科書やらノートを立てて築かれた壁をとっぱらった。
 アイツの目は普段、開けてるのか閉じてるのかわからないほどの細い線であった。さらに、頬に肉がたっぷりと付いた太っちょだったので、頬肉が目を押し閉じ、一段と細くしていた。

 今のアイツの目は、見たこともないほどに大きく見開き、血走った瞳をギョロリと動かして、人気者の男を睨みつけていた。人気者の男は、その異様な勢いに押されて、捨て台詞を残し自分の席へ戻った。
 すぐにまた、教科書やノートの壁が築かれたのだが、アイツの目は昼休み中、コッチをギョロリと睨んでいた。
 それからというもの、アイツはまた弁当を見られるのを警戒し、昼休みになっても弁当の蓋すら開かなくなった。相変わらず教科書やノートの高い壁だけを作り、コッチを睨みつけた侭、ジッと押し黙り、時間が過ぎるのを待っているだけだった。

 日が過ぎるにつれ、アイツの顔色はドンドン悪くなっていく。
 只、目だけがギョロリとコッチを睨んでいた。
 そして、ある日プツンと学校に来なくなった。
 誰の気にもとめられることもなく、アイツの存在は薄れていった。

 とある日、人気者の男が、昼休みになるとアイツと同じように教科書やノートで高い壁を作り出した。
 どうしたのかと声をかけるが、返答はない。
 覗き込んでみると、ごくごく普通の弁当で、おかしな所は何もなかった。
 覗き込んでいる僕に気づくと、人気者の男は、ギョロリと血走った目で睨みつけた。 
 そしてまもなく、アイツと同じように弁当の蓋すら開かなくなった
 アイツのように教科書やノートで高い壁だけを作り……そして、アイツのようにダンダンと痩せていった。
 ……それからまもなく、人気者の男は、学校に来なくなった。
 最後の会話で覚えているのは「弁当の蓋を開けると、あいつの目が睨んでくるんだ」と追い詰められた表情での呟き……
 
 よく言われることだが、いじめた側はすぐに忘れてしまうが、いじめられた側は、その屈辱を永遠に忘れないと……
 僕もダンダンと、弁当を食う気がしなくなって……誰かに弁当を見られないように、教科書やノートで高いと壁を作った。

 思い返せば……僕も、アイツの弁当を馬鹿にしたことがあったな……
 記憶違いではない。確かに人気者の男と一緒になって、馬鹿にしてた……

 その証拠に、弁当の蓋を開くとアイツの目がギョロリと睨んでくるんだよな……


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