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ちりょう なひろさん

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真夜中に吠える

17/12/08 コンテスト(テーマ):第150回 時空モノガタリ文学賞 【 悲劇 】 コメント:0件 ちりょう なひろ 閲覧数:300

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 ここに横断歩道が出来たのは、中田ん家の子供が轢かれ死んだからで、それほど車通りの多くないこの道にぽつんとある信号は不可思議にして違和感すらおぼえる。

 そもそも中田ん家の子供は赤信号だろうと車がきていなければひょいひょいと渡ってしまう奴だったし、まして信号がないところでは左右の確認を怠り横断してしまうような事が多々ある不注意極まりない子供だった。
 親が赤信号を無視する仕方がない奴だったのだから、その子供を責めても仕方がないし、子供の葬式で「どうして、うちの子が」と世の不条理さを嘆く中田夫妻を責めたところで仕方がない。

 子供を轢いたのは佐藤という中年サラリーマンで、いつものように会社からの帰路の途中、夕暮れの薄暗い道路に飛び出してきた中田の子供を轢いた。すぐに警察と救急に連絡し、然るべき処置はしたが助からなかった。即死だった。
 佐藤はヘッドライトを点けていたし、スピード違反をしていたわけでも、まして運転中に携帯をいじっていたわけでもない。ただ少し疲れていて、急に飛び出してきた子供に反応が追いつかなかった。
 それだけのことだったが、佐藤は残された中田夫妻に額から血が滲むほど自分が悪いと土下座した。

 左右の確認を怠り飛び出した中田の子供、いつもそれを注意せず歩行者優先とばかりに横断していた中田の親、仕事終わりで少し疲れを感じながらも運転しブレーキが間に合わなかった佐藤。

 誰を悪とするなら誰しもが悪で、だから法では裁けても、他の誰にも責めようがない仕方のない事故だった。
 しかし世の中は責任を追及しなければいけない。
 誰も責めようがないから、ここに横断歩道があればねなどという、無かった横断歩道のせいにした。
 真夜中にその道を通れば信号が黄色く点滅している。

 気をつけて進めと吠えている。


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