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のあみっと二等兵さん

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幸せは常に詰まっているのですよ。

17/12/08 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 のあみっと二等兵 閲覧数:139

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学校の昼休み。
私は購買部で買ったパンをかじっている。
「一緒に食べない?」
窓際の席で独りだった私に、クラスの中で一番綺麗なミサが話かけて来た。彼女は私の返答など聞かずに勝手に椅子を持って来て座る。
そんな様子を男子の8割が見つめ、なんだかそれが私に対する嫉妬にも似た感情だとは気付いていた。見えていれば、だが。
しかし私はミサに向き直るでもなく、窓に背を持たれたまま、パンをかじっている。こちらから話かける訳でも無い。
そもそも、なんで私と昼休みを一緒に?という疑問しか無いくらいだ。
という事は─────
「またこのおかず……」
やはり、か─────
ちらりと見やると、玉子焼きに煮物、青菜の胡麻和え……素晴らしい。
「彩り悪くて恥ずかしいよ。そう思わない?」
私は何も応えず、最後のパンの一口を頬張って立ち上がった。
「どこいくの?」
何も応えずにその場を去る。
「せっかく誘ったのに……」



後日も。毎日のようにミサは私のところに来て弁当を広げては文句しか言わない。
終いには。
「不味すぎるから、捨ててくるよー。帰ってからギャーギャー言われたくないしねー」
へらへら笑いながら立ち上がったミサの手から弁当を奪いとった。
「え?何?お腹空いてるの?」
何一つ手をつけていない弁当を見詰めてから。
「いただきます」
そう言ってから、箸をゆっくりと動かし、やがて全て綺麗にたいらげた。
「すごい、すごーいっ!」
「なにがです?」
「え……」
初めて彼女に対して発した私の言葉に、ミサは一瞬言葉を探すようにうろたえた。
「本当に凄いのはね、貴女のお母さんだ。毎朝貴女や家族の為に作る。貴女にできますか?」
ミサは一瞬ぽかんとしたが、鼻で笑ってこう言った。
「母親なんだから、当たり前じゃない」
私はその言葉を聞き、彼女の目を真っ直ぐに見詰めてからフッと微笑みを返した。
「貴女にはこの弁当の中に〈何〉が詰まっているのか見えないんだね?」
「ちょっ、ちょっと!何が言いたいのよ!」
思わず大きな声を出したミサに周りの女子が集まってくる。
「ミサどした?」
「落ち着きな?」
空の弁当箱を床に叩きつけ
「あの女、ムカつくんだけど!」
誰もいない教室の扉の向こうを睨んで憤慨するミサを宥める女子の顔色が青ざめる。ミサ以外の彼女らが目を合わせて確信した。
しかし。
校内放送が流れた。名指しでミサを職員室まで呼んでいる。
「何よこんな時に!解ったわよ!」

ミサが教室を出て暫くすると、青ざめた表情で走って戻るや否や、早退していった。
校庭を走っていくミサを窓から見つめながら誰彼ともなくつぶやいた。
「噂のアレ……でしょ?多分……」
「怒らせちゃったね……」
「うん……でもミサが悪いよね……」

ミサが飛び込んだのは救急病院だった。ナースステーションで上手く話せないでいる彼女を呼ぶ声が聞こえた。
振り返ると、車イスに乗った母親が恥ずかしそうにしている。
「……大丈夫……なの?」
恐る恐る問いかけると母親は笑った。
「買い物の帰りに自転車で派手に転んじゃってね……安い安いって買ったら荷物沢山で……」
「馬鹿じゃないの!?」
ミサは怒りを露に怒鳴ったが、頬に喰らった衝撃でハッとした。
「なんて言い方するんだお前は!」
父親の声が耳に痛かった。
「お父さんの事はなんとでも言え。でも母さんを悪く言う事は絶対に赦さない」




胸の奥が痛い……



「幸せを、当たり前だと思うな」



いつだかは覚えていないけれど。
ずっとずっと、誰かにそう言われていたような気さえして。
頭に浮かんだその言葉と自分が放った言葉を照らし合わせて。


「無事で良かった……お母さん……ごめんなさい……お母さん……」
母親が死んでいたら───そう思う恐怖と、生きてまた会えた事の安心感で、とにかく泣きじゃくっていた。


ミサはそれから。
母親の怪我が治っても早起きして家族の弁当を一緒に作るようになった。
キッチンであーだこーだと楽しそうにやってる二人の姿を認めて微笑む。


さてと。
毎日持たせてくれるお弁当がある事。

それだけじゃありません。


帰れる家がある事。
安心して眠れる寝床がある事。
家族が在る事。
友や仲間が在る事。
命がある事。



それら全てが今、当たり前だと思っている人がいるなら、伝えに行きましょうかね。
私のやり方になりますが。



そこのあなた方も気をつけて下さいね?
私はあなたのよく知った姿で当たり前のように現れますから、うっかりした事を言い放たないようご注意を。
どうなるか解りませんよ?

私に会いたくないのであれば、日頃の様々な事に感謝して下さい。

それでは良い1日を─────










終わり




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