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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

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弁当取締委員会

17/12/06 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:159

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「なぁ康太!今日も学食行かね?」
「あぁいいよ」
俺は高校二年になった時できた友人と毎日学食で定食を食べることになっている。学食の定食はどれも250円と良心的な値段になっているが、高校生の財布から毎日はかなりキツい。それでも友人が毎日学食に誘ってくれるから、小遣いと貯金を切り崩して学食に通っている。
高校一年の頃は毎日教室で母ちゃんが作った手作り弁当を食べていた。レパートリーが少なく、同じメニューが続いたり、昨晩の夕飯の残りがオカズになっていることもザラにあった。俺はこの母ちゃんの弁当が嫌いだ。
「康太。今日も頑張ってきてね」
高校二年になった今でも母ちゃんは俺に毎日弁当を渡してくる。一度「学食で食べるから学食代だけくれれば大丈夫」と伝えたことがある。しかしもったいないからの一点張りで話を聞いてくれなかった。だから俺は母ちゃんの手作り弁当を毎日高校に持って行っている。


「あの子....お母様からお弁当渡されてたわよね?」
「そうよ。それなのに学食に通ってるとなると....」
「すみません、立花康太さんですか?私たち弁当取締委員会の者ですが、少々お話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
私たちは弁当を無駄にしている学生を取り締まる活動をしている。今回対象となった立花康太は母から弁当を毎日受け取っているのにもかかわらず、毎日学食に友人と通っていることから弁当粗末罪の容疑に掛けられている。
「はぁ。なんでしょうか?」
「あなたは毎日お母様からお弁当を渡されてますよね?」
私たちが彼に話をかけると素直に耳を傾けた。しかし母から弁当を受け取っていることを尋ねると少しバツ悪そうな表情を浮かべる。
「そ、そうですよ」
「それでもご友人の方と毎日学食に通っていますよね?」
彼は何とも言えない顔付きで小さく頷く。彼のこの言動と行動は私たちの実績上、弁当を無駄にしている学生だと判断した。
「ちょっとこちらにいらしてください」
私たちは彼に弁当取締委員会の活動拠点となっている家庭科準備室に同行してもらった。意外にも抵抗せず、私たちに付いてくる彼に少しだけ好感が持てる。
「あなたは毎日お母様のお弁当を受け取っているにも関わらず、どうしてご友人の方と学食に行かれるのですか?」
彼は少し黙り考えていた。私たちは彼が発言するまで見守ることにする。そして彼は重い口を開いて発言した。
「俺は....もともと友達が少なくて。二年になってあいつが俺に話しかけてくれたんだ。その流れで学食に行こうって」
彼はせっかくできた友人の誘いを断らなかったようだ。
「初めて行った学食の帰り、あいつ俺に言ったんだ。明日も一緒に来ようって」
彼は微笑みながら、でも少し悔しがるように拳を握りながら話した。
「学食にはお弁当を持っていけばよかったのでは?」
「それはできなかった。あいつの家は片親で弁当を作ってもらうことができないんだ。俺が弁当持ってたらきっと....」
私たちは彼に学食で弁当を食べることができたのでは?と訪ねたが、友人の家庭の事情を考え食べれないと答えた。私たちが思っている以上にこの問題は深刻だと考えた。ただ弁当を無駄にしている彼に正してもらうためにも真実を伝えなくてはいけなかった。
「あなたは毎日何時に起床されていますか?」
「6時30分です」
「その1時間早い5時30分にお母様は起床され、あなたのためにお弁当を作られていることをご存知でしょうか?」
私たちが彼に真実を伝えると、微かに浮かべていた笑顔は消えてしまう。
「そしてあなたが毎日作ってもらってるお弁当、お母様は栄養バランスもしっかり考えていらっしゃいます。制作費も毎日かかっています。このお弁当をあなたは無駄にされてるのです」
彼はとうとう俯いてしまった。もう彼は罪を認めたのだ。弁当を粗末にしてしまった罪を。
「気付きませんでした。ただ毎日母ちゃんは俺に弁当を渡してるとしか考えてませんでした。しかも手抜きだとも思ってました。最低ですね」
彼は自らを貶すような発言をした。ただ彼にも言い分があった。だから私たちは彼に
「あなたはご友人の方のために、お母様のお弁当を犠牲にしていました。それはいけないことではあるものの、これから正せば大丈夫ですよ」
この言葉に彼は涙をこぼした。そして私たちは彼に訪ねた。母が作った弁当はどうしていたのかを。
「俺は家に帰ってから....こっそり食べてました。昼に食べたフリをして。母ちゃんが昼飯のために考えて作ってくれた弁当を....俺はその気持ちを無駄にしていたんです。もうお昼に食べます。友人にも事情を話して学食で食べることにします。申し訳ありませんでした」
私たちは返す言葉がなかった。しかし彼は先ほど声を掛けた時よりも晴々とした表情を浮かべていた。


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