1. トップページ
  2. モアの塔

蹴沢缶九郎さん

どうもはじめまして、蹴沢缶九郎と申します。暇つぶしに読んで頂ければ幸いです。「小説家になろう」でも同ニックネームで掌編小説を書いてます。http://mypage.syosetu.com/707565/ よろしくお願いします!!

性別 男性
将来の夢
座右の銘 明日は明日の風が吹く

投稿済みの作品

0

モアの塔

17/12/04 コンテスト(テーマ):第150回 時空モノガタリ文学賞 【 悲劇 】 コメント:0件 蹴沢缶九郎 閲覧数:377

この作品を評価する

広大な砂漠の真ん中に塔が建っていた。塔と言っても、例えばバベルの塔ような人が立ち入れるような造りの塔ではなく、鉄が乱雑に組まれた、高さ数十メートル程の歪な鉄塔であった。
『モアの塔』と呼ばれるこの塔は、いつ頃造られ、何のために存在するのか、ある一人を除き、誰も知らなかった。気がついた頃にはそこに存在していたし、無くなった所で生活に影響が出る訳でもなく、周囲の人間にとってはその程度のものだった。

ある日の夜、砂漠を横断中の旅の若者が塔の近くを通った。そこで、塔を見上げ佇む一人の老人を見掛けた若者は、その光景に何か惹かれるものを感じ、思わず老人に声を掛けた。

「こんばんは、お爺さん。僕は旅をしている者ですが、お爺さんはこんな所で何をしているのですか?」

若者の問いかけに、老人は若者を一瞥すると、再び塔を見上げながら答えた。

「…お金がな、降ってくるのを待っているんだ」

「お金?」

要領を得ない老人の言葉に、若者はまたも尋ねた。

「それはどういう事ですか? ここにいれば、塔の上から誰かがお金をばらまくとでも言うのですか?」

老人はポツリポツリと答える。

「…誰かがではない、『塔』がだ」

若者は、この老人は一体何を言っているのだと思った。交互に塔と老人を見比べる若者に、老人は笑いながらゆっくり説明する。

「…ボケ老人の戯言とでも思っているのかな。まあ、それでも良し。今から私が話す事は事実であり、それを信じるもバカにするもお前さんの自由だ。実はな、この鉄塔、『モアの塔』は、お金を生み出す魔法の塔なのだ。この周辺に暮らす者達ですら誰も知らないがな。…そら、もうじき降ってくるぞ」

老人は腕時計を確認すると、話を切り上げ、鉄が交差する、丁度人一人が通れる程の隙間から鉄塔の内部に移動して、まるで何かを受け止めるように両手を広げた。
未だ半信半疑であった若者は、その様子を黙って見守っていた。
その時だった。鉄塔の内部上空から、風に煽られた一枚の高額紙幣が、鉄の合間を縫うようにひらりひらりと降ってきたのだ。老人は宙に舞う紙幣をうまい事掴むと、

「…私の言っている事は本当だったろう」

と若者に言い、その場を去っていった。
鉄塔の上部に誰かがいる様子はない。となると、あの老人が言っていた事は本当なのか…。

『お金を生み出す魔法の塔』

若者が、『モアの塔』の魅力に取り憑かれるのも無理もなかった。うまく行けば、一生働かずに暮らしていけるかもしれないのだ。若者は、それまでの旅をやめ、なけなしの財産をはたき、塔の近くに移住した。それからというもの、若者は毎夜毎晩、『モアの塔』に通いつめてはお金が降ってくるのを待った。
しかし、待てど暮らせど、塔からお金が降ってくる気配は一度もなかった。何か儀式的な行いが必要なのかとも考えたが、あの夜、老人はそれらしき動きをしてはいなかった。
若者は、ただ塔に通いつめ、お金が降ってくるのをひたすら待った。だが、『モアの塔』は若者の期待を裏切り続け…。いや、裏切ったのは塔でなく…。
考えまいとしていた事が頭をよぎり、その瞬間、若者は駆け出していた。


「騙された」


初めから、『お金を生み出す魔法の塔』など存在するはずがなかったのだ。俺がバカだった。あの老人は、旅人である俺をからかい、自分の暇つぶしに利用したのだ。降ってきた紙幣だって、何らかのトリックを使い降らせたに違いない。
どんな理由であれ、人を騙して良い道理があるはずもなく、あの老人に一言文句を言ってやらなければ気が済まない。

若者は付近をくまなく走り続け、やっとの思いで老人を見つけ、飛びかからん勢いで老人に食って掛かった。

「やいジジイ!! よくも騙しやがったな!! 何がお金を生み出す魔法の塔だ!! 待てども一向にお金なんて降ってこないじゃないか!!」

しかし、そんな若者の剣幕にも、老人は落ち着き払い静かに答えた。

「私は嘘などついておらんよ。『モアの塔』には、お金を生み出す間隔というのがあってな、お金を生み出したのがつい先日の話だから、次に生み出すのは今から五十年後…」


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン