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大久保 舞さん

無名のフリーライターをやっていますが、小説家になるために本格的に活動してみることにしました。 ショートショートは読むのも書くのも大好きです。 普段はカクヨムメインで活動中。 https://kakuyomu.jp/users/mai_ookubo アイコンは大好きな漫画家の巳年キリンさんに描いて頂きました。

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一杯のラーメン

17/12/02 コンテスト(テーマ):第148回 時空モノガタリ文学賞 【 ホラー 】 コメント:0件 大久保 舞 閲覧数:164

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ある中学校の教室で、一人の少年が、複数の少年に殴られたり蹴られたりしていました。

「もう、やめてよ・・・」

少年が苦しそうに懇願しても、いじめっ子たちは暴力をやめません。

むしろ、少年が苦しめば苦しむほど、暴力は酷さを増すばかりでした。



「お前ら、何やってるんだ!!」

その時、少年のクラスの担任の男性教師が駆けつけてきました。

これはまずい、と、いじめっ子たちは「遊びのつもりだったんです〜」と言い訳しながら走り去っていきました。



「おい、大丈夫か?」

教師が聞くと、少年は、こくり、と力なくうなずきました。



「教師として、こんなことを言ってはいけないのは分かる。だが、あいつらは最低の奴らだ」

放課後、ラーメン屋で少年と教師は語り合っていました。

時折、教師は少年のことをラーメン屋に連れていってくれるのです。



そして、いじめられている少年を、時には励まし、時には慰め、時には笑わせました。

少年は、教師のことが大好きでした。



「注意することしか出来ない自分が、ふがいないよ。俺も、いじめっ子なのかもしれないな・・・」

そう言って落ちこむ教師に、少年は「先生は違う」ときっぱり言いました。

「先生は、僕の話をちゃんと聞いてくれる、初めての人だよ」

「ありがとう。そう言ってもらえると、教師になったかいがあるってものだ」と言って、教師はにっこり笑いました。



いじめをしている生徒たちへの教師の強い指導にも関わらず、少年へのいじめは、激しさを増していくばかりでした。

ある日、少年は”死刑ごっこ”と称して、首吊りの真似をさせられました。

寸前で教師が止めに入ったから良いものの、死んでしまうところでした。



もはや、これはいじめではなく、殺人未遂です。

しかし、教師の再三の訴えにも関わらず、校長は、教育委員会の目を気にして、何も対処をしませんでした。

いじめっ子たちの主犯の生徒の母親が、PTA会長だったことも大きな理由でした。



「また、教師として、あるまじきことを言ってしまうが・・・お前は、もう、無理するな。学校に通わなくったって良いんだよ」教師は少年に、そう伝えました。

「勉強は、俺がいくらでも教えてやる。フリースクールだってある。学校以外にも、見つけようとすれば、お前の居場所は、沢山あるんだ」

力強く言う教師に、少年は、とても元気をもらいました。



そして、少年は不登校の道を選択し、フリースクールに通いながら、教師に勉強を教えてもらいました。

それは、学校に通っている時よりも、とても楽しい毎日でした。



あっという間に少年は中学三年生になりました。

不登校期間が長かったので、内申点が低く、行ける高校は限られていたので、教師と相談して、定時制高校に進学することにしました。



少年は、教師と一緒に、二人だけの卒業式を行いました。

「好きな物、いくらでも食べて良いんだぞ。餃子も食べるか?」いつものラーメン屋で、教師は嬉しそうに少年に言いました。

「先生。本当にありがとう。先生がいてくれたから、これからは幸せな未来が、きっと僕には待っているよ」少年の笑顔は、輝いていました。

一杯のラーメンは、少年にとって、どんな高級料理よりも美味しい物でした。


〜〜


「・・・そんな先生がいたら、きっと僕は”死”を選択していなかったと思います。
お父さん、お母さん、今まで育ててくれて、ありがとう。
僕は、二人の子供で幸せでした。
でも、学校に恵まれなかったから、死ぬことにしました。
この話は、僕の願望であって、実際にあった話ではないことがとても悲しいです。
けれど、これも運命ですね。それでは、さようなら」


少年がひとりぼっちで通っていたラーメン屋の近くで、少年の遺体と、遺書が発見されたのは、卒業式の前日でした。

遺書を見て初めていじめの存在を知った少年の両親は、少年の本当の担任教師を問い詰めました。

しかし、教師は「随分、長い文章を書くもんですね。彼は国語の成績は悪かったはずですが」と、せせら笑うだけでした。


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