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大久保 舞さん

無名のフリーライターをやっていますが、小説家になるために本格的に活動してみることにしました。 ショートショートは読むのも書くのも大好きです。 普段はカクヨムメインで活動中。 https://kakuyomu.jp/users/mai_ookubo アイコンは大好きな漫画家の巳年キリンさんに描いて頂きました。

性別 女性
将来の夢 ショートショート作家
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それぞれのお弁当

17/12/01 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 大久保 舞 閲覧数:146

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母子家庭で育った私は、母と二人だけでお花見に行くのが、子供の頃とても嫌だった。
お金がないからと母が家で作った貧相なお弁当だけしかなく、ジュースやお菓子などの気のきいたものはない。
他の家族連れの人のお弁当を見たら、とても豪華で、自分と母親のお弁当が惨めになった。

「今年のお花見、どうする?」
中学生になって、母にそう聞かれた。

私は無言で、鞄を持って学校に行った。
その年以来、母と私がお花見に行くことは二度となかった。

それからもう、長い月日が流れた。
私は、自分自身が母親になっていた。

「ママ、桜が綺麗だね」
春、満開の桜を見てそう言った幼い娘に
「ママは、桜が好きじゃないわ」
と言ってしまった。

「どうして?こんなに綺麗なのに。おばあちゃんは、桜が大好きだって」
娘の言葉に、私は苦い記憶が蘇った。
母は、孫である娘に、どんなふうにお花見のことを伝えているのだろうか。

「ママ、おばあちゃん、桜が大好きなんだけど、お花見はもっと大好きなんだって」
あの、惨めなだけだったお花見が?

「ママのことを、どこにも連れて行ってあげられなかったから、お花見ぐらいは、連れて行ってあげたかったんだって」
それを聞いて、私は母が楽しそうにお弁当を作っている後ろ姿を思い出した。

「ママ、お花見に行こうよ。おばあちゃんと一緒に」
「・・・そうね。とっても美味しいお弁当を持ってね」
わーい、とはしゃぐ娘を見ながら、私はどんなお弁当を母と一緒に作ろうかな、と思った。

全ての人に、お花見の季節がやってくる。
私はこれから、お花見の季節には母とお弁当を作ることだろう。
今年も、来年も、ずっとずっと。


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