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与井杏汰さん

突然思い立って短編小説を書いてみたくなりました。このサイトを知って、うれしく思います。

性別 男性
将来の夢 そこそこの健康と、そこそこの自由。
座右の銘 病は気から。

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お化け屋敷

17/11/25 コンテスト(テーマ):第148回 時空モノガタリ文学賞 【 ホラー 】 コメント:0件 与井杏汰 閲覧数:309

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都心のデパート、6階の催事場で「お化け屋敷」が開催されていた。平日の午後、行き交う人もまばらなフロアで、京太と里美はその前を通り過ぎた。
 「お化け屋敷って、最近見かけないよね」
 「逆に珍しいかも」
入口で料金を見ると、1人500円。早速中に入った。
薄暗い通路を歩くと、突然首筋に冷たい柔らかいモノが触れた。
 「キャー」
里美が悲鳴を上げると、京太も「うわっ」と一緒に驚いた。
 「何いまの。こんにゃく?」
 「わかんないけど冷た過ぎね?」
今度は真っ暗な通路の奥で小部屋に明かりがつき、障子に人影が現れた。首が徐々に伸び、振り向くと目が光った。
 「嫌だ〜」
怖がる里美の手を引いて、京太は歩いていく。と、突然左右でふすまが開き、首の無い武将が両側から倒れてきた。すると今度は正面の障子が開き、先ほどのろくろ首が目の前に現れた。
 「キャー」
里美はまた悲鳴を上げた。

 「結構怖いよね」
 「ああ、500円にしては上出来だ」
和風お化けをたっぷり味わった2人は、やがて西洋館コースに差し掛かった。屋敷の中で、黒いマントを着た男が突然目の前に現れた。目が赤く光っていた。
 「もうやだ〜」
思った以上に怖がりの里美は、京太の手を離さなかった。
すると、ふいにチャイムが鳴り、アナウンスが流れた。
 「本日は、当お化け屋敷にご来場ありがとうございます。お客様にお知らせです。先ほど政府からJアラートが発令されました。係員の誘導に従って避難してください」
 突然のことに驚いた2人は、非常灯で明るくなった通路でお互い顔を見合わた。

現れたスタッフに誘導され、普段はスタッフルームと思われる部屋に入った。中には既に別のカップル1組と2人の親子連れが避難していた。
 「ねぇ、何が起きてるの?」
里美に聞かれても、京太もわからない。スマートフォン等は全て入口で預ける仕組みになっているため、情報源がないのだ。部屋の隅にあるテレビをスタッフがつけた。
 「繰り返しお伝えします。Jアラートが発令されています。ただいま東京都内の各地で、ドローンが空中で薬品を散布しています。落ち着いて出来るだけ密閉した室内に避難してください。また薬品には絶対に触れないでください。薬品に触れると直ちに皮膚がただれ、意識が危うくなるとの情報です。現在、画面には渋谷駅前の映像が出ています。ご覧の通り、既に多数の市民が姿を変え、まるで幽霊のようにゆっくり歩いています」
 まるで日本製ゲームから生まれた有名なハリウッドホラー映画のような光景だった。続けてテレビが伝える。
 「あ、ご覧いただけたでしょうか。画面向かって右の被害者の方が、隣の女性に触れると、その女性も皮膚がただれ、意識がもうろうとしているようです。この症状は伝染性があるようです。テレビをご覧の方は直ちに室内に鍵をかけて避難してください」

里美は声もなく震えていた。
 「おい」
小声で京太が呼びかけた。
 「これさ、もしかしてこのお化け屋敷の仕込みじゃねぇか?」
 「え?」
 「だからさ、これも『お楽しみ』の1つなんだよ」
 「うそ?」
 「これくらいの映像は気の利いた制作会社なら作れるだろ」
京太はさらに小声になって言った。
 「でも他のお客さんに悪いから、黙ってようぜ」
怖がっていた里美は頷くと小声で言った。
 「ここすごいね。スマホ返してもらったら、友達に教えよう」
と、外に出ていたスタッフが慌てて戻ってきた。
 「皆さん、このデパートも既に感染が広がっています。この部屋から出ないでください!」
室内ではさらに緊張したテレビの音声が伝える。
 「今回のドローン攻撃は、全国で同時に行われた模様です。大阪、名古屋でも被害の情報が入っています。では大阪の毎度放送を呼んでみましょう」
 画面が変わると大阪のスタジオが現れた。「大阪では、梅田、難波などから被害情報が入っています。取材にあたった毎度放送のスタッフも被害を受けております」
 画面では、レポートを送ろうとマイクを持つ記者が突然後ろから襲われ、見る間に顔が変貌していく様子が映し出された。
 「すげぇ。これはクオリティ高いな」
京太は感心していた。
 「これで500円ってすごくない?」
里美が答えると、避難部屋のドアを外から押す音がした。スタッフが必至にドアを抑えている。やがて圧力に負けてドアが開き、顔がただれたお化けのような面々が押し寄せてきた。
 「キャー」
他のカップルが悲鳴を上げた。
落ち着いている京太をよそに、やがてスタッフが、そして親子連れが襲われ、見る間に皮膚がただれた。
 「え?マジか?」
京太が声を上げたその瞬間、里美が悲鳴を上げた。
振り返ると、そこにいつもの里美はおらず、同じ服を着たお化けが京太の方に襲い掛かってきた。


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