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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
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ホラー映画で女子を見せる!

17/11/24 コンテスト(テーマ):第148回 時空モノガタリ文学賞 【 ホラー 】 コメント:1件 笹岡 拓也 閲覧数:756

時空モノガタリからの選評

計算高くイケメンをゲットしようとする「私」のあざとさが裏目に出て、なんだかホッとしたような気持になりました。実際ここまで意図的ではないにせよ、デートなどの際に半ば無意識に女子力や可愛さを演出してしまうことは結構あるのでしょうけれど、ここまで徹底して計算しつくしていると、それはそれで現実的な意味で怖さがありますね。他人を見下すために彼氏をゲットするという意図も怖いですね。「私」もそうですが、相手の冬馬の方も相当なものですね。彼女を最初からはめるつもりだったのか、途中で彼女の行動に気づいて後をつけたのか。どちらにせよ彼自身の行動も、やはりホラー的だと思いました。親しみやすいテーマを、平易な文章でテンポよくまとめられた作品だと思います。

時空モノガタリK

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私はある日、冬馬くんに映画に行こうと誘われた。冬馬くんはクラスの中でも1.2を争うイケメンで人気のある男子。冬馬くんを彼氏にしたら、あらゆる女子が嫉妬することだろう。そんな女子たちを私は見下すことができる。だからこのチャンスはしっかり物にしておきたかった。
「この映画なんだけどさ、怖いのとか大丈夫?」
冬馬くんが一緒に見たいと言った映画はホラー映画だった。私は正直、ホラー映画が好きじゃない。理由は人の作り物に対して怖いという感情が芽生えないからだ。女子たちのほとんどはホラー映画は怖いから行きたくないと嘆くだろう。そんな女子たちが苦手だ。
「ちょっと怖いけど...冬馬くんとなら行ってもいいよ!」
「やった!じゃあ一緒に行こう!」
冬馬くんがとても喜んでくれた。こんな喜んでいる冬馬くんを見たのは初めてで、私まで嬉しくなった。

冬馬くんに好かれるために私は怖いポイントで女子を見せることにした。
怖いポイントがやってきたら「キャー!」と甲高い声を上げて冬馬くんに少し抱きつく。これを大袈裟にやっては気づかれてしまう。だから控えめに、そして子鹿のように少し震えながら女子を見せていく。
きっとこの怯えている私を見て、守ってあげなきゃと感じるだろう。そしたらこっちのもの。そして映画を観終えたらこう言うの。
「冬馬くんって頼もしいね」
この一言で冬馬くんは私の物になる。どんな男子でも落とすことができる。
でもこの怖いポイントはしっかり映画の流れを知らないと成功しない。最大の怖いポイントまで冬馬くんを焦らさないといけない。序盤の怖いポイントで抱きついてしまえば、わざと怖がってると疑われてしまう可能性だってある。映画監督もきっとここ一番という怖いポイントがあるはず。その怖いポイントを知るために私は一度ホラー映画を観に行くことにした。

私は明日冬馬くんと映画を観る前の日、下見として同じホラー映画を観にきた。
「あっ、一名様ですか。こちらの席はどうでしょうか?」
ホラー映画を一人で観に来る女子に店員も偏見な目をして案内してくる。きっと可哀想な子だな、変わった子だなと思ったのだろう。きっと私もそんな女子を見たら同じことを思う。だって誰かと観るからホラー映画って楽しいんでしょ?
しかし意外にも映画館の中は一人のお客が多くいた。ただ中年の男の人ばかりだった。やっぱり一緒に観に行く人がいないのか。可哀想だな。
そんなことを考えていると映画はさっそく始まった。
ホラー映画界の大御所監督が作った映画だけあって雰囲気があった。じわじわ話が進むごとに事件が判明していくストーリー。ホラーの中にサスペンス要素がふんだんに入っていて、結構面白い作品。でもやっぱり見せ場の怖いポイントは、脅かす系だったから怖くなかった。
私はいくつかの怖いポイントの前後の展開をメモに取った。家でしっかり復習して最大の見せ場に来た時、冬馬くんの手をギュッと握りながら小さい声で「怖い...」と呟こう。
明日が楽しみになってきた。絶対成功させてやる!

冬馬くんはとてもお洒落な格好で待ち合わせ場所にいた。私も一週間かけて決めた取っておきの衣装を纏ってきた。
「楽しみだね。この映画はさ、あの『オルタカの遠吠え』とか『シークレットゾンビ』とか作った監督の作品なんだよ」
冬馬くんは私にずっとこのホラー映画のことを教えてくれていた。私は正直この映画を昨日観たし、この監督のことから作品のことまでネットで調べたから知っている。でも自慢気に語る冬馬くんに
「えー!そうなんだ!怖そう!」
と可愛子ぶっておく。冬馬くんの話はヒートアップしていった。とても興味があるように私が話を聞くからだ。私は確信へと変わった。冬馬くんは私の物だと。

とうとう映画が始まった。この映画の序盤は大して怖いポイントはない。だから私は冬馬くんの顔をチラチラ見ながら適当に観ていた。冬馬くんはとても楽しそうに観ている。
そして物語の終盤に差し掛かる時、私は自然に冬馬くんの手を握り
「こ、怖い...」
と小さく呟いた。すると冬馬くんは私のことを見てくる。怯えてる私を目に焼き付けてくれるの?嬉しいな。私は冬馬くんの手をさっきよりもギュッと握った。その時、冬馬くんが私にニコリと笑いながら言った。
「昨日も観たのにそんなに怖いの?」
私はニコリと笑う冬馬くんの目が笑っていないのが分かった。その表情を見た瞬間、背筋が凍った。上手く息ができない。手を振り払おうとしたけど、冬馬くんは手を離してくれなかった。
私が抑えておいた怖いポイント通り、観客の悲鳴は最高潮だった。

そしてホラー映画はエンドロールが流れた。観客からは疲れた溜息が多く溢れていた。それでも映画が終わると観客には笑顔が戻っていった。
しかし私の笑顔は戻ることはなかった。


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このストーリーに関するコメント

18/01/02 霜月秋介

笹岡 拓也さま、拝読しました。
心霊現象などによる恐ろしさではなく、生身の人間の恐ろしさ、面白さが出ている作品でした。冬馬も似たような理由で映画の下見に来ていたのか、彼女をずっとストーキングしていたのか、想像が膨らみますね。

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