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瀧上ルーシーさん

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性別 男性
将来の夢 プロ作家になること。
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ホラービデオ

17/11/21 コンテスト(テーマ):第148回 時空モノガタリ文学賞 【 ホラー 】 コメント:0件 瀧上ルーシー 閲覧数:340

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 うちのお父さんはホラー映画が大好きだ。
 その日中学校から帰ってくると、私は手を洗ってうがいをして部屋着のスウェットに着替えてリビングに出た。テレビ台の中のDVDレコーダーの下の段には何本かホラー映画のDVDが入っていた。またお父さんがレンタルビデオ屋で借りてきたらしい。私は学校でクラブも帰宅部だし、勉強にもそんなにやる気を出さないので暇だった。友達くらいは一応はいるが、毎日は一緒に遊ばない。私も映画が好きなので、放課後DVDを観ることが多いし、お父さんと一緒にレンタルビデオショップに行くことも多い。お母さんがいない父子家庭だからといって年頃の娘がお父さんにべったりしすぎだろか。でも私には他に頼れる大人もいないので、仲が良いに越したことはない。
 まだ明るいが私はリビングのカーテンを閉めて、明りも消してホラー映画を観だした。最初に観た一本はぜんぜん怖くなかったのだが、次に観た結構昔の呪いのビデオがテーマのホラー映画は今観ると荒削りの作品な癖してすごく怖かった。
 怖かったのだが、映画を二本見終わるともう良い時間なので私は冷蔵庫の中身を確認して台所に立ってお父さんと一緒に食べる夕食を作り始めた。麻婆豆腐に味噌汁に野菜と厚揚げの煮物を作ることにした。
 食事を作っている最中、背中に視線を感じた。ホラー映画を観たせいで神経が高ぶっているのだと思う。包丁を握っている最中、何者かにそれを奪われて滅多刺しにされるような怖い想像までしてしまう。ホラー映画が呼び水となって私に怖い妄想をさせるのだ。
 お父さんのことも考えた。お父さんは若いし性格も良いし格好いい。彼の性格上私には一緒になる直前まで言わないだろうが、現在恋人はいるのか。私としては別にいても構わない。お父さんが幸せになれるのならその方がいい。私に本物のお母さんの記憶は殆どない。まだ赤ちゃんの頃にお母さんは病気で亡くなった。
 まだホラー映画の効力が残っているのか、怖い妄想を止めようとしても止められなかった。
 新しいお母さんが出来たら私はどうなるのだろう。仲良くできるのだろうか。私は愛想が悪いし、ファザコン気味だし、逆に私がお父さんと結婚するとしたら今の私は鼻に付く邪魔な存在だ。新しいお母さんに私は虐められてしまうのだろうか。別にお父さんの再婚には反対しないが、お父さん以外の大人と自分が上手くやれるのか心配だった。上手くやれないで迫害されるのなら、先ほどまで観ていた映画よりそちらの方がホラーだ。
 私は料理を続けた。得たいの知れない怖いものを感じて、何度も誰もいないリビングの方を確認してしまう。怖いのでリビングとダイニングの明りはすべてオンにした。
 そうしてもう少しで夕食できるという頃になるのに、お父さんはまだ帰ってこなかった。また上司とお酒でも飲んでいるのだろうか。お父さんがバスではなく夜遅くにタクシーで帰ってくるのも経済的な意味でホラーだった。私はまだ子供なのだからさすがに家のお金を管理しているということはない。
 夕食が出来上がった。お父さんの分にはラップをかけて、自分一人で食事をとった。ホラー映画を観て時間が経っていないので食事を食べながらも背中が気になってしまう。観た人間を呪い殺そうとするビデオの中の悪役のことを考えると怖かった。もともと食べるのが遅いし、食事がなかなか進まない。
 その時、家の電話が着信音を鳴らせた。
 それは映画の中のワンシーンで観た出来事でもあった。呪いのビデオを観るとすぐに無言電話がかかってきて、あなたは呪われましたと言わないばかりに受話器から雑音が聞えてくるというシーンだ。
 私は怖くて電話を取れなかった。映画が怖かっただけではない。自分のこれからも不安で怖かった。
 それから家の電話は何度も着信音を鳴らせた。私は本当に怖くなってきた。
「ヒッ」
 今度は携帯の方に電話がかかってきた。何が起きているのだろうか。
 意を決して携帯電話を取ると、何の事はない。お父さんからの電話がきていた。
「酔っ払っちまったぞー。今日は帰るの遅いから先に寝てていいからね」
 慣れ親しんだ温かい声が私にそう言った。安心すると同時に私は怒った。
「何、あのホラー映画。怖すぎるんだけど。呪いのビデオのやつ」
「あれくらいで怖いの? 弱虫だな」
「うっさいバカ」
 私は通話を切った。
 安心する。
 お父さんと私の生活はこれからも続くのだと思って、嬉しい気持ちが身体の中から湧いてきた。


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