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小高まあなさん

鳥と怪異と特撮ヒーローが好き。 ひねくれつつも清々しい物語がモットー。

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迷わない妹は迷子

17/11/20 コンテスト(テーマ):第147回 時空モノガタリ文学賞 【 迷い 】 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:369

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 私の双子の妹は、迷いというものがない子だった。
 
 私は迷ってばかりで、優柔不断で、家族で出かけたレストランでも何を食べるか決めることができずに、いつまでもうだうだと悩み、終いには父に「はやくしろ!」と叱られていた。
 それに対して妹は、いつもぱっと見て決めていた。決して適当なわけではない。彼女なりの決め手や基があって、その上であっという間に決めていたのだ。
 
 成長していくにつれて、妹の迷いの無さには磨きがかかっていった。
 今日着ていく洋服、お小遣いの使い道、誕生日のプレゼント。なんでも選択肢を与えられた次の瞬間には決めていた。
 クラスメイトの揉め事で仲のいい子の味方をすべきか、クラスの中心人物の顔色を伺うべきか。私が胃をキリキリさせがら、どっちつかずのコウモリとなっている間にも、妹は友人の味方をすることに決めていた。その結果、守ろうとした友人には裏切られ、クラスの中心人物と手先になった友人からしばらく無視されていたけれども。
「もうちょっと考えたら?」
 私が言っても、
「考えてるよ。考えて決めてるだけ。うじうじ迷っていたって良いことなんかないじゃん」
 そう言って妹は笑うだけだった。

 私と正反対の妹。
 幼いころは、明るくて物怖じせずに、勢いで何でも決める妹が好かれていた。でも、ある程度大きくなっていくと、褒められていたそれらの部分は「考えナシ」という評価に変わってしまった。
 いつの間にか、私と妹の評価は逆になり、私はこっそり安心していた。私の方が、いまや立場が上だ、と。
 そんな矮小な私に気づくことなく、妹は迷うことなく色々なことを決めていた。
 告白してきた女遊びの激しい男と付き合い出すことも、彼に合わせて進学する大学も決めていた。迷うことなく、一点の曇りもない瞳で、そんなくだらない理由できめた進路希望表を提出していた。ある意味尊敬する。
 大学入学前に、その男とは別れていた。
 私の双子の妹は、本当に何にも迷わなかった。
 死ぬ時さえも、迷わなかったらしい。
 あの子はある日の朝、突然、電車に飛び込んだ。通学するために待っていた電車に。
「あの子が自殺なんてするわけがない! 誰かに押されたのよ!」
 母はそう主張したし、それは私も父も、友人たちも同じ意見だった。妹に何かに悩んだり、思い詰めたりしているそぶりはまったくなかったから。
 自殺だなんて、信じられなかった。

 でも、結局自殺として処理された。
 妹の部屋から、遺書が出てきたからだ。自殺したその日の日付入りで、「死ぬことにしました」とだけフランクに書かれた、どうしようもない遺書が。
 あの子は、死ぬことすらも迷ったり、ためらったりしなかったのだ。
 どういう基準かわからないけれども、あの子なりの基準で「今が死ぬとき」と答えを導き出し、素直にそれに従ったのだ。従ってしまったのだ。
「バカじゃないの。何血迷ったことやってんのよ」
 朗らかな笑顔を浮かべる遺影をにらみつける。
 迷いはなかったかもしれないが、迷子のような生き方をあの子はしていたと思う。彼女の中の道しるべとなる基準は、必ずしも正しくなかったのだ。

 妹が自殺だということがわかっても、あの子がどうして死を選んだのか。私も両親も友人たちもわかっていない。


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