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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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テロ弁

17/11/20 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:73

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「いいか、よくきけよ」 目だし帽をかぶったボスの凄みのある声が、俺の鼓膜をふるわした。 ボスは俺の目のまえに、中身のつまった弁当箱をさしだした。いくさの前のはらごしらえ。血も涙もないとおもっていたボスにも、こんな一面があったのかと、俺がふと気をゆるませかけたとき、それをみぬいたかのようにボスはにたりと笑った。 「これは弁当型爆弾だ。スィッチがはいれば周囲五十メートルにいるものはみな、爆風でふきとばされる」 俺は息をのんだ。テロリストとしてのはじめての仕事が、そんな危険極まる任務だったとは。 「おじけづいたか」 俺はボスにむかって、きっぱりと首をふった。幼い時から、めぐまれない環境にそだち、食うものもくえない惨めな日々をおくるうち、俺はじぶんをこんな目にあわせた社会を腹から憎むようになっていた。人としてなにひとついいおもいをしたことのないまま成人した俺は、この社会転覆をもくろむ集団の一員にいつしかなっていた。 「俺に、自爆を命じるのですね」 「はやまるな。まず話をきけ。この弁当をよくみるんだ」 俺は弁当箱のなかにならぶ、4個のおにぎりと、卵焼きにサラダといった、まあ定番の盛り付けに目をやった。 「爆弾はどこに」 「それをこれからおしえる。おにぎりはノリ、ゴマ、おかか、それになにもなしがあるだろ。最初におかか、つぎにノリ、ゴマ、最後になにもなしを食べるんだ」 「ただ、食べるんですか」 「そうだ。一つたべるごとに、弁当箱内に仕組まれた特殊センサーの働きで、順次、爆弾のスィッチがはいっていく。順番どおり食べおえると正確に3分後に底に仕掛けられた爆弾は爆発する。おまえはそのあいだににげ出すんだ」 「ちょっとまってください。紙に書きますから」 「ばかやろう。あとに証拠となるものを残すつもりか。こんな簡単なこと、子供だっておぼえられるだろ」 「ボス、はじめから、咬んで含めるようにいってください」 「ようし、よくきけよ――」 休日の公園にはたくさんの人々が集まっていた。午前中から、子供づれの親子や、中高年の夫婦たちがわんさとやってきて、中央にある仮設舞台でもよおされるいろいろ楽しいイベントがはじまるのをまっていた。公園周辺にはそんな連中めあてに屋台がならび、そこにも人々がつめかけていた。 和やかな空気のなかにひとり、俺はベンチに腰かけ、膝のうえに置いた布巾で包んだ弁当箱にじっと目をおとしていた。そのうちイベントもスタートし、楽器の演奏や歌声がきこえだすと、ますます広場は大勢の人間たちでいっぱいになった。 俺は、昼になるのをまって、みんなとおなじように、弁当を食べだす予定だった。くどいほどボスからきいた、おにぎりを食べる順番は、いまではしっかり頭に刻みこまれていた。 やがて、イベントはひとまず中断し、昼食タイムが告げられて、みんなは好きなところに別れてった。 俺は、深く息をすいこんでから、ふるえる手で弁当をあけた。ふたをとった時点で、センサーははたらきだし、爆弾は息づきはじめるのだ。 ――最初におかか、つぎにノリ………。そんなふうに、二個のおにぎりをたべおえたとき、ふいにとなりに、妙齢の婦人が腰をおろした。 「失礼していいかしら」 「あ、どうぞ」  婦人は笑顔をうかべながら、俺の隣すれすれに腰をおろすと、楽器でもはいっているのかながめのカバンを横においた。 「おひとりで、昼食ですか」 「え、ええ、まあ」 「それはおさびしいこと」 婦人は、ベンチにふりそそぐ陽光を、気持よさげに仰ぎ見た。なんともいえない品のよさがうかがえた。 俺はしかし、その間にも三個めのおにぎりをたべおえていた。のこるはなにもなしのおにぎりひとつとなった。これを弁当箱からとった瞬間、爆弾はカウントダウンをはじめてきっかり3分後に、周囲にむらがる人々をまきこんで爆発する…… 「どうしたの、お顔の色が………」  婦人が俺をみて、気づかわし気に眉をひそめた。 「なんでもないです」 爆発したら当然、この婦人も無事ではないだろう。彼女の血にまみれた苦痛にゆがむ顔が、俺の瞼にうかんだ。箸をもつ手が小刻みにふるえだし、箸のさきがおにぎりにちかづくにつれてそれは目にみえてはげしくなった。 「だめだ、できない」 「どうしたのです」 俺は頭をふりながら、力まかせに弁当にふたをした。これでもう爆発することはない。大きなため息が、俺の口からこぼれでた。 そのとき、婦人がいきなりたちあがったとおもうと、横においていたカバンからなにやら黒光りするものをとりだした。 すさまじい銃声がなりひびき、広場にいた者たちが次々に倒れだした。俺はあっけにとられて、横で仁王立ちになって自動小銃を連射している婦人をみつめた。 二人の目があったとき、婦人は容赦なく俺に向かっても撃ってきた。


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