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戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ率高し。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha

性別
将来の夢 積極的安楽死法案を通すこと
座右の銘 常識を疑え

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魔物は生きている

17/11/20 コンテスト(テーマ):第149回 時空モノガタリ文学賞 【 弁当 】 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:60

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 青年は、すこし変わった冒険者でした。

 冒険者というのは、冒険をする人のことですが、それを仕事にしている場合、ギルドというところからいろいろなお願い事を紹介してもらい、こなすことでお金をもらう人のことをいいます。
 例えば、薬の材料になる草を取って来て欲しいというお願い。例えば、人を襲う魔物がいるから退治して欲しいというお願い。例えば、謎の遺跡を調べて欲しいというお願い。
 冒険者に求められる仕事は、危ないものがほとんどです。安全なら、最初にお願いをした人が自分でやればいいわけですから、か弱い人では出来ない仕事――魔物の危険がある仕事を、冒険者がするのです。
 お金をもらえるのは、仕事がうまくいった場合に限られます。頑張ったから、時間をかけたから、いつか役に立つから……そういう考え方は、冒険者には通じません。仕事を引き受けたら必ず成功させないと、たちまち食べるのにも困ってしまいます。
 経費――その仕事をこなすために必要なお金は、どこからも出ません。お願い事をギルドに持ち込んだ人も、ギルドも、その分のお金は払ってくれません。冒険者は経費も全部自分で持ちます。魔物退治をするのに武器が必要だったら自分で買うしかなく、何日もかかる旅をするなら宿代や食費を自分で持っていないといけません。とても厳しい仕事なのです。

 さて、そうした冒険者のなかに、すこし変わっている青年がいるとしました。彼は他の冒険者と何が違ったのでしょう。
 それはずばり、魔物へのあつかいでした。
 魔物がいる場所での作業や、魔物そのものを退治する仕事は、「魔物を殺して欲しい」というお願いではありません。だから殺さなくてもいいのです。追っ払うか、次からは人の迷惑にならないようにすれば、それで仕事を成功させられます。魔物の肉や革を欲しいというお願いだと別ですが、そうではないのなら、魔物を殺す必要はないのです。
 冒険者はたいてい、魔物を殺してしまいます。殺さないようにうまく仕事をこなすのは難しいからです。そうでなくても、「魔物と出遭ったら殺す」というのが常識でもありました。
 青年はこの常識に疑問を持ったのです。魔物は生きています、どうして殺してしまうのだろうか、と。そしてよく考えて、青年は答えを出しました。魔物を殺すべきではないという答えです。
 他の冒険者からは変な目で見られ、青年も殺さずに退治するのは難しかったのですが、自分の考えを信じて、諦めませんでした。
 それを続けていると、ある魔物が、逃げもせず青年に懐くようになりました。青年は自分の考えが正しかったと思い始めます。
 魔物とは言葉での会話は出来なかったものの、簡単な命令なら伝わりました。また、魔物は青年を仲間だと思っていますから、他の魔物と戦う時に力強い仲間となってくれました。
 青年はたちまち、凄腕の冒険者となって、お金も多く稼げるようになりました。
 魔物使い――。
 いつしか青年はそんな呼ばれ方をするようにもなります。
 コツを掴んできてからは、どんどん魔物の仲間も増えました。増えすぎて連れては行けなくなると、ギルドに預かってもらうことにしました。もちろんギルドはこれまでそんなことをしていませんでしたが、お金を稼ぐのがうまくなった青年の頼みで、預かる場所を用意したのです。
 今では、戦うまでもなく、魔物も青年を見かけると無抵抗なこともあります。「人間と魔物は出遭ったら殺し合いをする」という常識は、ひとりの青年によってひっくり返ったのです。
「この分なら大丈夫だろう」
 青年はある決意をしました。これまで無謀と思われていた、お国からもお願いがされている、大きな仕事です。険しく長い道のりで、その先にはかつてなく強い魔物が居ました。その魔物は魔王と呼ばれています。
 青年は魔王討伐の旅に出たのです。大勢の魔物を引き連れて。
 長い道のり。強さでは勝っていましたが、それでも辛い旅です。とても長く、人里もないですから、一番困るのは食料でした。すぐに手持ちの食料は尽きてしまいます。
 しかし青年は焦りませんでした。魔王を討伐するのに必要な戦力は残しつつ、余分な魔物を食べればいいのです。魔物を殺して保存食にしてもさほど保ちませんが、青年の魔物は生きていますから保存状態は完璧です。新鮮で大量な弁当として、魔物はとても役立ちました。魔王は殺さないと国から大金をもらえませんし、魔王を仲間にするのは難しいですし、魔王を食べることもないでしょうから、しっかり仲間たちと協力して殺すつもりです。
 青年の考えが正しかったと、よりはっきりするのは、もうすぐです。

(了)


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