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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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笑般若島(わらいはんにゃじま) ──刑事:百目鬼 学(どうめき がく)──第28話

17/11/19 コンテスト(テーマ):第148回 時空モノガタリ文学賞 【 ホラー 】 コメント:0件 鮎風 遊 閲覧数:91

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 尖った白波のてっぺんを粉雪が驚きの速さでかすめていく。そんな冬の到来を充分知覚させてくれるある日、1立方メートルの木箱が浜に打ち上げられた。
 きっと荒波に揺さぶられた船から落下し、その後漂流してきた積み荷に違いない。途中岩に叩かれたのだろう、ぽっかりと穴が開いている。高波を求めて遊びに来たサーファーが中を覗くと、激切に白い生物、いや白面の人間がカッと瞳孔を開いていた。
 結果、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)こと芹川凛子刑事は急遽現場へと駆け付けることとなった。
 まず二人は青シート上の遺体に手を合わせる。その後雪混じりの北風に百目鬼はすり切れたコートの襟を立て、芹凛は顔にマフラーを巻き付け、あとは黙りこくったまま現場検証に入る。身体は芯まで冷えたが、貪欲に作業を遂行し、そして署へと引き上げた。

「今日の現場検証や他の情報も入れて、今わかってることを整理してくれ」
 百目鬼が芹凛に指示すると、「すでにまとめてあります」とどや顔で資料1枚を差し出してきた。「お主、やるなあ」と鬼の頬を緩ませて目を通す。
 死亡原因  : 絞殺
 死亡推定時刻: 2日前未明
 被害者情報 : 春祭光一 46歳 金融会社 社長
         あくどい商法で、多くの顧客から恨まれていた。
「うーん、これだけでは仮説も立てられないなあ」
 ボソボソと漏らした百目鬼、あとは真顔で「本件解決のための最初の一歩、まず何を捜査すれば良いか、貴職の考えを聞かせてくれ」と芹凛に迫る。だが女鬼刑事はこれに動じず、「死体が入った木箱の行き先です」と言い切る。
 百目鬼はこの意見に大きく頷き、「よっしゃー、漁師たちに聞き込みをしよう」と拳を握った。そして三日後には新たな情報が集まった。
 木箱は近くの港で積まれて、10km沖の笑般若島(わらいはんにゃじま)に運ばれるものだった。
 島民は10人ほどの女性たちだけ。そのせいか、生業は漁師ではなく、意外にも島の洞窟を使った倉庫業。そしてこの地域では考えが及ばぬほど裕福だという。
 されども噂では、島名通り、般若がイヒヒと笑ったような女たちばかりで、かつ深夜にはゾンビが松明を持ってぞろぞろと歩くとか。こんなホラーな島に、漁師たちさえも近付かないし、誰も訪ねて行かない。
 これらの情報を一つ一つ租借していた芹凛が羨ましげに呟く。
「梱包物を永久に隠してしまいたいと思ってる客、それを受け、たとえ中身が死体であっても、まっすぐ洞窟倉庫に。保管料がずっと担保された結構なご商売だわ」
 百目鬼は「馬鹿言うな、俺らの天職は刑事だぞ」と活を入れ、「今から笑般若島に行くぞ」と正確に垂直に立ち上がった。

 嫌がる漁師を説得し、荒波を乗り越え、上陸。しかしまことに驚きだ。海に向かってまさに豪邸が建つ。そして海人太郎、花子の表札が掛かる家を訪ねると、妙齢の婦人が出て来た。笑般若どころではない。刑事は折り目高に挨拶し、いくつかの質問をする。これにより、中身不問の倉庫業を営んでること、夜な夜な怨霊が現れるため家の周辺に高い塀を築き、防御していることなど、噂通りであった。そして最後に、芹凛が鋭く「海人太郎さまは奥さまと離れ、どちらで、何を?」と詰問する。
 これにマダムは女同士だけが感じる棘が刺さったのか、サッと血を引かせ、「男たちは島を囲む結界を超え、俗世界の本土で世直しをしてます。女だけのこの聖地に時々戻ってきます」と答え、一拍置いて「あんさんは海人の敵ね」とイヒヒと口元を歪ませる。
 こんなぶつかり合いもあったが、海人家は事件に絡んでると、その自信を得て二人は署に戻ってきた。そして翌日、さらに調べ上げる。

「コーヒーでも?」と芹凛が声を掛けてきた。百目鬼にはわかってる、お嬢の推理がまとまったのだ。話してみろと目で指示を飛ばすと、芹凛が語り始める。
「春祭光一の絞殺事件はほんの一部です。島の男集団は殺し屋、依頼人から多額の金をもらって殺人、その上に木箱に詰めて、島に送る。つまり殺人料と保管料がメシの種なのです。そうでなければシチリア島にあるような別荘暮らしは出来ません」
 百目鬼がこれに親指を立てる。しかし芹凛は「多くの行方不明者がいます。きっと海人グループに殺され、遺体は洞窟で木箱に入ったまま。この無念さの証がゾンビたちです」と唇を噛む。そして百目鬼は「戸籍調査では、島の住民は太郎と花子の二人だけ、他は無戸籍だからなあ、実態がない」と腕を組む。
 こんな歯切れの悪い百目鬼を見たことがない。
「海人は人間に似た海の妖怪、あんな夫人、いやメスには負けられないわ」と芹凛がドンと机を叩く。
 これに百目鬼は本来の鬼刑事に戻ったのか、目をぎらつかせ吠えるのだった。
「さっ、行くぞ! 洞窟倉庫を全部暴きに。これこそが大事件解決への、次の一手だ!」


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