木原式部さん

文章を書いたり、占いをしたりしています。 時々、ギターで弾き語りもします。

性別 女性
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告白

17/11/19 コンテスト(テーマ):第147回 時空モノガタリ文学賞 【 迷い 】 コメント:0件 木原式部 閲覧数:234

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 もうすぐ僕の誕生日だ。誕生日が来ると僕は二十歳になる。
 僕は誕生日が来る前に同級生の絵美に告白しようと決めていたが、今頃になって迷っていた。

 
 どうして今頃になって迷ってしまったのかと言うと、絵美と僕の友達の川崎が一緒にいるところを見てしまったからだった。
 先週、僕は学校から少し離れた店まで買い物に出かけていた。
 買い物を済ませた僕はさて帰ろうと店のドアを開けたが、外を見た瞬間、すぐにドアを閉じてしまった。
 ドアの近くの窓をそっと覗いて見ると、人ごみの中に絵美と川崎が並んで歩いているのが見えた。絵美と川崎は何やら楽しそうに話しをしながら、どこかへと行ってしまった。


 僕はどうして絵美と川崎が一緒にいたのか、家路を歩きながら考えた。
 僕と絵美と川崎は一緒のサークル仲間だ。僕と川崎は仲が良く、授業もよく一緒に受けていた。僕は川崎に絵美が好きなこともこっそり打ち明けている。
 でも、絵美と川崎は二人きりで出かけるほど仲が良かっただろうか。
 たまたま街中でバッタリ会って、そのまま世間話でもしながら一緒に歩いていた、というだけなのかもしれない。
 僕は絵美と川崎がたまたま街中でバッタリ会って話しているだけなんだ、と思い込もうとした。でも、どんなに思い込もうとしても、もう一つの別の考えが頭を過ってくるのだった。
 もしかするとあの二人は、僕やサークル仲間には内緒でこっそりつきあっているのかもしれない。つきあっているとまでは行かなくても、お互いもしくはどちらかが好意を持っていて、僕やサークル仲間に内緒で、時々ああやって二人きりで出掛けたりしているのかもしれない。
 川崎は僕が絵美のことを好きだと知っているから、気を使って二人で会っていることを言いだせなかったのかもしれない。
 僕は歩きながらため息を吐いた。
 もし、絵美と川崎が付き合っているというのであれば、僕は絵美に告白しない方が良いだろう。でも、もしかすると、本当にたまたま街中でバッタリ会ってしまっただけなのかもしれない。だったら、予定通り誕生日までに絵美に告白すれば……。
 迷っていないで、川崎に「絵美と二人で歩いているところを見たけど、どうしたんだ?」と正直に訊けば良いだけの話かもしれない。でも、もし二人が付き合っていて僕に気を使って言えなかったのであれば、絵美に告白出来ないどころか、川崎との関係もギクシャクしてしまうだろう。
 僕はこれからどうすれば良いのか、わからなくなってしまった。


 僕は迷ったまま、とうとう自分の誕生日を迎えてしまった。絵美に告白できず、川崎にもどうして絵美と二人でいたのか訊くこともできないままだった。絵美にも川崎にも会うのが気まずくて、サークルは理由を付けて欠席してしまった。川崎と同じ授業がある時はわざと遅く行ったり早く行ったりして川崎と出くわさないようにした。
 誕生日だというのに重い気持ちのまま一人で学校の構内を歩いていると、不意に聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。振り返ってみると、絵美が立っていた。
「おはよう。この間サークル休んでたけど、どうしたの?」
「うん、用事があって」
 僕は絵美の方をまともに見ることが出来なかった。
「そうなんだ。――あのね、ちょっと話しがあるんだけど、こっちに来てもらってもいい?」
 絵美が手招きした。
 用事ってなんだろう? と僕が絵美の後ろを付いて行くと、絵美は人影のない場所まで来て僕の方を振り返った。
「あの……」
 絵美はうつむきながら、カバンの中からラッピングされた包みを取りだした。「誕生日おめでとう! これ、プレゼント」
 僕は呆気に取られた。
「えっ? 俺に?」
「うん、今日、誕生日だって聞いたから」
 僕は突然の展開に驚いたが、絵美からプレゼントをもらったことと「誕生日おめでとう!」と言われたのがすごく嬉しかった。
 僕は絵美に「ありがとう」を言って、プレゼントの包みを開けてみた。中から僕がずっとほしいと思っていたスマホケースが出てきた。
「これ、ずっとほしかったんだ。――でも、どうして俺がこれほしいってわかったの?」
 絵美にこのケースがほしいなんて言ったことなかったけどな、と僕は思った。
「実は川崎君に相談して、教えてもらったの。売っている場所も良く分からないから、場所とかも教えてもらったんだ」
「そうだったんだ」
 じゃあ、僕がこの間見たのは、僕のほしいスマホケースを売っている場所を教えている川崎と、僕の誕生日プレゼントを買おうとしていた絵美だったんだ……。
 こんなことなら、さっさと川崎に訊いておけば良かった、絵美に告白しておけば良かった。
 僕はさっきまで悩んでいた自分が馬鹿らしくなってきて、ふと笑いたくなってきた。


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