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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

性別 男性
将来の夢
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BEKI

17/11/16 コンテスト(テーマ):第147回 時空モノガタリ文学賞 【 迷い 】 コメント:2件 霜月秋介 閲覧数:357

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 目の前に三軒、店が並んでいる。右側がいつも行き慣れたラーメン屋であり、中央が本日限定全品半額の全国チェーンの牛丼屋。そして左側が今まで一度も入ったことの無い洋食レストランだ。俺はこの三店を前にひとり、どの店に入ろうか迷っていた。
 右側のラーメン屋は美味しい。だからこそいつも行っていた。しかし全メニュー制覇したし、だんだんと飽きつつあった。俺は毎度SNSに今日食べたランチの画像をSNSに載せている。またいつものラーメン屋のメニューを載せても新鮮味に欠けるだろう。
 中央の牛丼屋も確かに美味しい。しかし全国チェーンの牛丼の画像をSNSにアップしても、「だからどうした」と思われるだけだろう。
 残るは左側の洋食レストラン。入ったことはないし、そこの料理をSNSに載せたら新鮮味があって、閲覧者の反応が明るいかもしれない。ただし、ものすごく高そうだ。
「なにをそんなに悩んでいるのですか?」
 しばらく悩んでいると、見知らぬ若い女性が話しかけてきた。
「いや、どこで食べようかなと…」
「実は私もこれからお昼なんですよ。真ん中の牛丼屋行くんです。今日半額だって聞いたんで。では」
 そう言ってその若い女性は、満面の笑みで牛丼屋に入っていった。俺もつられて入りそうになった。
「すごく美味しかったね。ここのレストラン」
「だろ!俺にとってはこの町では一番の味だよ」
 若いカップルが、左の洋食レストランから満足そうな顔で出てきた。そこのレストラン、そんなに美味しいのか!よし、ならば今日はそこに入ろう。
「なあ知ってるか?そこのラーメン屋、今週で閉店だってよ」
「まじか?じゃあ今日はここにしよう」
 そんな話をしながら、ツナギを来た中年男二人組がラーメン屋に入っていった。知らなかった。まさか今週で、行きつけのラーメン屋が閉店するなんて。その情報が、俺の迷いを吹き飛ばした。

 最近の俺は、昼食の店選びの基準を「SNSで映えるかどうか」で選んでいた。誰かと一緒にいるときは、その誰かが選んだ店に行っていた。そうこうしているうちに、自分が本当は、何処で何を食べたいのかがわからなくなっていた。自分の意見を出せなくなっていた。いつも迷ってばかりで、自分の力で結論に至らず、最終的には他人に決めさせてしまっている。今回だって、ラーメン屋が閉店するからという理由ありきで行った。食べたいからではなく、食べるべきだからという理由で行った。牛丼屋に入ったさっきの若い女性もおそらく、半額だから食べるべきだと思ったのかもしれない。

 人生は一度きり。多くある選択肢の中から、嫌でもひとつだけ選ばなければならない。ただし、どれを選んでもいい。選ぶのは自由だ。だからこそ迷うのかもしれない。でも迷うということは、きっとどれを選んでも大差ないのだ。どれを選んでも喜びもあるし、後悔もある。重要なのは、誰かの意志ではなく、本当の自分の意志でそれを選んだかどうかなのだろう。そんなことを考えているうちにラーメンをすすっていたら、突然ラーメンの中にカメムシが落ちてきた。その時点でもうラーメンなどどうでもよくなって、俺は店を出た。


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このストーリーに関するコメント

17/11/21 そらの珊瑚

霜月秋介さん、拝読しました。
そういえば人は日常様々な場面で迷い、選択を繰り返しながら生きていますね。
たまには失敗したかなと思うようなささいな選択もありますが、
自分の意思で選んだかどうか、結局はそれが大切なのだなあと思いました。

17/12/06 霜月秋介

そらの珊瑚さま、コメントありがとうございます。
そうですよね。他人に決めさせた選択なら文句つけられますが、自分自身の選択なら、たとえ失敗しても受け入れざるを得ないですよね。

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