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セレビシエさん

受験生です。 小説と生物が好きです

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演技力

17/11/13 コンテスト(テーマ):第148回 時空モノガタリ文学賞 【 ホラー 】 コメント:0件 セレビシエ 閲覧数:80

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彼の蹴りは強い。僕が彼について記憶していることの全てはそれだったが、記憶よりも強かった。そういえば今日は月曜日だから体力が有り余っているのかもしれない。彼はすぐに飽きてしまう。それもだいたいいつも同じくらいの時間だ。終わると僕はお腹が空くのでコンビニで肉まんを買うことにしていた。額から流れる血に視線が注がれて愉快な様な滑稽で馬鹿馬鹿しい様な気持ちになる。声をかけてくる物好きはいなかった。ガラス越しに見ることにすら臆病になっている。夕陽のオレンジは暖かかったがアスファルトのシルバーと混ざりあってぬるま湯みたいだった。
ふと、そろそろ頃合いだろうと思った。それは自然発生したものだったから理由を探すことは諦めた。

翌日、僕は学校に匿名で動画を送った。
案の定、学校何もは言わなかった。1週間は待つことにしていたが、退屈だったので木曜日には明日まで待つということにしてしまった。
金曜日の朝に僕はタマゴのサンドイッチを食べながら、少しだけワクワクしていた。高校生活ではこれが一番面白くなるような予感がしていた。
僕はSNSのアカウントに学校に送り付けた動画と同じものを上げた。待ち時間にシャワーを浴びることにした。
シャワーから戻ると、拡散が始まっていた。同じ高校の人間が初めに拡散し、そこから段々と広まっていく。県で一二を争う進学校、特徴的な制服のおかげであっという間に高校名が出回り、暫くすると僕を蹴っていた人間の名前も晒し上げられていた、山本と言うらしい。

翌日、学校にテレビの取材が来て緊急集会が開かれた。思っていたよりも事が上手く運んで、僕はほくそ笑んだ。学校は当たり前のように、イジめは認知していなかったと話した。ここからは演技力次第だった。僕は久しぶりに汗をかいてゆっくりと深呼吸をした。
「あの動画は僕が自分で撮ったんです」
取材の人間、学校の人間、暇な保護者、生徒が一斉に僕を見た。
「イジめをこっそり録画して、学校に提出したら、学校がイジめを止めさせてくれると思ったんです、それなのに......!」
僕は俯いた。場の流れは予測通りに動いていた。
「学校に動画を送っても、何もしてくれないから、仕方なくSNSに動画を上げたんです...」
僕が台詞を言い終わらないうちに学校に対する攻撃が始まった。初めは保護者から。彼女らは人間で最もつまらない部類に入る。大混乱の末に僕は学校を出て、すっかり満足してしまった。
僕を蹴っていた人間は退学処分になった。暫くの間、僕は学校で触れてはいけない大切なもののような扱いを受けたが、それは余興にしてはあまりにつまらなかった。

ただ、ひとつ面白かったことと言えば、僕をイジめていた人間はどうやら家庭が崩壊したらしい。
更にそいつは、最近自殺したらしい。あくまで噂ではあるが、僕は彼の思い切りの良さに感心をした。
名前は、忘れてしまった。


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