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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

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迷いたいのに君は

17/11/10 コンテスト(テーマ):第147回 時空モノガタリ文学賞 【 迷い 】 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:97

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あぁ、迷いたい。必死に迷ったフリをしてるのに、どうして君は正しい道を見つけてしまうのだろうか?
「こっちの道の方が近いかもしれないよ」
「そうね、そっちで行きましょうか」
僕の迷いたい願望をまんまと受け入れてくれた君。僕はとっても嬉しかった。君と一緒にいられる時間が少しでも多くなるから。
しかし君はすぐに僕が提案した道から外れようとする。
「こちらの道の方が早く着きそうね」
君は僕が提案した道が遠回りになっていることに気付く。しかし決して僕を攻めたりはしなかった。

そもそも僕がこうして君と一緒に道を歩ける事は奇跡に近い。図書委員会で一緒だが、クラスも違う君とは交わることすらなかった。しかし何故かこの日、先生は僕と君で図書室に使う道具の買い出しを任されたのだ。
「先生なんで僕たちに頼んだんだろうね」
「私たちが図書委員だからじゃない?」
「でも図書委員はいっぱいいるしさ」
「そうね。そんなこと考えもしなかったわ」
僕は買い出しに向かう中、話が途切れないよう君にずっと話しかける。しかし君はさほど興味を持ってくれなかった。
それでも僕は君とこうして一緒にいられることを幸せに感じている。どうせならこのまま学校に戻らないでどこか遠いところに行ってみたいぐらいだ。しかし君はそんなことは決してしないだろう。
成績優秀、運動神経抜群、容姿も整っている君はみんなの憧れの存在。それでもおごらない性格で、規則に正しく生きている。きっと生まれてから一度も悪いことをしたことがないんじゃないだろうか?
だからこそ僕は君と一緒にいれる時間が長くなるように迷いたかった。道に迷うことで一分一秒でも長く君と一緒にいられるから。
「着いたわね」
「あぁ着いたね」
僕は迷いたい願望を持っていたが、ほとんど迷うことなく目的地に辿り着いてしまった。とても残念な思いでいっぱいの僕をよそに、君は淡々と買い物を始める。
「本棚に使うプレート持ってきてちょうだい」
終いには買い物を早く済ませるため、君と僕は別れて買う物を探すことになった。僕が思い描いていた理想とは真逆の展開が繰り広げられている。

君のことを知ったのは図書委員になるずっと前のことだった。たまたま廊下ですれ違った君に僕は一目惚れしたのだ。長い髪の毛がサラサラと僕を横切り、それと同時に今まで嗅いだことのない爽やかで少し甘い香りがした。目で君を追ってしまうほど君は魅力的だった。
僕は何とか君と接点を作るため、友人に君のことを聞きまくった。そして君が読書家で図書委員会に入っていることを知った。さらに二年になってもきっと図書委員会に入ると予想できた。
本に全く興味がない僕だが一か八か図書委員会に入ると、予想通り君がいた。遠くから君を眺めているだけでよかったが、いざ二人きりになったら手離したくない気持ちが高ぶってしまう。
「買い物はこれで終わりね」
君が残酷にも買い出しの終了を僕に告げる。きっと帰り道も最短ルートを通るだろう。僕はせっかく君と二人きりになれたのに、何もできずに後悔する。もう二度とこんなチャンスないのに。
大きい魚を逃したと落ち込んでいると、君は少し不思議そうな顔をしてこちらを見てくる。そして君は腕につけていた時計を見て
「三十分余裕できたわね。お茶でもしていきましょうか?」
と声をかけてくる。僕は突然の誘いに驚きが隠せなかった。一度逃したチャンスが舞い戻ってきたというのに僕は口走った。
「い、いや。先生待ってると思うよ?早く帰った方が…」
頭の中と言葉が噛み合っていない。せっかくのチャンスを僕は棒に振ってしまったのだ。何をやってんだ、もう自分に失望してしまう。しかし君は僕の言葉をフフフと笑いながら
「私たちは本来一時間半かかる買い出しを三十分も巻いたのよ?時間を巻くことができたなら、その時間は自由に使ってもいいじゃない?」
と応えた。そして君は近くの喫茶店へと足を運ぶ。君は一度も悪いことをしたことがないと思っていたが、平然と買い出しの途中で時間を潰している。もしかしたら君はこれを悪いこととも思ってないのかもしれない。
道に迷っていたら、この時間を過ごすことはできなかった。そして僕は気がついた。人生も迷ってたら、チャンスを逃してしまうことを。
「今度君の好きな本、教えてくれないかな?」
僕はこのチャンスを逃してしまわないように、迷わず声に出して君を誘った。
君はフフフと笑った。
「あなたのも教えてくれたらね」
本に全く興味がない僕はジワリと生温い汗が背中に流れ落ちた。


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