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むねすけさん

ブログで創作をやっていましたが、誰にも相手にしてもらえないため、こちらに辿り着きました。 面白い物語、少しほっとしてもらえるようなお話を書きたいと思っています。

性別 男性
将来の夢 作家になりたいですが、 それが無理でも、何かの原案家とか、 自分の考えた物語が世に出ること。
座右の銘 我思う、故に我在り。

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治ったらデートでもしよーぜ

17/11/06 コンテスト(テーマ):第146回 時空モノガタリ文学賞 【 デート 】 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:161

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「病気が治ったらデートでもしよーぜ」
 アイツが彼女の病室で言い残したセリフに、俺は嫉妬していた。
 彼女は案の定、俺の存在など忘れたかのように目をハートマークにして剥かれたリンゴを齧る。
 彼女が精神衰弱で入院したとの報せを聞いて、俺は道々かけてあげたい言葉を人生振り返りながら探してきたってのに。
 お見舞いといえば果物カゴと、値段も気にせず注文し、病院だからと派手なファッションは控えたのに。アイツのニット帽にはドクロマーク。ネックレスはいつものクロムハーツ。なんも考えずにやってきやがって。
「押本、俺この梨喰いたい」    
 病室の第一声がそれかよ。しかも指さしたそれは果物カゴの中でも一番値の張る洋梨。あの野郎、暗に俺のこと用無しって言いやがったのかな。いや、そこまで頭の回るやつじゃないか。そこがまたムカつくんだよ。
「坂下君とデートかぁ」
「よかったな。病気治すモチベーションできたじゃん」
「何処連れてってくれるかなぁ。オシャレなとこ行くかなぁ。よっしゃぁ。職場のパワハラお局なんぞに負けてたまるかー、さっさと退院して復職して、坂下君とデートだ!!」
「よかったじゃん」
「押本くーん。このリンゴ美味しいけど、私リンゴ摩り下ろしたの食べたいな」
「あぁ、明日下ろすの持ってくるよ」
「ありがとね」
「うん」
 わかってるんだ。彼女に何をしてやっても俺は坂下には勝てない。だけど、いいんだ、俺は。
「他にもなんか欲しいものとかあったら言ってくれよ。今は甘えていいんだから」
「ありがとね。じゃーね」
 こけてしまった頬っぺたを精いっぱい膨らませて、彼女は言った。
「リンゴ摩り下ろすの、坂下君にお願いしてくれないかな」
「え」
「私からは言えないもーん」
 俺は病室の白さにもう、すっかり白旗。いや、坂下と美幸ちゃんと知りあってからずっと、白旗。
「アイツはそんなこと絶対しないだろうと思う」
「よねぇ。ごめん。言ってみただけ」
「やなやつ」
「ごめんね」
「手ぶらできやがって。洋梨喰いたいってお前の洋梨じゃねーよ」
「ふふふふ。ホントよね。坂下君っておかしいの」
「デートでもしよーぜって、てめーには嫁も子供もあるじゃねーか」
「うんうん、そーだそーだ、いいぞ押本君」
「俺がどんだけこのお見舞いに気持ち込めてると思うんだよ」
「ねー。押本君はいい人だ」
「やなやつ」
「ごめんね」
 
 俺は帰り道に考える。どうして俺は美幸ちゃんをデートに誘えなかったんだろうな。あんな既婚者より俺としよーぜって。そう、言えなかったんだろうな。
「じゃぁ、明日リンゴ下ろすの持ってくるから。坂下にやらせられなくてごめん」
 あんな言葉より、
「病気治って退院したら、俺とデートしよう。坂下なんかほっといて」
 そう言えなかったんだろう。
 それはきっと。
 俺は坂下に電話をかける。
「あれ、どーゆーつもりだよ」
「なにが?」
「既婚者がデートになんか誘ってんじゃねーよ」
「美幸が病気治そうって思ってくれればそれでいいだろ」
「そうだよ。じゃーな」
 そうだよ。そうなんだよ。
 俺は果物屋に寄る。
「あら、お見舞い喜んでもらえました?」
 店主のおばさんが微笑んで声をかけてくれる。
「はい。彼女、喜んでました。すいません。洋梨、ひとつください」
 うちで一人、洋梨を食べた。
 まずはここからと、俺は思った。
  


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