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戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ率高し。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha

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将来の夢 積極的安楽死法案を通すこと
座右の銘 常識を疑え

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奇妙な戦闘力

17/11/06 コンテスト(テーマ):第148回 時空モノガタリ文学賞 【 ホラー 】 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:46

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 貧民街に、ただならぬ戦闘力を有する子供がいた。
 この時代、戦闘力測定器が民間人レベルにも普及しており、余計なトラブルを事前に回避できていた。敵わないとわかっていれば喧嘩など最初からしない、異様に高いなら違法な武器を持っているだろうから通報する、などだ。
 しかしその貧民街の子供は、武器を持っているわけでもないのに、プロの格闘家と同等の戦闘力を有していた。噂は、測定器を持たない貧民街の者たちにも広がり、誰も手出しをできなくなっていった。
 強さを背景にしていれば、誰も逆らえない。

 それは貧民街という、半分アウトローな場所に限らなかった。成長した子供――青年は貧民街を出た。戦闘力は更に高まっている。
 そんな相手に仕事を求められれば、無下にはできないからと雇うしかない。貧民街出身だからといって、いじめなどするわけもない。特別仕事ができるわけでなくとも、徐々に青年は人並みの生活をできるようになっていった。
 こうなると、噂は貧民街や関係者の間に留まらなくなる。
 マスコミや戦闘力測定器メーカー、科学者、格闘家などが接触を図ってくる。
「戦闘力が成長に伴い増えているのはいかにも自然だが、それにしても強過ぎる」「測定器に故障は見られない、本当に戦闘力が高いとしか思えない」「勝負してみたいが、この戦闘力と戦えば死んでしまう、試せないぞ」
 結局何故青年は戦闘力が高いのか。
 本人は口外こそしなかったが、実は本人にもわかっていなかった。親の存在など元から知らないため、自分は人間ではないのかもしれないと疑ったほどだ。今や猛獣よりも、銃を所持する人間よりも、戦闘力が高い。
 原因が誰もわからない――。科学が発展した世において、久々のホラー現象だと、より噂は世間に広まった。
 依然原因がわからないまま、戦闘力は更に高まり、都市部で悠々自適な生活もできるようになっていた。
 ただ不満もある。こんなホラー現象を抱えていれば――原因不明なことと強過ぎることの両方がホラーだ――、恋人はもちろん友人の一人もできはしない。
 それに、もう身体の成長は止まっているにも関わらず、戦闘力は高まり続けているのも不気味だった。

 時間を経る毎に強くなる。際限なく強くなるかのようだ。
 こうなってくると、国家も放っておいてくれない。新兵器との疑いを他国に持たれるのを恐れて、管理下に置こうと動いてきたのだ。
 冗談ではない。せっかく貧困から抜け出し、裕福に暮らせているのだ、束縛などされたくない。
 生活に余裕もあることであるし、自身でさり気なく原因を探ることにした。
 トレーニングジムに通ってみたり、射撃をしてみたり、といったことで戦闘力にどう影響あるのか見てみる。しかしそれらによる戦闘力の上積みは誤差ベレルであり、青年自体が元々強いという結論しか出なかった。
 次に原因を貧民街に求めて訪れた。自分の生まれを知る者はいないのか、探し回る。しかし残念ながら、何も見付からなかった。仮に見付かったとしても、戦闘力が高い原因が判明するかは怪しかったが……。
 途方に暮れながら貧民街を後にしようとした、その時だった。
 子供だ。子供がいる。その子供に、粗末なナイフで刺された。測定器など持たない貧民街の子供は、外から金を持った弱そうな人間がやってきたと思い、強盗殺人を働いたのだ。
「何故……」
 青年は意識を失いかける際、そう呟き、地に伏した。もちろん刺された理由のことではない。そんなことは貧民街出身の青年にはよくわかっている。
 そうではなく、何故、戦闘力が高いはずであるのに、子供のナイフ程度でやられてしまったのか。国家が危険視するほどの戦闘力が、何故――。

 青年のもとへ駆け付けた救急隊員は、小さく悲鳴を上げた。
 青年のことを知っていたのもあるが、それよりも、既に事切れているにも関わらず、青年の戦闘力は高かったのだ。
 あまりにありえない。完全にホラーだ。
 死因および戦闘力解明のため、解剖が行われる。解剖医らも緊張が半端ではない。この死体がいつその高い戦闘力を行使してくるのかと、震えながらの作業だ。
 しかし――。死因も戦闘力の原因もあっさりと判明した。
 小型で強力な爆弾が体内に埋め込まれていたのだ。貧民街の子供が戦闘力を背景に都市部で暮らせるようになる頃爆発するよう設計された、時限爆弾が。
 もしテロリストの想定外で殺されていなければ、あのまま国家が管理下に置いていれば、甚大な被害が出ていただろう。

(了)


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