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甘露さん

こんにちは。

性別 男性
将来の夢 未定
座右の銘 愛はいるよ。愛は人類の宝だよ。

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リアリティショー

17/11/05 コンテスト(テーマ):第146回 時空モノガタリ文学賞 【 デート 】 コメント:0件 甘露 閲覧数:107

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「今日は楽しかったよ。ありがとう」
目の前には、普通に生活を送っていたら出会うことがないような綺麗な女性。その顔には笑みが浮かんでいるが、本心ではどう思っているのだろう。その笑顔は貼り付けられたものなのだろうか。
いや、今日のデートは完璧だったはずだ。話も弾んだ。大人の男の余裕も見せられた。ディナーの後の会計もスマートに済ませられた。顔は飛び抜けて良いというわけではない。だが、彼女はとても感じ良い女性で、彼女の言葉を借りれば「優しい人が好き」というタイプだ。今日の俺のデートに落ち度はない。きっと大丈夫だ。
「俺と付き合ってください」
渾身の一言を放つ。彼女の目を真っ直ぐに見て、左手を差し出す。
その動作を見計らってか、少し離れたところにいる眼鏡をかけ、スーツを着た男性が、マイクを通して言う。
「さあ。田中さんは勇気を出して告白。それに対して桃井さんの答えは」
声が大きいな。これも番組を盛り上げるためか。他人の色恋なんて、興味もないだろうに。
でも、そんなことはどうでもよかった。目の前の女性、桃井さんが、自分の気持ちを受け入れ、これから一緒に過ごせるならば、それはどんなにか。
桃井さんは、一瞬俺から顔を逸らし、目を伏せる。
嫌な汗が身体中から染み出す。それがシャツにくっ付いて、心地が悪い。俺はただ彼女の方を見ていた。
そして、彼女が顔を上げる。そこには、曇りのない笑顔があって、そして。
「よろしくお願いします」
こう言って、はにかんだ。
心臓が高鳴り、鼓動を打つ度に飛び出そうだった。
ほんとに? こんなに素敵な女性が、俺の、俺の、彼女に? うわ。俺の顔気持ち悪いことになってないか。にやけが止まらんのだが。
彼女の言葉の後、少し余韻を残してから、司会の男性が声を張る。
「カップル成立です。では、お二方こちらへどうぞ」
司会の男性は手を広げて、近くにある二つの椅子を指し示す。男性はテレビ向けの爽やかな笑顔である。
俺と桃井さんは、並んでその椅子に座った。そして、隣を見ると、そこには綺麗な女性がいて、笑顔を浮かべている。その彼女がこちらの方を向いて、目線が合う。その瞬間、少し顔を赤くして恥じらいの表情を見せる。
かわいいな。こんな女性と、これから一緒に過ごしていけるのか。幸せすぎる。
「それでは、お二方、相手に向けて一言づつお願いします」
桃井さんが、こちらの方を真っ直ぐ向く。そして、その口を開く。
「今日のデート、とても楽しかったです。また、一緒にどこかへ行きましょう」
100点いや、120点のコメントだった。また、この子と出掛けられるんだ。
「では、田中さんも一言お願いします」
それを聞いて、大きく息を吸う。想いを込めた言葉を、桃井さんに向ける。
「桃井さんのこと、大切にします。これからよろしくお願いします」
「はい、それでは、お二方、お幸せに!それでは、また来週お会いしましょう!さようなら」
拍手喝采。そして、スタッフさんのカットの声がスタジオに響く。
俺は椅子に座って、隣の席にいる彼女の存在を感じていた。そう、文字通り、彼女なのである。
声をかけていいんだよな。手を握ってもいいんだよな。それ以上のことも。例えば、キスとか……。
「田中さん、お疲れ様でした」
桃井さんが、笑顔で会釈する。
その言葉になんだか違和感を感じる。お疲れ様? よそよそしくないか。
「お疲れ様でした、なんて。これからはタメ口でいいんだよ」
そう言うと、彼女はきょとんとして、首を傾げる。と、はっとしたような表情で、こう言った。
「ああ。さっきおっけーしたの無しでお願いします。すいません、本気にすると思ってなかったんで、言わなくてもいいと思ってて。私たち番組の最後の二人だったじゃないですか? だから、おっけーした方がテレビ的に盛り上がると思ったんです。だから、その……そういうことです。お疲れ様でした」
一礼。そして、身を翻し、彼女はスタジオを後にした。
俺は椅子に一人残された。そして、天を見上げ、ため息を一つついた。


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