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甘露さん

こんにちは。

性別 男性
将来の夢 未定
座右の銘 愛はいるよ。愛は人類の宝だよ。

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迷いの中

17/11/05 コンテスト(テーマ):第147回 時空モノガタリ文学賞 【 迷い 】 コメント:0件 甘露 閲覧数:328

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このところ気分が優れない。
「もう3日後には卒業かあ」
放課後の教室、対面に座る健志の言葉は、独り言ではなく俺に向けられたものだろうが、どこか遠くの世界で響いている感じがした。
私の将来はどんなだろうか。私は何が為に生きるのだろうか。そんなことが、四六時中頭を支配して、私は私の未来が全くわからなくなっていた。終いには、未来が思い描けない、ということは、自分の人生はここで終わりという暗示ではなかろうか、と考えてしまう始末で、早い話が鬱状態だった。
「お前は第一志望の国公立受かったし、気持ちよく卒業迎えれるな。俺は落ちて私立だけど、いうてあんま気にしてないわ」
からっと笑ってみせた健志に対し、「そうか」と返すが、思考はそちらに全く向いていなかった。脊髄で会話をしている感じ。
「受かる方がおかしいって。だって、旧帝だぜ? 俺は受かったらラッキーくらいのノリだったしな。でも、お前はすげえよ。俺は受かる、って言って本当に受かっちまうんだから」
妬みなど一ミリも感じさせない笑顔で健志が言う。その言葉に「ありがとう」と返すが、前の俺なら「当たり前だろ」とでも返してたはずだ。
確かに、俺は受かると信じていた。信じてやまなかった。自分が本気で目指せばできないことなんてないと思っていた。そして、その通りこの高校生活をかけて本気で勉強し、実際に合格した。ずっと望んでいたことが実現した。これで俺は満たされる……はずだった。
俺は何の為に大学へ行くのだろうか。何の為に生きるのだろうか。何をして生きて行くのだろうか。人間はいつか死ぬ。いつか死ぬのなら、何の為に生きる? 何をしていたって一緒じゃないか? このような言葉が浮かんでは消え浮かんでは消え、頭の中をぐるぐる回り、自分はその渦に吸い込まれていった。
と、そのとき健志の言葉が斜め上の角度から、俺の意識に突き刺さってきた。
「よし、あっち向いてホイしようぜ」
あまりにも突拍子のない提案に思考が中断される。なにを言っているんだこいつは。つい、脊髄反射的に言葉を返してしまう。
「なんでだよ」
少し棘のある言い方になってしまい、後悔する。眉間にシワが寄ったかもしれない。しかし、そんな俺に健志は嫌な顔一つすることなく、むしろ清々しい顔で言うのだった。
「意味なんてねーぞ」
と。
「うぇっ?」
その動機もくそもない発言に、「え?」というつもりで発した言葉が、何やらげっぷを伴ったような音になる。
「なんだよ、その反応。やっぱ、お前って天然だよなあ」
そう言って健志は、俺の間の抜けた顔を見て、太陽のような笑顔でずーっと笑っていた。


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