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善行さん

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将来の夢
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あいて

17/10/24 コンテスト(テーマ):第146回 時空モノガタリ文学賞 【 デート 】 コメント:0件 善行 閲覧数:156

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「この前、行ったところってどこだっけ?」
まだ温かいブレンドコーヒーを飲みながら聞いてみた。
「・・・最近だと、鎌倉ですね」
「写真って出る?」
「・・・こちらですか?」
「あっ!そうそう!これこれ!」
「・・・」
「あの時は春で桜が綺麗だったねぇ」
「・・・」

鎌倉って町というか地域は好きだなぁ。
なにが好きというわけではないのだけど、近場で簡単な旅行気分が味わえるからだと思う。
東京から小田急線に乗り揺られること1時間程度。藤沢駅で乗り換え、江ノ電に乗ればもう遠方に旅行へ来たという気分。
京都や地方もとてもいい。でもいま住んでいる所から行くのなら、いざ鎌倉。
この地域はずるい。江の島から始まり、鎌倉まで観光スポットが目白押し。
雑誌やテレビには季節の度に取り上げられる。
今風にいうところのパワースポットと言われる寺社仏閣。
四季折々の景色。来る度に変わる店達。
そして歴史ある建物と現代建築物の融合。
もう話すところ、見るところがたくさんありすぎる贅沢スポット。

珈琲片手に、ぼーっとしていると、あの時を思い出したのか、思わず口から
「花見にと 群れつつ人の 来るのみぞ あたら桜の とがにはありける」
「・・・西行ですね」
ほほう、頭いいじゃねぇか・・・口には出さず、頷くだけで、何事もなかったかのように珈琲を一口。
春という季節は、いままでの冬の重さから抜け出て、解放される気分になる。
たしかあの句は花見の人がたくさん来て、騒がしい・・・それは桜の罪だ、とかって意味だったような・・・まぁ桜に人が集まるのは、やはり人はだれか相手が居ないと死ぬからなのだろうか・・・
いやいや、意味の取り方間違えている、やっぱ一人でいると変な方向へ考えこむなぁ。
下を向き、頭ポリポリ、だれに理解してもらうわけでもなく考えていると、
「相手ねぇ」
思わず、口から出てしまうと同時に顔をあげ、正面を正視してみた。
その言葉と行動に反応しない様子を見ながら、静かな店内で物思いにふけて、また珈琲を一口すすった。
「珈琲の美味しさわかる?」
「・・・大丈夫ですよ」
「なにが大丈夫なんだい?」
無言で出したシアトル系珈琲店のホームページに「ははは!」と思わず笑ってしまった。
「そんなことはわかるよ、そこが美味しいのは万人が認めるところだね。でもね、だからといってホームページじゃなくてもいいだろ?ほんと、面白いね」
「・・・ありがとうございます」
その返事に応えず、ほんとこういう一見無駄に見える掛け合いができるって大切なんだなぁ。
やはり、だれか居ないと生きられないってことか。
「好きだよ」
ふと出たわけではなく、心から突然口をついて出た。
「・・・ほかでも言っていますよね」
「そんな言葉がポンポン出てくるほど、私は出来た人間ではないよ」


静かで他に客の居ない珈琲店に、突然似つかわしくない、けたたましい、階段を駆け上がる足音がしたと思うと、バカでかい声が響いた。
「おう!わりぃわりぃ。待たせたな!いやいや、マジで電車が遅れていてさ」
「・・・本日電車の遅延情報は入っておりません」
「ん??なんだ、お前、また携帯のAIとデート?」

そんな騒がしい男を見ないように、しかし聞こえるように・・・
「早くデート行こっ!」
と立ち上がった。


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