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土佐 千里さん

とさちさとです♪田舎でのんびり過ごしています^^

性別 女性
将来の夢 安定した老後をおくること
座右の銘 ありがとうという感謝の心

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大切なもの

17/10/24 コンテスト(テーマ):第147回 時空モノガタリ文学賞 【 迷い 】 コメント:0件 土佐 千里 閲覧数:265

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「朝起きたら雨戸をあけて、顔を洗いなさい。顔洗ったらちゃんと朝ごはん食べて学校にいくのよ」
「帰ったら手洗いうがいをして、宿題やってから遊びに行きなさい」
「プリントやテストがあれば見せなさい」
「遊んだらお片付けしなさい」
「5時までには帰ってくるのよ」
「明日の支度は寝る前までにしなさい、歯を磨きなさい、何度言ったら分かるの」
小学三年生の亜美は、毎日毎日、母親に言われるが、ほとんどできたことがない。
学校から帰るなり、また母親が怒鳴る。
「おかえり、亜美。手洗いうがいをして、宿題やってから遊びに行くのよ。」
「もぉ、うるさいなぁ、分かってるよ。」
亜美はそう言うと家に帰るなり、宿題もせず、お気に入りの青い鳥のぬいぐるみだけを持って、家を飛び出した。
「今日も友達と遊ぶ約束してるんだもん」

亜美は暗くなるまで公園で友達と遊んでしまった。友達は公園に親が迎えにきてくれた。
「亜美ちゃん、気を付けて帰るのよ」
そういわれ、田舎道をとぼとぼと一人で歩いている帰り道。
街灯もなく、車も走っていない枯れ果てたすすきの生えた一本道を歩いていると、前方からなにかがやってきた…。
亜美はびくびくしながら目をやると、大きなオオカミが一匹、亜美のほうへ近づいてきた。
こんな田舎道で誰も助けてくれる人はいない。
なにか食べ物が有れば、オオカミに向かって投げるのに…今、あるのは、お気に入りのぬいぐるみだけ…。
どうしよう、ぬいぐるみを投げようか、私が逃げようか…
迷ったあげく亜美は
「もうだめだ…ごめん」
と言ってお気に入りのぬいぐるみをオオカミに向かって投げた。
するとオオカミはぬいぐるみに飛びかかった。
ただ時間を稼いでいるだけ…私も時間の問題。
そう思っていると、青い鳥のぬいぐるみはオオカミの倍の大きさになり、空中へ羽ばたき
「亜美ちゃん、僕が気を引いている今のうちに、走って逃げるんだ」と空から叫んだ。
「でも…」
亜美は大切なぬいぐるみを捨てて一人で逃げることができず、泣きながらその場にしゃがみこんだ。
するとぬいぐるみの翼が亜美をすくいあげ、空へ舞い上がった。
飛ぶことのできないオオカミは地上で吠えている。
青い鳥のぬいぐるみはそのまま亜美を乗せて家まで連れていった。
亜美は怖くてずっと泣いていた。
玄関の扉の前に着くとぬいぐるみは言った。
「亜美ちゃん、いままで大切にしてくれてありがとう。でももう僕は、もとには戻れない。ちゃんとお母さんの言うことを聞いて毎日頑張るんだよ、元気でね」
そう言うと星空の中へ身を消した。
亜美は迷いのあげくぬいぐるみを投げてしまったこと、大切なぬいぐるみを失ったこと、ぬいぐるみに助けてもらったこと、今までの自分について振り返った。
私が今日もちゃんと早く帰っていればこんなことにはならなかった…。お母さんの言うことを聞かなくちゃ。

その夜から亜美は、寝る前に明日の支度をして次の朝を迎えた。
朝起きたら雨戸をあけて…
雨戸を開けると電線に鳥が一羽とまって亜美をみていた。
亜美はもしかして、あのぬいぐるみかもしれないと目の前が涙でいっぱいになった。きっと私のことをずっと見ていてくれているんだ。
その日から、亜美は、母親にいつもの台詞を言われなくなった。ぬいぐるみは亜美を成長させてくれた。
あの日、遊びに行った帰り道で迷いの末、下した決断をずっと忘れない…。


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