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むねすけさん

ブログで創作をやっていましたが、誰にも相手にしてもらえないため、こちらに辿り着きました。 面白い物語、少しほっとしてもらえるようなお話を書きたいと思っています。

性別 男性
将来の夢 作家になりたいですが、 それが無理でも、何かの原案家とか、 自分の考えた物語が世に出ること。
座右の銘 我思う、故に我在り。

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財布じゃないけど何が買えるかな

17/10/23 コンテスト(テーマ):第145回 時空モノガタリ文学賞 【 財布 】 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:147

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「学校に財布持って来たらダメなんだよ」
 わかってるよそんなこと。
「これは財布じゃないよ。缶ペン。筆箱じゃないか」
「鉛筆も消しゴムも入ってないじゃない。お金しか入ってないじゃない」
 だからって。これは財布じゃない。
「全部外国のコインだよ。父さんがくれるんだ。俺はまだ子供で外国には行けないけど、いつか行ってみたい。だから今からワクワクを貯めておくんだよ。このコイン一枚で何が買えるんだろうって、想像するのが楽しいんだ。そのためだけなんだ」
「そんなら、ホントの筆箱に一枚だけ入れとくとか、名札の裏っ側とか、ポッケとかでいいじゃん。そんなにジャラジャラしてたら、財布も一緒じゃない」
 わかってねーなー。音だよ音。波の音聴いて金髪少女と引いていく潮に駆け出さないタイプかよ。
「音を聴いてるとなんかワクワクすんだよ。一枚じゃ音しないしさ。ジャラジャラってのが盗賊の報酬みたいでカッコイイじゃん。仕事人でもいいけど」
「そんなテレビの横切れた再放送のちょんまげドラマなんか見ないよ」
 見てんじゃん。かんざしでグッサリしてやろうか。
「兎に角ね、学校に財布持って来るの禁止なんだからね。やめてよね。私、学級委員なんだから。禁止のこと許せないんだから」
 しつこいな。学級委員なんて誰もやりたがらないからお前になったんじゃないかよ。競争もしてないんだから、偉くもないぞ、ちっとも。
「財布は持って来てないよ。俺がこれでなんか買い物したら、これは財布だろ? 俺しないよ、買い物」
「もー。しつこい」
 そっちだよ。
「そっちだろ、しつこいな、俺のこと好きなの?」
「…………」
 うわ。エンガチョ。ガチョーン。助けてガッチャマン。
「おい」
「ねぇ、竹本くん」
「なんだよ」
「一枚。選んでみて」
「え」
「いつも一人でしてること、私も一緒にさせてよ。連れてってくれたら、考えてあげるよ」
 めんどくさいな。それにこれは孤独の旅路。女の足なんか男の夢を追う速度について来れますかってんだ。でも、まぁ、誰かと一緒の旅もあるか。ローマの休日みたい。あのシーンが大好きさ。お金を分けあうんだ。末広が相手じゃ、アン王女の百分の一だけど。
「ホラ」
「ん」
 ちょっと、近い。お前、俺のこと好きなのかよって、今度言葉にしたらどうなるんだろう。
「これって、どこの?」
「10フランだよ。フランス」
「日本のより綺麗ね。縁が金色だ。これ羽生えててロマンチック……。エッチ」
 なんだよ。わざとじゃないよ。そんなとこ見る方が悪いだろ。エッチって、お前顔、ホントに赤いじゃん。
「笑うとこだろ」
「スケベ。わざとこれ選んだんだ。竹本くんって変態」
 エッチ、スケベ、変態。進化の過程で人の背筋は伸びていくんだ。変態で背骨は真っすぐになりました。パチパチパチ。
「偶然だよ。もういいよ。お前、吉田たちと一輪車して来いよ」
「一輪車飽きたんだもん。吉田さんには勝てないしさ」
「ふぅん」
「それなら竹本くんだって、角川くんたちとバスケしないの?」
 バーカ。俺角川とは絶交してんだよ。もう三週間目だぞ。鈍いな、学級委員のくせに、何見てんだよ。
「俺、あいつと絶交中」
「ふぅん」
 真似すんなよな。少し、息かかったぞ。末広の息、俺の顔にかかったぞ。フランスに10フランで何する。何買う。
「10フランってさ」
「うん」
「200円ぐらいの価値があるんだって。いいよな、なんか。ワクワクしない?」
 このコイン一枚で、何が買えるんだろう。何ができるんだろう。日本じゃないフランスで、このコインに何処へ連れていってもらえるんだろう。話す言葉はフランス語。ボンジュール。ボンジュール。
「200円あれば、遠足のお菓子が買えるね」
「うん。フランスには駄菓子屋ってあるかな」
「似たようなのはあるんじゃない。子供がお菓子を買うお店。オシャレそうだね。フランス」
「うん。うまい棒なんかダサいよな。これ一枚できっとオシャレなチョコか飴が買えるよ」
「そこはキャンディーって言わなきゃ。オシャレにさ」
 照れくさいんだよ。そんなの。教室俺たちしかいないからまだいいけど。
「ホラな、どう?」
「ん」
 楽しいだろ。フランス。10フラン。ワクワクが貯まったろう。この貯めたワクワクで俺は大人になっていつか、フランスに行くんだ。
「楽しいだろ?」
「まあまあかな。次は?」
「イタリアの100リラ」
「今度は首だけと、服着てる、よし」 
「なぁ」
「なに」
「この缶ペンは財布か?」
「財布だと思ってたけど、ちょっと違うみたいかな」
「先生に言わない?」
「しょうがないからね」
「100リラは400円ぐらいだって」
「わぁ、大金」
「何でも買えるな」
「うんうん」
 末広。顔、近いって。


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