1. トップページ
  2. マジックテープ

小高まあなさん

鳥と怪異と特撮ヒーローが好き。 ひねくれつつも清々しい物語がモットー。

性別 女性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

マジックテープ

17/10/23 コンテスト(テーマ):第145回 時空モノガタリ文学賞 【 財布 】 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:149

この作品を評価する

「ここはいいよ、俺が払うから」
 微笑んだ年上の男の人。やっぱり、大学生は高校生と違うなぁ。
 彼と知り合ったのはSNSだ。ヤバいやつじゃない、普通のやつ。ゲームの趣味が合うから話が盛り上がったのだ。キモいデブかなとか思ったけど、なかなかかっこよかったし、優しいし、マジやばい。
「ありがとうございますー!」
 笑顔でお礼を言うと、先にファミレスから出ることにする。
 レジに向かう彼。直後聞こえた、ビリっという音。
 まさかまさか?
 思わず振り返る。
 手にした財布はマジックテープ式のだった。それ、中学の時から使ってるんじゃないの? みたいなやつ。
 ないわー。
 彼の地位が崩壊した瞬間だった。

「えー、年上で、お金もまああって、頭良くて、顔もいいんでしょ? 財布ぐらいいいじゃん」
 月曜日の学校で、土曜の話をすると友達にそう言われた。
「えー、ないよー、ないない。うちのクラスでだって、マジックテープのやつはおたく系ぐらいじゃん!」
 いや、ホントのところは知らないけど。高校生より劣るって、ダメっしょ。
「なんかめっちゃ思い入れあるのかも知れないじゃん、聞いてみなよ」
「えー」
 マジックテープの財布への思い入れってどんなだよ。
 でもまあ、確かに彼のスペックは超高いのだ。財布ごときで捨ててしまうには勿体無い。
「あれだったら、財布一緒に買いに行けば?」
「頭いいね!」
 買い物行きませんか? とお誘いメールをした。

「財布?」
 もう一度、約束した土曜日。私の言葉に彼は首をかしげ、
「まだ使えるから替えてないだけだよ」
 そう言った。
「買い替えません? いいのありますよ」
「どっちでも」
 私の言葉に彼は曖昧な返事をした。どっちでもってなんやねん。
 デパートの財布売り場を眺め、程よく品のある革の財布になった。これをポンと買えるなんて、やっぱりすごいなっていうお値段だった。
 年上でお金もあって顔も良くて頭も良くて、財布も悪くなくて。この人は、イイ。一緒にいるの、ステータスになる。
 欲しい。

 ご飯を食べて、駅まで送ってもらう。
「今日はありがとうございましたー」
「こちらこそ、財布見立ててくれてありがとう」
「あの、」
 言葉を切って、ためて、上目遣いで。
「また会って……くれますか?」
 決め台詞を放つと、
「それはないかな」
 まさかの即レスだった。
「へ?」
 笑顔のままの言葉に、固まる。
「ゲームの趣味が合うからってことだったけど、実際顔を合わせてても君、ゲームの話しないじゃん? 当初の目的、実際に会ってみて消えて、変わったでしょ?」
「変わったって……」
「ゲームの話をするんじゃなくて、狩りっていう新しいゲームをはじめたんだよね」
 なんで? 優しかったし、いい感じじゃないの?
「財布、マジックテープでがっかりして、一回嫌いになったでしょ」
 笑う。
 そして、
「悪いけど、僕は君のアクセサリーにも財布にもならないよ」
 年上の男の人はにっこり微笑んで言った。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン