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おまわりさん財布について

17/10/23 コンテスト(テーマ):第145回 時空モノガタリ文学賞 【 財布 】 コメント:0件 mokugyo 閲覧数:108

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「おまわりさん財布
財布についてだ
聞いてくれ

財布に殴られたんだ
傷害事件だこれは
ひどいと思わないか
俺は痛くてしょうがない

何?財布が殴るなんてとぼけた話があるかだと?
このバカ野郎!
財布はいつも金出させてるあいつのことだ!

この国家権力の犬が!
てめえらどうせ拾った財布が交番に届けられてもネコババしてんだろうが!
てめえらがちゃんと仕事しねーから悪がのさばるんだ!

何だと?
人のことを財布呼ばわりして
あげくのはてに交番に怒鳴り込むような俺こそが悪いと?
クソが!

俺がどんだけ金で苦労したと思ってんだ!
俺は小さい頃から貧乏で頭も悪く!
働けど財布が潤わない仕事しかできてねーんだ!
分かるか?
さんざん怒鳴られながらサービス残業をこなす日々が?
分かるか?
働いた分の対価がほとんで手に入らない虚しさが!

何?そういうことは労基署で相談しろだと?
てめえら公務員はいつもそうだ!
適当に追っ払ってごまかす!

どうせ俺らを国家のための財布としか見てねーんだ!
さんざん税金を搾り取って!
役人の見栄のために無駄に税金を使い尽くす!
俺らの財布はいつも空っぽだ!

だから!金のねえ俺は!俺より弱い奴から金をもらうしかない!
俺の財布になってくれる奴に頼るしかない!
俺を作ったのはてめえらだ!思い知れこの国家の犬が!」

以上が、殴られたと主張する怒鳴る男の言い分です。

そして、この直後に殴った方の男が交番にやって来ます。

殴ったほうの男は、とても冷静でした。警官の私を見て、こう言います。

「自ら交番に駆け込んでくれるとは。ご迷惑をおかけします。僕はこの近辺で発生するカツアゲ事件を調べていた調査官です。路地裏などで脅迫して弱い者から金をせしめる不届き者がいました。それがこの男です」

そして冷静な男は、怒鳴る男を見て、こう言います。

「まったくいい年して、みっともない。僕を年下の弱々しい男と思ってくれたのは助かった。僕の演技は上手かったろう?見事な財布からの金の受け渡しだったと思うよ。おかげで2回にわたる録音が可能となり、証拠がそろった。お前こそが恐喝男だ。弱い者から金を巻き上げようとするクズはお前だ」

怒鳴る男はおびえた顔をしています。冷静な男はなおも続けます。

「しかも、僕はお前を殴ってなどいない。お前が襟をつかんできたから、力強く振り払っただけだ。まったく、お前の驚いた顔は傑作だったよ。あわてて財布を落としていく様もみっともない。親切な僕は、お前の財布を交番に届けに来たんだ。そうしたらお前がいた。本当にお前はどこまでも間抜けな奴だ。お前が怒鳴る姿も見た。話も聞かせてもらったぞ。僕も貧しい出身だが、お前のように人から金を奪うような汚い真似をしたことはない。まったく、お前は自分の悪さを棚上げし、世の中のせいにするクズだ。さあ、この交番で罪を償え!」

ああ、怒鳴る男がおびえている。ああ、冷静な男がにらんでいる。平和を愛する私は、両者ともに幸せになってほしかったのです。

「私は交番の警官に化けた金の神です。あなた達にお金のことで争って欲しくはありません。そこで私は、あなた達それぞれに神の財布を渡します。この財布からは無限にお金が出てきます。好きなだけ使ってくれてかまいません。さあ、どうぞ」

そう言って私は、二人にそれぞれ神の財布を授けました。二人とも最初は驚いた顔をしていましたが、警官の姿をした者が言うことは信じてしまうのでしょう。二人ともに神の財布を喜々として受け取り、一目散にばらばらの方向へ走り出しました。

怒鳴る男は、人に対して怒鳴らなくなりました。冷静な男は、熱い心をもつようになりました。

ああ、良かった。

そう思ったのも束の間です。

怒鳴る男はひきこもるようになり、やがて衰弱し、神の財布を抱いたまま死にました。

冷静な男は横暴になり、やがて人の恨みをかい、神の財布を抱いたまま殴り殺されました。

ああ、なんてこと!結局、お金があっても幸せになれないおろかな人間!だから人間は面白い!

そう思っていたところです。神の財布が、そのがま口を開けて喋り出したのです。

「ちょっと何言ってるんスか。あんた、神を気取らないで下さいよ。俺ら財布の付喪神は、世にまわらない金のたまり場になってただけっスよ。金は無限じゃないっス。有限っス。俺らは札や小銭の付喪神を助けてただけっス。捨てられていく金を助けてただけなのに。人間のあんたが神気取って簡単に配らないで下さい!あんた、ただの警官でしょ?」

だまれ、財布ごときが!

「ほら、自分を神だと名乗って財布に語り掛けてるから。おかしい奴に思われて、警官クビになちゃったじゃないっスか。いやまったく財布ごときで人生狂わさないでほしいっス」

(終)


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