1. トップページ
  2. 迷うなら、自分だけで

夜門シヨさん

創作には愛をこめて。 まだまだ素人ですが、文章力向上のため精一杯頑張らせていただきます ˆoˆ /

性別 女性
将来の夢 グランドスタッフ
座右の銘 自分らしくあれ。他の人の個性は売り切れだ

投稿済みの作品

1

迷うなら、自分だけで

17/10/23 コンテスト(テーマ):第147回 時空モノガタリ文学賞 【 迷い 】 コメント:0件 夜門シヨ 閲覧数:448

この作品を評価する

 彼女は黒い何かを持っていた。

 彼女はそれを力強く握っていた。ここには自分以外に誰も居ないのに。盗られる心配など一つもないのに。
 とても大事そうに、けれど悲しそうな瞳で何かを見つめていた。


「捨てないの?」


 どこからか、子鳥のさえずりかのような、優しい声がした。
 そんな声が彼女の肩のあたりからしたが、彼女は特に気にしていないようで、その声の問いかけに答える。


「捨てたい。でも、捨てられない」

「どうして?」

「捨ててしまえば、幸せな思い出が無くなってしまう」

「でも君は捨てたいんでしょ?その辛い思い出を」

「……」


 幸せだった思い出は、いつしか彼女を苦しめる思い出となった。

 選択肢は二つだ。
 捨てるか、捨てないか。

 人生は、最低でも二つの選択を迫られる。
 彼女は今、その二つの道の間に立たされているのだ。


「まぁ、ゆっくり考えたらいいよ。迷うことはいい事だから」

「どうして?」

「ちゃんと考えてるから。これからの事を、ね。でも先を考えすぎるというのは悪いことかな。今の君みたいに」


 その声は何もかもお見通しだった。

 彼女は怖かった。
 その幸せを忘れてしまうことが。
 苦しみから逃げることが。
 考えれば考えるほど、彼女は迷っていた。


「ねぇ、君はどこを迷っているの?」

「どこって」

「それは自分の考えた道?誰かが割り込ませた道じゃない?」

「誰か……」


『え〜もったいないよ、絶対!』
『ちゃんと二人で話し合ったら?あんただって悪かったかもしんないし』
『別れるなんてありえないよ!もう、あんな良い男現れないよ?』
『話す時は私達が後ろでついててあげるからさ』
『逃げちゃダメだよ!』


「自分がどこにいるべきか分かった?」

「……うん。もう、迷わないよ。だって−−」


 彼女はある一点を見つめて、その手にある物から手を離した。


 *****


 すがすがしい青空の広がる早朝。
 ゴミ捨て場の前で、彼女は小さなゴミ袋をそこに捨てた。
 その中には大量の写真が詰め込まれていた。

 彼女はゴミ捨て場から離れ、アパートの部屋へもどった。


「よし」

「ピッ!」


 彼女が自身に喝を入れると、その肩あたりからも小さいながらも元気な鳴き声が聞こえた。


「ピーちゃん!私、頑張るからね!頑張って、あの人と別れるから!」

「ピピッ!」


 彼女の肩に乗る小鳥は、主人である彼女を応援するかのように、先程よりも元気よく鳴いた。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン