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蒼樹里緒さん

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性別 女性
将来の夢
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嘘で固めた芸術が闇に葬られればいいのに

17/10/23 コンテスト(テーマ):第147回 時空モノガタリ文学賞 【 迷い 】 コメント:0件 蒼樹里緒 閲覧数:238

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 ありえない。許せない。こんな世の中に誰がした。
 創作のネタばかりがたまっていくノートを、全力で破ってぶん投げたくなる。もったいないからやらないけど。
 紙の匂いが漂う部室で机に突っ伏し、俺は何度目かの長いため息を吐き出した。
 向かいに座った友達の、あきれたような声が降ってくる。
「続き書かないなら、もう帰れば? 疲れてるみたいだし」
「むしろなんでおまえとか部長とかほかの奴らはいつも通りに創作できるのか訊きてえよ」
 開いたままのノートには、文字がびっしりと書かれている。文芸部の作品としても書くつもりだった、たくさんのネタのメモ。
 ここからどう話をふくらませて小説を書いていこうか、わくわくしていたのに。今はそんな気力も情熱も湧いてこない。
 ノートパソコンを一旦閉じ、友達は俺を諭すように言う。
「好きになるアニメとかゲームとかがことごとくパクリ騒ぎで炎上して、ショックなのはわかるけどな。オレも嫌だったし」
「ああ」
「けど、気にしすぎても仕方ないし、オレらはオレらで自分の創作をがんばればいいんだって、こないだも言ったろ」
「わかってるよ。でも、気持ちの切り替えがうまくできねえんだよな……」
 パクリでも内容が面白けりゃそれでいい、そんなの気にするほうが馬鹿だろ――そんな考え方の奴らに自分の作品を楽しんでもらおうだなんて、これっぽっちも思えないし思わない。べつにプロになりたいわけじゃないし、趣味でやっていることだけど、一応素人なりのちっぽけなプライドってもんがある。それは絶対に曲げたくない。地道に努力もしてきたんだから。
 国語の教科書に載ってるみたいな作家と同じように、ちょっとでも自分の手で物語が創れたらかっこいいかも――小学生のころに持ったのは、そんな動機だったけど。飽きないで続けてこられたのは、書く楽しさも苦しさも両方知ったおかげだ。
 ほかの作家とか作品とかから影響を受けた上で自分のオリジナリティを研究するのと、他人の作品をほぼ全部そっくりそのままなぞって自分の作品にするのとじゃ、全然違うのに。真似るにしても限度ってもんがある。
 他人のアイディアを気軽に盗む奴は、きっと一から自分で何かを創り出す苦労も知らないんだろう。急な雨が降った日に、うちの高校の昇降口にある傘立てから、他人の傘を何食わぬ顔で持っていく奴みたいに。
「問題になって炎上しても、向こうは畳みもしねえでずーっと続いてんだし。俺がやってきたことって何だったんだろうなってヤケにもなるっつーの」
「まあな」
「つーか、パクリって言葉が軽すぎるのも原因じゃね? 盗用とか盗作ってハッキリ呼んだほうがよくね?」
「一理ある」
 盗作が我が物顔で世の中に出て絶賛されているのが気持ち悪い。このまま好きな物語を書き続けたところで、俺のやっていることに意味はあるのか。いっそ筆を折ったほうが楽になれるんじゃないか。でも、盗作やそれを支持する奴らになんか負けたくない。
 モヤモヤとした分厚い雲が、もう何日も心に覆いかぶさっている。すぐにスッキリ晴れるような霧とか靄とか、そんな程度じゃなくなっていた。
「どうすりゃいいんだろうなぁ……」
 ぼやいたところで答えは出ないのは、わかりきっている。窓ガラス越しに顔面にも当たる夕焼けの光が、やけにまぶしい。
 友達の真剣な声が、耳に届いた。

「オレもそうだけど、自分がずっと好きで続けてきたことって、そんな簡単にやめたりあきらめたりできないだろ。今すぐに書く気力が戻ってこなくても、焦らないで少しずつ書いていけばいいんじゃないか? リハビリみたいに」

 突っ伏していた顔を、ゆっくりと上げる。ちょっと困ったように笑っている相手と、目が合った。
 ふてくされてむくれていた自分の頬が、だんだんとゆるんでいく。
「……親父と同じこと言うんだな、おまえ」
「少しは気分が軽くなったか」
「ペンが握れるくらいにはな」
 ボールペンで、ネタの続きを書き始める。たった一文字でも十文字でも、進めていけばいつかはまともなかたちになるはずだ。
 盗作なんて見せかけだけのハリボテだ。作り手が一から創った面白さがぎゅっと詰まった『本物』には、絶対に敵わない。
 もし、自分の作品もだれかに盗まれちまったら――そんな不安もなくはない。それでも、ありがちな内容の話しか創れない未熟さだとしても、書きたい気持ちのほうが何倍も強いから。
 ちっぽけな光にでもなれるなら、物語を生み続けよう。世の中の盗作全部が、闇に埋もれて消える日まで。


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