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変わるもの

17/10/21 コンテスト(テーマ):第146回 時空モノガタリ文学賞 【 デート 】 コメント:0件 人間 閲覧数:173

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 私達のデートコースはいつも変わらない。まず、昼過ぎに、遊園地近くの駅で待ち合わせをする。そこから、遊園地で夕方にかけて過ごす。その後に、夕食を食べて解散する。いつもこの流れだ。彼女とは月に1度会える程度の頻度でしか合うことができない。会うことができるのは、決まって月末の火曜日だけだ。
「いつも遊園地で飽きないの?」
と決まって聞いてしまう。
「いつもこの変わらない遊園地がいいの」
 年齢に見合わない大人びた表情を見せながら、彼女はいつもこう答えてくれる。
「次はあれに乗ろうよ」
彼女は無邪気な笑顔を私に向きかけて、手を引っ張りながら急かしてくる。
彼女と過ごす一日は、いつも瞬くまに過ぎ去ってしまう。もう夕暮れに近づきつつある。疲れ果てた私を尻目に彼女は遊び足りないと言った表情がひしひしと伝わってくる。
「そろそろ夕食を食べに行こうか」
なんとかこの遊園地からいち早く出て、身体が休まる場所に行きたい一心だった。しかし男としての面目を守るためにも、できるだけ弱みは見せたくないという気心も少なからずあった。
「仕方ないから、ご飯食べに行こう」
少し残念な表情をみせながら彼女はそういった。
遊園地を出て、10分程度歩いた場所に、いつも行くレストランがある。平日なら予約無しで気楽に入れるお店なので気が楽だ。しかしいつも同じレストランでは飽きられないか不安ではある。しかし彼女は決まってここが良いのだと言ってくれる。
彼女は夕食を食べ終えると、携帯電話を取り出しいつものように連絡をする。この動作がデートの終わりへの合図だ。レストランを出て、駅へと向かう。
「今日はありがとう。また連絡する」
デートの終わりには、それぐらいしか言えることが無くなってしまう。
「うん」
なにか言いたそうな面持ちでそれだけ彼女は答える。
「おーい美雨」
彼女の名前を呼ぶ声が、一台の車から聞こえる。
車に目を向け、すぐこちらを向き直して、笑顔でまたねと残し彼女はその忌々しい車へと走っていった。
 デートはこうしていつも終わってしまう。変わらないデートコースだが、彼女だけは会うたびに変わっている気がしてならない。会う頻度が少ないからだろうか。それとも新しい環境のせいだろうか。そのように変わっていく姿さえ、愛しく思えてしまう。変わらない日々の中で、確実に変わっていく私の愛しの娘よ。


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