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黒江 うさぎさん

はじめ、まして。くろえ、うさぎと、もうし、ます。 なんでも、かきます。 けっこう、ほんとうに、なんでも、かきます。 あと、おしゃべり、にがて、です。 よろしく、おねがい、します。 Twitter→@usagi_kuroe いろんな、ところで、しょうせつ、かいてて、それを、かえんに、てつだって、もらって、ほうこく、しています。 よかったら、みて、ください。 あ、かえんは、わたしの、しんせき?きょうだい?そんな、かんじ、です。 たくさん、たくさん、てつだって、もらって、います。

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「ねぇ貴方、そのお財布だいぶボロボロですけど、買い替えないのですか?」

17/10/19 コンテスト(テーマ):第145回 時空モノガタリ文学賞 【 財布 】 コメント:0件 黒江 うさぎ 閲覧数:144

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 この財布?…ちょっと思い入れのある財布でさ、捨てられないんだよね。
 …うん、確かに僕の趣味じゃ無いよ。
 …あー…えとー…ある女の子と同じ物…違う!その子に未練があるとかじゃないから!包丁を下ろして話を聞いて!お願い!
 …ぜぇ、ぜぇ…いったいどこからこんな力を出してるの?…愛故にか…そっか…。
 …うん、そんなに殺気を出さなくてもちゃんと理由を話すから…あまり面白い話じゃないけどね。
 高校生ぐらいぐらいかな、あの子と出会ったのは。
 その頃の僕は今じゃ考えられないぐらいグレててねー。
 暴走族みたいな事もしたし、ヤクザの事務所にも出入りしてたし、少年院に入ったりもした。
 …あ、そっか、そこは結婚する前に話したっけ。
 で、十回目の出所の後かなー。街を歩いてたら絡まれてさ、路地裏に連れて行かれて、僕一人対相手十人の大乱闘…勝てる訳も無くフルボッコにされたよ。
 …ほら、僕はこうして無事だった訳だから。相手に呪いを掛けなくて大丈夫だよ?…手遅れ?そっか…。
 まぁそれで意識が途切れる直前に「お巡りさんこっちです」って声が聞こえてさ、それを聞いた相手は散り散りに去っていって…それは結局ハッタリだったんだけどね。
 残された僕に「大丈夫ですか」って声を掛けてくれたのがその子だったって訳。
 …そうだね…一言で言えば儚い子だった。
 存在感が無くて、体の色素も薄くて、すれ違ってもすぐに忘れちゃいそうな…そう、透明な女の子だった。
 あととっても怖がりで、ビクビクオドオドしてて、「余計な事をするなっ」て一喝したら泣いちゃった。
 …でも…でも、とっても強い子だった。
 …いや、力が強いとかじゃないよ。超能力者でもない。
 …心が、ね。
 怒鳴り続ける僕の血で汚れる事も厭わず応急処置をしてくれて、救急車を呼んだり出来るぐらい、心の強い子だった。
 で、その子は救急車が来た途端にどっかに行っちゃったんだ。
 その時にその子が落としていった財布が、この財布の色違いって訳。
 勿論拾った財布は勿論警察に届けたよ…多分それが僕が始めてした善行かもね。
 今何してんのかなぁ、あの子。
 …いや、恋しいとかそういうんじゃないから。本当に。だからその掲げた鋸を下ろそう?ほら電話も鳴ってるから。というかどうやって用意したのその鋸…愛故にかぁ…そっかぁ…。
 …ん?僕に?近くの警察署から?何か落としたかなぁ。
 …あ、ヤマさん、お久し振りです。どうかしたんですか?
 …………え?

 …君だったんだね。あの時僕を助けてくれたのは。
 ヤマさん…僕がグレていた時お世話になった刑事さんがね、君が僕を探しているって教えてくれたんだ。
 …まぁ探していたのはヤマさんの知り合いの探偵さんに頼んだ君のお母さんらしいけどね。
 あ、この人は僕のお嫁さん。綺麗でしょ?
 時々暴走する時もあるけど、すっごく僕を愛してくれる、僕がこの世界で一番愛している人だよ。
 それと、見て見て、この財布。あの後探して君とおんなじのを買ったんだー。
 …気持ち悪いかなぁ。
 …でもね、それぐらい…君と同じになりたいって願うぐらい、僕は君に助けられたんだ。
 …あの後、君が呼んでくれた救急車で僕は一命を取り留めた。
 応急処置が無かったり、あと少しでも搬送が遅れていたら…僕は死んでるか、一生ベッドの上から動けなかったんだって。
 …僕は悪の道から足を洗ったよ。
 …僕はね、この世界の何もかもが嫌いだったんだ。
 僕を否定し拒絶する、この世界が。
 …そんな僕を、君は必死になって助けてくれた。
 どんなに汚れても、どんなに罵倒しても…君は僕を助けてくれたんだよ。
 そのおかげで、気付いたんだ。
 ああ、僕はまだ、この世界にいても良いんだって。
 …僕を真っ当な道に戻してくれたのは、君のおかげだよ。
 ありがとう。
 こんな僕を、助けてくれて。
 …こんな僕を、救ってくれて。
 …生きている内に、君に言いたかったなぁ。

 …うん、まさかだいぶ前にあの子が亡くなってるなんて、夢にも思わなかった。
 …え?ああ。
 ヤマさんが言うには、出来るならあの時救急車を呼んだあの人がどうなっているのか調べて欲しいって遺言があの子の財布の中に入ってたんだって。
 …あ、本当だ。また財布だね。
 …え?買い物ってどこに?…美味しい物を買いに?なんでまた?
 …うん、確かにこの財布は捨てられない。多分壊れても修理して使うだろうね。
 …そっか…そうだね。
 この財布に、僕達の幸せを沢山、たっくさん詰めていこう。
 もしかしたらその幸せが、この財布を通じてあの子に届くかもしれないからね。
 …あれ?今何か言った?…言ってない?そっか…。
 ううん、今「ありがとう」って聞こえた様な気がして…気のせいかなぁ…。


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