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ばあちゃんの秘密のがま口

17/10/18 コンテスト(テーマ):第145回 時空モノガタリ文学賞 【 財布 】 コメント:3件 みーすけ 閲覧数:144

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 ばあちゃんのがま口財布には色々なものが詰まっている。切符にえんぴつ、あめちゃんに爪楊枝。
 ばあちゃんは何でもそのがま口にしまい込んでいる。きっとお金もたくさん入っているに違いない。
 ある日、僕はおこづかいをくすねようと、こっそりばあちゃんの部屋に忍び込んだ。ばあちゃんががま口を隠している場所はわかっている。
 僕ががま口を開けると、そこに妙なものが入っていた。もぞもぞと動くそれは、生きていた。
 目を凝らしてみると、小さな小さなツノが生えている。それは小さな鬼だった。鬼は甲高い声でこう言った。
「オイお前! 俺をここから出してくれよ!」
 僕は躊躇しながらたずねた。
「出してやったら、何をくれる?」
「何だって好きなものをやるともさ!」
「じゃあ、お金をくれるかい。僕おこづかいが欲しい」
「いいともさ! 数え切れないほどの金をやろう」
 それで、僕はその小鬼をがま口の中からつまみだしてやった。がま口から出た鬼はむくむくと大きくなり、その代わりに――。
 気づくと僕は、暗い部屋の中にいた。
 そこががま口の中だとわかったのは、上を見上げたら留め金の部分が見えたからだ。そこから鬼がこちらをのぞき込んでいた。
「わっはっは、ありがとうな、坊主」
 鬼の声は、ドスの利いた低い声に変わっていた。
「ま、待ってよ! ここから出してよ」
「そいつはできない相談だなあ。約束通り、金はやったろ。その中にたんまりと入っている」
 そう言うと、鬼はがま口の留め金をパチンと閉じた。
 僕は真っ暗な中に取り残された。

 どれくらい経ったろう? 僕はうずくまって泣いていた。お金があったって、こんなところじゃ何の役にも立たない。外へ出ようともがいても、中からではこのがま口はとても開けられそうになかった。
 そのとき、誰かの声がした。僕は耳を澄ませた。……ばあちゃんだ。僕は声の限りに叫んだ。

「ばあちゃーん!」

「おや? 良太の声がするねえ。はて、どこじゃろう」
「ばあちゃん! ここだよ、がま口の中!」
 するとすぐにがま口が開いた。そしてばあちゃんの丸い目がのぞき込んできた。
「あれまあ! 良太、そこで何しとる」
「鬼にだまされたんだ。ここを出してよ!」
「よしよし、ちょっと待っといで」
 ばあちゃんはそう言うと、がま口をひっくり返した。
 僕はがま口の中のものといっしょに、がちゃがちゃと外へ飛び出した。


 ぱっと目を開けると、僕は元の大きさに戻っていた。
「どうしたんじゃ、良太」
 泣いている僕を見て、ばあちゃんが驚いた顔をした。
「ばあちゃん、ごめん!」
 僕はばあちゃんに謝った。
「怖い夢を見たんじゃな。もう大丈夫」
「ごめん、僕おこづかい盗ろうとした」
「そうかい。気にせんでええ、これは元からぜーんぶ良太にやるつもりじゃ。良太が大学に上がったら、やろうと思っとった。でも、無駄遣いせんなら、今でもええよ」
 僕は恥ずかしくて死にそうになった。こんなばあちゃんの、お金を盗むだなんて。
「全部なんて、だめだよ。ばあちゃんだって使いたいでしょ」
「これはな、ばあちゃんの楽しみなんじゃ」
「これって?」

「良太の為に何かすること」

「ばあちゃん……」
「だから、気にしなさんな。もう、泣かんでもよろしい」
 ばあちゃんはぴしゃり、と言った。僕は、はっと思い出した。
「ばあちゃん、僕、大変なことしちゃった。鬼を逃がしちゃったんだ」
「鬼?」
「がま口に小さな鬼が入っていたんだ」
「鬼とな」
 するとばあちゃんは、にこっと笑って、
「ああ、その鬼ならさっき捕まえたわい」
「ええ?」
「捕まえて、がまに閉じこめてある」
「本当に? 見せて」
 僕がのぞき込もうとすると、ばあちゃんはがま口の中に手を突っ込んだ。
「鬼はここじゃ」
 そのぎゅっと握った手をよく見ようと顔を近づけた途端――。
「あっ!」
 ばあちゃんは、何かを口へ放り込む仕草をすると、もぐもぐと口を動かし始めた。
 あっけにとられている僕をよそに、ごくん、と喉を鳴らしてばあちゃんは言った。

「ほーら、鬼はばあちゃが食うてしもうた」

 上京するとき、僕はばあちゃんからお金を貰い受けた。
 社会人になってからも、実家に帰る度にばあちゃんからこづかいを貰う僕を、両親はとがめた。
 けれどその代わり、僕が始めたことがある。実家へ帰るとき、ばあちゃんにおみやげを買っていくことだ。
 そして、ばあちゃんのおみやげを何にするか考える、そのとき気づいた。
 ああ、これがばあちゃんの楽しみだったんだ、って。

 ばあちゃんは今でも、僕が帰ると顔をくしゃくしゃにして迎えてくれる。そのばあちゃんの嬉しそうな声を聞くと、我が家に帰ってきたんだな、と心から思えるのだ。

「おう良太、よう帰った。まあ座り」


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このストーリーに関するコメント

17/10/18 土佐 千里

感動して涙がでました。。とてもよい話。僕とばあちゃんのやりとり、そして僕が成長していく姿にじーんとしました。

17/10/19 みーすけ

土佐 千里さま
コメントありがとうございます!
涙がでたなんて……、本当に嬉しい限りです。
僕(良太)は初めダメなやつだったけど、大人になって人の気持ちがわかる人間になれたようです。
きっと、ばあちゃんが、良太の心の中の鬼まで食べてしまったんだと思います。

17/11/03 待井小雨

拝読させていただきました。
ばあちゃんと「僕」のやり取りに心が温まりました。
鬼を食べてしまうくだりはまるで昔話のようでした。
「僕」が怖がる鬼を食べてくれる素敵なばあちゃんだなと思いました。

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