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与井杏汰さん

突然思い立って短編小説を書いてみたくなりました。このサイトを知って、うれしく思います。

性別 男性
将来の夢 そこそこの健康と、そこそこの自由。
座右の銘 病は気から。

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2070年のドライブデート

17/10/15 コンテスト(テーマ):第146回 時空モノガタリ文学賞 【 デート 】 コメント:0件 与井杏汰 閲覧数:165

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静かな山道をスマートビークルは快調に走っていた。
右側座席にタケシ、左側にはナオミが座っていた。
 「ねぇ、知ってた? 50年前はね、僕の席が運転席で君の席は助手席って呼んだらしいよ」
 「おじいちゃんに聞いたことある。人がビークルを運転してたんでしょ?」
 「そう。助手席ってことは運転を手伝ってたのかな?」
 「ビークル運転するのに2人って大変ね」
ナオミは笑った。この2070年では、車は全て自動運転。当然その方が事故も少なく楽だからだ。さらには移動ルートの最適化と相互協調で、渋滞は激減し信号停止も最低限に抑えられた。
 「人が運転してたから、時々事故も起きたらしいよ」
 「みんな怖くなかったのかしら」
 「他に手段が無かったから仕方ないよね」
 「嫌だそんなの。おばあちゃんは良くおじいちゃんの運転でドライブできたわね」
 「きっと運転がうまい男はもてたんだろうな」
タケシはそう言うと外を眺めた。今の時代は、走行中に座席で眠ることも、ガラスを遮蔽して真っ暗にした車内で360度スクリーンの映画を見ることも、タケシは経験ないが、女の子と裸でいちゃつくこともできた。
 「ところで今日の食事だけどさ、地元産のセミの幼虫を加工したお肉に、樹木から採取したミネラル入りの特性ソースだって。久しぶりの自然食だね」
 「すごいじゃない。最近は分子再形成アミノソースと培養タンパク質のハンバーグとか、人口食材が多かったから嬉しいわ」
 「もう1つ自慢していい? このお店、マーグル・サジェストじゃなくて僕が調べて見つけたんだ」
マーグル・サジェストとは人口知能で、どんな質問にも的確に回答してくれる。実はこの会話をしているタケシのフロントガラスには、マーグル・サジェストから最適な会話の候補が次々と表示されていた。鋭角ディスプレイなのでナオミの席からは何も見えない。会話下手な男子向け機能の1つだ。

その時、突然閃光が走ったかと思うと、車両が静かなアラーム音を出して自動停止した。
 「え? 何が起こったの?」
ナオミが尋ねると、タケシは黙ってしまった。
 「ねぇ、どうなってるの?」
もう一度ナオミが聞いた。
 「わ、わかんない。今の光、もしかして電磁パルスショックかな?」
タケシは先ほどまでと違い、オロオロしていた。
 「近くで発電装置のトラブルか、飛行機事故でもあったかな?」
タケシが言った。この時代は、高密度エネルギーの保存装置や自然エネルギー変換装置が至る所に存在し、一旦事故が発生すると、ひどい場合は周囲の電子装置を制御不能にしてしまう。
 「あ、僕のスマートシートも使えなくなってる。何も表示されない!」
タケシはポケットに畳んでいた薄いシートを広げて慌てた。
 「きっとすぐになおるよ」
ナオミはそう言うと、
 「ねぇ、少し外歩いてみない?」
と提案した。
 「何言ってるの!この辺は野生の鹿がいるってよ」
 「大丈夫。熊じゃないなら命は狙わないでしょ?」
ナオミは笑って、ドア解放バーを開けた。
 「やめてくれよ、まさかレストランまで歩くんじゃないよね?」
タケシは青くなって聞いた。何を隠そう彼は歩くのが苦手で、体育の100m歩ではいつも息が上がっていた。
 「まるで冒険みたいね!」
ナオミは笑顔で言った。

外に他の車は見当たらなかった。
 「山の空気って気持ちいい!」
ナオミは嬉しそうに歩き出した。タケシはマーグル・サジェストがない事から、あまり口をきかなくなっていた。
 「タケシ君ってバーチャルペット飼ったことある?」
 「あるよ、ネズミだけど」
タケシは小さい声で答えた。
 「そうなの。私は小鹿を買ったことあるわ。ここで野生の小鹿に会えたらいいのに」
ナオミは生き生きとしていた。
 「やっぱり、助けが来るまでビークルで待とうよ」
タケシが言った。
 「僕、もう嫌だ。疲れたよ」
泣きそうになっていた。 
 「ねぇ、昔の人は、いつ事故に遭遇するかもわからないのに自分で車を運転したし、時々長い距離を歩いて移動したのよ。タケシ君だってできるわ」
ナオミが言うと、
 「君は本当にすごいね。何があっても怖くないんだ。お願いだから、ずっと僕のそばにいてくれないか?」
タケシは、ナオミの顔を見てそう言った。
 「ありがとう。レストラン、どっちかな?」
少し照れたナオミは、タケシの手を引いて歩き出した。
その時、ナオミの腰の辺りに隠したスマートシートにメッセージが届いた事は、タケシの知る由もない。
 『この度は恋愛成就プラン・ハプニングコースのご利用ありがとうございます。恋愛成就した模様ですので、代金を請求させていただきます。またのご利用お待ちしております』


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