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鞍多奥夜さん

他サイトで長編ファンタジー小説を書いています。ここでは、恋愛関連の掌編を投稿していきたいと思っています。

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夕暮れの膝枕

17/10/15 コンテスト(テーマ):第146回 時空モノガタリ文学賞 【 デート 】 コメント:0件 鞍多奥夜 閲覧数:143

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 日が傾き空が茜色に染まる頃。
 ある遊園地の一角、大人が三人以上楽に座れる長椅子を、二人で占有している若い男女がいた。少女は椅子の端に腰掛けている。少年は椅子の上に横になり、頭を少女の膝に乗せている。俗に言う、膝枕というものだ。
 少女の手がやさしく少年の頭を撫でる。その少女は少年を見つめ笑顔を浮かべている。
 ふいに少年が目を開ける。突然の出来事に、少女はそのままの姿勢、そのままの表情で固まってしまう。至近距離で見つめ合う二人。
 今どういう状況なんだろうかと、覚醒したばかりで、はっきりしない頭で少年は考える。どうやら膝枕をされているらしいと、頭の後ろで感じるほのかな暖かさと心地よい柔らかさ、少女を見上げているという状況から、少年は察する。
 少年がそこまで思い当たったところで、少女は顔を真っ赤にし、少年から顔を背ける。少年も軽く顔を赤くし、慌てたように上体を起こし、少女と反対の端に腰掛ける。
 気まずくはあるのだが、決して悪いとは言えない二人の間の空気。二人ともしばらく何も言葉を発しない。

「なぁ」
「あのね」
 沈黙に耐えかね少年は声をかける。少女もそうだったのか、運悪く同時に声を発してしまう。

「……そっちからどうぞ」
「……いや、そっちこそ」
 互いに譲り合う二人。しばしまた沈黙が流れる。

「ありがとな。気を失った俺を介抱してくれてたんだろ」
 埒が明かないと少年は考え、先ほどから言いたかったことを伝える。
「それと、ごめんな。せっかく遊びにきたのに、こんなことになって」
「いや、悪いのは姉さんだし。それに……」
 少女はそう返す。その言葉は尻すぼみになり、少年には後半が全然聞こえなかった。
「確かにそうだな」
 気を失う直前のことを思い出し、少年は同意を返す。
 少年は自身の過失により気を失った訳ではない。共に遊びに来ていた友人と少女の姉の軽い諍い――端から見ると痴話喧嘩にしか見えないじゃれあい――に巻き込まれた結果であった。少年が二人の仲裁に入った瞬間、運悪く少女の姉の鞄が、少年を直撃したのである。
「でも本当にごめんな。もう結構な時間に。あいつらみたいに俺のことは放って――」
 少年はそこで唐突に言葉を切る。おとなしくも優しいこの少女がそんなことをするはずがないということに思い当たったからだ。おそらくあの二人がいないのも、少女が面倒を見ると言いだした結果なのだろうとも思った。
「気にしなくていい。……さっきまで十分楽しかったし」
 好きなのかと少年は得心する。
「そうか、好きなのか」
 少年は思ったことをそのまま口にする。その言葉により、少女は顔だけでなく耳まで真っ赤にする。少しの時間を経て、少女は少年の言葉に同意するように、小さくこくりと頷く。
 その様子を見た少年は立ち上がり少女の前に行き、手を差し出す。
「見てるだけで楽しいほど、そんなにこの遊園地が好きなのか。それならはやく色々見て回ろうか」 
「え……あ……違っーー」
「だとすると、あいつらに連絡とって合流するのは時間がもったいないか。二人っきりでいいかな」
「……違くないです」
 少女は少年の手をとり、立ち上がる。
 その後の二人の時間は、少年には楽しく、少女には幸せなものになった。時折顔を赤くし、普段よりさらに言葉少なくなる少女に少年が困惑することも多々あったが。


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