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W・アーム・スープレックスさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘 作者はつねにぶっきらぼう

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デートの相手

17/10/14 コンテスト(テーマ):第146回 時空モノガタリ文学賞 【 デート 】 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:127

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 ルームシェアの相手カナコが、部屋に入ってきた遊佐を、暗い顔で迎えた。
 遊佐はもちまえの勘の鋭さを発揮して、
「なにかあったのかしら」
「ゆさ、悪いとは思ったけど、胡桃丘さんのこと、あたし調べてみたの」
 遊佐は一瞬、眉をひそめた。がすぐ平静をよそおって、
「どうして調べたの」
 その問いかけに二種類の意味をくみとったカナコは、まずひとつめから切りだした。
「大学のときの先輩がいま、保険の代理店をひらいているの。仕事柄人物調査はお手のもので、まして胡桃丘なんて名前めずらしいから、調べるのはわけなかったそうよ。―――あたしあなたのこと心配なの。あなたって無垢で、心底お人よしなところがあるでしょう。あなたがこんど、しりあった彼氏とデートするってきいて、その彼がどんな素性の男性なのか、確かめたかったの。余計なお世話と叱られるのは承知のうえよ。あなたのこと、本当に他人とはおもえないんだから」
 二人がいっしょすむようになってまだ半年しかたっていなかったが、年上ということもあってかカナコは、まるで実の妹のように遊佐のことを気遣い、なにかと面倒をみるようになっていた。知り合いの保険代理店を使って彼のことを調査したのも、いまの彼女の言葉どおりで、決して他意はなかった。
「それで、なにがわかったというの」
「それがね、おどろかないでよ………胡桃丘さん、これまでに何人もの女性との交際歴があるの」
 遊佐が口をあけてわらいだそうとするのを、手で制してからカナコは、
「そのことじゃないの、あなたからさんざん、彼がどんな素敵な男性かきかされてるから、これまでつきあった女性がいないというほうがむしろおかしいわね。あたしのいいたいのはそんなことじゃないの。彼とつきあった女性たち、わかっているだけで3人いるんだけど、その3人すべてが、あのねよくきいてよ、亡くなってるの。嘘じゃないわ、これは確実な情報よ。ひとりは事故で、もうひとりは病気で、さいごは自殺。最悪じゃないの」
 遊佐はそれをきいても、表情をかえなかった。
「なにも彼が殺したわけじゃないでしょう」
「それでも、ゆさ、そんな彼と、つきあえるの」
「わたしは、平気だわ」
 やっぱりという、なかばあきらめの表情がカナコの顔にあらわれた。しかし自分を鼓舞するように顔をひきしめてルームメイトをみかえした。
「わるいことはいわないわ。彼とはつきあわないほうがいい。どうみてもなにか怨念めいているじゃないの」
「あなたには彼のことがわからないのよ。彼ってとてもナイーブな性格のもちぬしなのよ。そんな過去があるのならきっと、いわれのない自責の念にさいなまれていることにちがいないわ。そういえばときどき、ふいに沈みこむことがあって、わたしがいくらきいてもなにもいわないことがある。そんな彼をわたし、とてもほっておくなんてできない」
 こういう成り行きになることは、話す前からカナコにはわかっていた。彼女がいかにいちずな女性かは、普段から気がついていた。胡桃丘の数奇な過去をしればしるほど、おそらくいっそう彼への思いをふかめたのではないだろうか。いうべきことは、すべていった。
「ごめんなさい。あなたのいうとおりよ。かんじんなのはいまで、過去じゃないわ。ゆさ、もうなにもいわない。こんどのデート、たのしんできてね」

 三日後の土曜日、彼と会いに、おめかししてでかけてゆく遊佐を、カナコは手をふって見送った。
 ドアを閉めると、「だいじょうぶよね」と、この三日間、なんどもじぶんにいいきかせてきたセリフを、いままたくりかえした。
 例の知人の代理店から電話がかかってきたのは、彼女が居間にもどったときだった。
「先日の件に関することなんだけど、きみからきいた話にちょっと興味がわいてね、同居の彼女のこともしらべてみたんだ」
「ゆさのことを。職権乱用よ。ま、あたしも頼んだから同罪か」
 軽口をたたいたつもりのカナコの耳に、電話の向こうから、なにやら重々し気な吐息が伝わってきた。
「ちょっとばかし、事態は深刻だよ………」
「なんのことなの」
「それがね、彼女これまでに、何人もの男性とつきあってたんだ」
「へえ、そうなの」
 あんがいあのこもやるわねと、おもわず目をまるめた彼女だったが、ついこのあいだ、いまと似たような体験をしたことをおもいだした。
「調べのついた4人の男性は、そのことごとくが命を失っているんだ。病気で、交通事故で、入水自殺、そして他殺ときた―――もしもし、聞いてるかい、もしもし」
 カナコははっきりきいていた。ただ、口をひらきはしても、どうにも喉から声がでてこなかった。


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