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ちりょう なひろさん

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好きって言ってッ

17/10/12 コンテスト(テーマ):第146回 時空モノガタリ文学賞 【 デート 】 コメント:0件 ちりょう なひろ 閲覧数:194

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 木ノ下くんと付き合って早一年が過ぎてこれまでなにほどでもないくらい平穏にしてきたけど私は限界で、だって木ノ下くんが一度も私に好きだと言ってくれないから私、不安。結構、数抱かれてるからもしかしてセフレかしらんと疑うくらいに超・不安。私は会うたびに好きって言うのに木ノ下の野郎は俺もだよ、で片付ける。というか最近なんか、またそれかよって感じで無視かましてきやがって、それで、もうピークッ。
 今日こそは、今日こそは言ってもらう。
 好きだよ、と。


「ごめん木ノ下くん、ごめん待ったよね」「大丈夫、一時間と四十八分しか待ってないから」「え、あの、ほんとごめん」「映画見る予定だったけど、もう本編どうこう以前に、エンディングも終盤に差し掛かってる頃だよね。とりあえずそこらへん適当に散歩でもする?」「怒ってる?怒ってるよね?」「怒ってないよ」「えっ、でも、なんか」「怒ってないって」「絶対怒ってるよね?」「キレてんだよ」「えっ――――、好きだよ」「・・・・・・」
 もう、ほらやっぱり無視する。私が好きって言ってるのに、スタコラ歩いていっちゃう。悲しいよ、私。
 歩いていたら、なんだか悲しみが増幅して、あれ?泣いちゃう。 やばいやばい。私は立ち止まり、顔を手で覆い、とりあえず込み上げてくる涙を止めるために眼球を指で強く押してみた。
 私が隣を歩いていないことに木ノ下くんが気付いて数歩先で振り返る。
「遅れてきたくせになに泣いてんの? 大丈夫?」「ウッ、グフッ。ごめんね。涙が勝手に出てきちゃって」「病気かな?」
 木ノ下くんはこんな私にハンカチを手渡してくれる。ごめんね、私ハンカチとか普段から持ち合わせないタイプだから、ちゃんと私の女子力を木ノ下くんは把握してくれている。ほんと、ごめん。
「早く泣き止めよ。夕飯まで遅らせる気かよ」「私、一発で泣き止めるよ」「えっ?じゃあ早くして、予約してんだから」「木ノ下くんが好きって言ってくれたら私、泣き止めるよ」「どんだけ俺に迷惑掛けたいの?」「やっぱり、やっぱり私はセフレだったんだッ」「どんだけ俺に迷惑掛けたいの?」「好きって言ってよッ。それが否定になるんだよ。ちゃんと私、愛されてるって確証が欲しいのッ」
 カッコウカッコウって赤信号が青に変わった音と、ガヤガヤとした街の喧騒に、おっさんの咳き込む音まで聞こえてくるのに、好きって言葉だけが一向に聞こえてはこなくて、たった一言でいいのに、たった一言で全てが治まるのに。木ノ下くん、ほんとマジ早くして。
「俺の行動が全てを物語ってると思うんだけど」
 はっ?なにそれ。あだち充はいいから。今、あだち充は関係ないから。
「でも私、不安だよ。一度もだよ。付き合い始めてから一度も好きって言われたことないッ」
 言った。言ってやった。私は勇気を振り絞った。一時間と四十八分遅刻しておいてノコノコと待ち合わせ場所に来るぐらいの勇気を。いやさらに一時間と四十八分遅刻しておいて泣き出し、まだ好きって言われたことないとか街中で騒ぎむせ込むほどに七面倒臭いイタイ女になる勇気を振り絞ったのだ。
 たぶん嫌いとか今言われたら軽く死ねる自信がある。
 木ノ下くんは意外にもちょっと笑っていた。
「あっ、ホントそれ?あれー、言ってなかったか。ごめんごめん、好きだよ」
 やったッ。やった遂に好きって言ってもらえたッ。木ノ下くん好きって言ってなかったの気付いてなかっただけなんだッ。ちゃんと私のこと好きなんだッ――でも、プロポーズもそんな軽い感じでしてきたら。
 マジ張っ倒すぞ、お前。


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