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ちりぬるをさん

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性別 男性
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#連続殺人事件を解決したわず

17/10/11 コンテスト(テーマ):第116回 【 自由投稿スペー ス】 コメント:0件 ちりぬるを 閲覧数:128

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 朝早く関係者全員が広間に集められ、いよいよ名探偵による謎解きが始まった。
「今回の事件の鍵となるのはやはりこの密室でした」
 名探偵が手を後ろに組んでうろうろと歩きながら淡々と推理を述べていく。その様子を動画で撮影しながら私はにやけそうになるのを必死に堪えていた。名探偵は「今回の」と言った。一人目と二人目は密室内で刺殺され、三人目は全員にアリバイがある中殺されるという連続殺人だった。彼はこんな連続殺人事件に何度も遭遇しているのだろうが一般人からすれば一生に一度あるかないかの出来事だ。さぞ『いいね』が沢山貰えるだろう。私は犯人ではないし、知り合いが殺されたわけでもない。不謹慎だとは思ったがこの機会を逃す手はなかった。
「そう、つまり犯人はあなたです!」
 はい、出ました決め台詞。撮影に夢中で名探偵の推理を聞き流していた私はそこでようやく彼が私を指差していることに気が付いた。
「え? いやいや、それはないって」
 私は焦って首をブンブンと振り、撮影を中断する。「なんで私?」
「あなた聞いてなかったの?」
 私が密かにマダムと呼んでいる米谷さんの呆れたような声に私は恐る恐る頷く。
「要するに、屋敷の地下に閉じ込められて誰も外に出られなかったはずなのに君がインスタに投稿した自撮りで履いていた靴に泥がついていたのを僕が見つけたんだ。それが証拠さ」
 横からしゃしゃり出た秋元という男がドヤ顔で言う。前からこいつのことは嫌いだったが、たった今大嫌いに昇格した。
「それは……」
「ちなみに我々が閉じ込められる前は数日間雨なんて降ってなかった。入る前に付いたなんていう言い訳は効かないぜ?」
「それはカレーです」
 ニタニタしながら私に近付く秋元を無視して私は名探偵に言った。問題の画像を拡大して見せる。
「この日の前日にカレー作ったんですよ、それをこぼして付いちゃったんです」
 名探偵は画像を食い入るように見つめていたが、「他にもある」と言って咳払いをした。「昨晩起きた第三の殺人の……」
「あっちょっと待って下さい」
 私は名探偵を止め、自撮り棒を伸ばした。名探偵の私が向かい合って写るようにシャッターを押す。すぐさまインスタに『♯名探偵に犯人として追い詰められてるなう』とタグ付けして投稿する。「どうぞ、続けて下さい」と私が促すと名探偵は苦笑いをしながら咳払いをした。
「昨晩起きた第三の殺人のあと、君が投稿した写真の中に凶器と思われるものが写っているのを生駒さんが見つけた」
 これだ、と生駒が大きなお尻のポケットから携帯を取り出し画像を見せる。昨日の事件は全員が目撃者となった前の二つの殺人事件とは違い、名探偵以外現場に入ることはおろか見ること、詳細を知ることさえ許されなかった。仕方なく『♯第三の殺人わず』と自分の部屋で自撮りをしたものだった。しかし、この人達はいつのまに私のインスタをフォローしたのだろう?
 生駒が太い指で私の後ろに写っている鉄製の棒のようなものをアップにする。言われるまで気が付かなかったし見覚えもなかった。
「誰かが私に罪をなすり付けるために置いたんじゃないですか?」
「言い逃れのレベルが低いですね」と生駒が鼻で笑う。この瞬間彼のことも大嫌いになった。
「そもそも、凶器をバックに自撮りなんてそんな馬鹿なことすると思いますか?」
 私は両手を広げて訴えたが、誰も賛同してくれなかった。まあ、事件の起きていたこの三日間空気を読まずに写真を撮ってはインスタに投稿しまくっていたのだから自業自得と言われれば返す言葉もないのだけれど。
「もうすぐ警察も到着するそうですし、それまで拘束させてもらいますよ」
 軽く咳払いをして名探偵がロープを持って近づく。
「ちょっと待って下さい、名探偵さん」
「なんですか? 『逮捕されたなう』の写真でも撮るおつもりですか?」
 名探偵のくだらないジョークに皆が笑う。
「これまでのやりとりでちょっと疑問に思うことがあるんですけど、確認してもいいですか?」
「どうぞ、ご自由に」名探偵が嫌味ったらし笑みを浮かべた。
「じゃあまずは秋元さん!」
 私がびしっと彼を指差すと物怖じしたように一歩後ずさった。
「私の靴に泥がついてるって疑ってましたけど、そもそもどうして昨日雨が降ってたことを知ってたんですか?」
「なるほど、確かに外の様子が分からないこの状況でそれを知ってるのは不自然ですね」
 名探偵があごに手を当てながら私に賛同する。名探偵を名乗るくらいならそれくらい真っ先に気付いて欲しいものだが。
「ほら、調べたんだよ。お天気サイトで」
 私が名探偵を不信な目で見ている隙にスマホを操作していた秋元が画面を見せてきた。地域を相当絞り込んで検索できるサイトらしく館の周辺の気象、気温から湿度日の出日の入りに至るまで細かいデータが羅列されていた。
「これでも疑うなら検索履歴でも調べてくれよ」
 不服そうに名探偵にスマホを差し出すが名探偵は「いいや、結構」とそれを拒否した。表向きは秋元を信じている風を装っているが、機械に疎い名探偵には履歴の検索なんて出来ないだけだろうと密かに思った。
 秋元の疑いがあっさりと晴れて再び私に視線が集中する。
「次に、生駒さん。っとその前に素朴な疑問なんですけど、いつの間に皆さん私をフォローしたんですか?」
「まあ……あれだけ写真撮っては『いいね貰えるかなぁ』とかぶつぶつ言ってれば……ねえ」
 なぜか皆バツが悪そうに顔を見合わせ、代表するように言ったマダムも随分と歯切れが悪かった。
「夜皆で集まった時にあなたの話題になったんです。それで酒のつまみに過去の投稿を見ていって、面白半分に皆でフォローしようってなったんですよ」
 名探偵が半笑いで言う。周囲の反応からすると多分空気が読めていないのは名探偵だけで、私はその夜なかなかに笑い者にされたのだろう。
「どうでした、私の投稿?」
 試しにかまをかけるつもりでマダムに聞いてみると、
「面白かった……わよ、私生活が充実してるようで。リア充っていうんでしたっけ?」
「それと承認欲求と自己顕示欲がむき出しで痛々しかったです」
 せっかくマダムが気を使ってくれただろうに、名探偵のせいで見事台無しになった。私が仮に殺人犯だったとしたら次のターゲットは確実に彼だ。
「そんなっことより話続けましょうよ」
 話が逸れ続けているのが嫌なのか、この場の気まずい空気に堪えられないのか、秋元が私を急かす。確かに彼の言う通りだ。和やかに話しているが私は今殺人の疑いをかけられている身だった。
「じゃあ改めて生駒さんに聞きますけど、私の後ろに凶器が写ってるって言いましたよね?」
 生駒が頷く。私は素早くスマホを操作し、問題の写真を表示させる。
「これですよね?」
 私の背後に写る鉄の棒をアップにし、解像度を上げるアプリで鮮明にさせる。皆が一斉にその画像を覗き込んだ。
「棒ですよね?」
「棒ですね」
 名探偵が答えた。
「私知らないんですけど、あの人って殴られて殺されたんですか?」
「ええ、後頭部から出血していました。傷口から察するにこのような棒が凶器で間違いないはずです」
「それ知ってるのって名探偵さん以外に誰がいますか?」
 皆がはっとした面持ちで生駒を見る。
「血痕でも付いてるのかなって思ったけどなんにもないし、生駒さんはどうしてこれが凶器だと思ったんですか?」
「ちなみに僕は誰にも遺体の状況を言ってませんし、現場は施錠していたので誰も入ることは出来ません」
 周囲の視線が注がれる中、しばらく黙っていた生駒が突然奇声をあげて私の肩を掴んだ。間近に迫った生駒の顔は悪魔に取り憑かれたような恐ろしい表情で、その殺意に堪え兼ねて私はぎゅっと目を閉じた。
 一瞬の後、肩から掴まれている感覚がなくなり、床になにかが倒れるような音がした。恐る恐る目を開けると床に大の字になって倒れている生駒とその腕を取って関節技を決める秋元の姿があった。
「お前、いいかげんにしろよ!」
 激昂する秋元を見て、そんなに悪い奴じゃないかもしれないと思い直す。少なくとも「どうやら拘束するべきなのはあなただったようですね」とのんきな口調でロープを用意するこの名探偵よりは。


 三日振りに外の空気を吸い太陽に向けて伸びをする前に、私は屋敷をバックに自撮りをしてすぐさま投稿する。その様子を見ていた名探偵が「懲りないですね」と笑った。
「名探偵とかいって事件解決できたの私のおかげじゃないですか」
 それどころか犯人にされそうになったことを思い出し頬を膨らませると「本当に申し訳ない」と本当に申し訳なさそうに謝った。
 私達に続いて警察に両脇を抱えられながら生駒が護送されて来た。私はすかさず自撮り棒を伸ばし、丸まった生駒の背中とピースサインをしてツーショットを撮る。『♯フォロワーさんへ挑戦状♯真犯人は誰でしょう?』とタグ付けをしたその投稿は不謹慎という理由で削除されてしまった。


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