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クナリさん

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将来の夢 絵本作家
座右の銘 明日の自分がきっとがんばる。

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ゴースト・デート〜太陽フレアの波打ち際まで〜

17/10/09 コンテスト(テーマ):第146回 時空モノガタリ文学賞 【 デート 】 コメント:2件 クナリ 閲覧数:231

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 僕と幼なじみで、同じ高校二年生のカナミが車に轢き逃げされて死んだのは、僕とカナミの家の間にある路地だった。
 車が一台どうにか入れるくらいの幅で、よく車を避けきれない歩行者が轢かれている。
 真冬の冷たい道の上で、カナミは二週間ほどかけて、何度も色んな車に轢かれながらゆっくりと道路になっていった。
 誰も遺体を片付けようとはしなかった。生きているならばともかく、死体を片付けるというのは明らかに非生産的で無駄な行為だからだ。
 冬休みだった僕は、カナミがすっかり道路になるまで、二階の自室の窓から毎日、路地を見下ろしていた。
 冬休み最後の夜、路地を見てみると、そこに半透明のカナミが立っていた。
 僕はコートを羽織って路地に出た。カナミは宙に浮いていた。
「私、死んでしまったのね」
「そうだね」
「明るくなる前に、デートしない?」
「いいとも」
 僕らは並んで歩き出した。カナミは浮遊していたが。
 しかしカナミは、路地から出ようとすると、見えない壁に阻まれてそれ以上進めなかった。
 やむなく、路地を行ったり来たりする。それでもこれはデートだった。
「あれ?」
「どうした?」
 カナミの体が、ゆっくりと後方に流れ出した。
「ほら、私幽霊でしょ。あまり引力とかに囚われないのね。地球って自転と公転があるから、意識してこの場所にしがみつかないと、地球に置いていかれてしまうみたい」
「その場合、宇宙空間にいつくことになるのか?」
「たぶん。そうしたら、次に会えるのは一年後ね。場所も時間ものすごくピンポイントで」
「……もしかしてお盆て、霊の皆が帰ってくるんじゃなくて、地球の方が皆のところに突っ込んで行くのか?」
「今ここにいるだけで、かなり疲れるんだけど」
「できれば、なるべく長くいて欲しい」
「そうね。あなたに報いるためにも」
「僕?」
「私の死体を、すごく片付けたそうにしてた。あなたの泣き顔なんて見たの、小学校以来よ。それでも皆と同じように放置していたのは、私を殺した犯人を見つけるためでしょう?」
 見られていたのかと赤面する。
「君の亡骸をを見て、何らかの反応をする奴を探していた。無関係の車は、ただ君の上を通り過ぎるだけだからね」
「学校が始まってもそうするつもり?」
「……君は喜ばないかもしれないが」
 そう言って振り向くと、カナミは電信柱に掴まっていた。それも、鯉のぼりのように真横になって。
「ちょっと油断したわ」
「戻ってこい! で、何か車の特徴を覚えていないのか?」
「あ、危ないわよ」
 カナミの指した方を見ると、路地に車が入ってきていた。ライトの向こうに、大振りな車体が見える。
「あッあのナンバー。間違いない、あの車よ。ドライバーも同じ人ね」
 正直、本当に現れると確信してはいなかった。人を轢いたのは分かったはずだ。それでもノコノコやって来るとは。
 次の瞬間には、僕はベルトに仕込んだナイフを引き抜いていた。
「ちょっと」
「何も全く一切配慮しないで殺す」
 車が突っ込んできた。暗いせいで僕が見えていないのか。カナミがそうだったように。胸の奥で怒りが燃え上がった。
 僕は電柱の影に隠れた。この電柱は向こうから見て右手にある。右ハンドルのようだから、この脇を通り過ぎる瞬間、窓からナイフを叩き込んでやる。窓が閉まっていてもやれる。
 しかし、車は急ブレーキを踏んだ。僕からの距離はまだある。なぜ。
 見ると、カナミが、凄絶な形相で路地の真ん中に浮いていた。ドライバーは、彼女を見たのだ。慌ててバックを始める。
「ね、あいつもう行くわ。二度とここには来ないでしょう。だからもう」
「ごめん」
 僕は駆け出した。
 加速前の車にすぐに追いつく。
 底部にガラス切りを仕込んだナイフの柄で、フロントガラスを砕いた。
 そして、顔をひきつらせたドライバーの胸に、ナイフの刃を深々と突き刺した。
 車はバックを続ける。
 やがて路地から抜けた。左右には国道が、闇の奥へ延びている。
 カナミが追いすがってきて、路地の出口で見えない壁にせき止められながら叫ぶ声が聞こえた。
「どうしてそんなこと!」
「どうしてって!? なら、君はどうして死んだんだ!」
 右から、トラックらしい車のヘッドライトが猛スピードで迫ってくるのを感じた。
 一瞬後には、この車の横腹に突っ込んできた。
 僕は道路に投げ出される。
 頭から着地し、頭蓋骨が砕け、露出した脳がアスファルトにすり削られた。
 カナミが路地から、僕を見て叫んでいるのが見える。

 宇宙空間のデートは、どんな風だろう。
 人類を脅かすという太陽フレアも、砂浜のさざ波のように見つめて、僕らは並んで歩くだろう。

 誤りだらけの最期に、
 それでも僕は自分の望みが全て満たされることに感謝して、
 死んだ。


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このストーリーに関するコメント

17/11/06 霜月秋介

クナリ様、拝読しました。
序盤から刺激的なお話でしたね。
「あ、お盆ってそういう仕組みだったのか」と納得している自分がいました(笑)
デートというテーマからこういう話が出来ることに感服しました。面白かったです。

17/11/18 クナリ

霜月秋介さん>
普通のデートで、ちゃんと話が構成できればいいんですが、どうも世の中によくあるものが題材だと、ツカミに力を入れてしまう悪癖があります(^^;)。
「人生最後のデート」とか「死んでからするデート」とかでインパクトを出したいなあ…という欲望がこうさせたのでしょう。。。

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