1. トップページ
  2. クリスマスの教え

とおやさん

南の島に住んでおります。

性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

クリスマスの教え

12/12/09 コンテスト(テーマ):第十九回 時空モノガタリ文学賞【 クリスマス 】 コメント:0件 とおや 閲覧数:1454

この作品を評価する

「良い子にしていたら、サンタさんがプレゼントをくれるんだよ」
 その教えをずっと信じていたんだ。

   *   *   *

「サンタさん。今年のクリスマスプレゼントはいりません。その代わり、来年は多くの美女に囲まれてイヴを過ごしたいです」
 昨年のクリスマス、私は何も望まない代わりに、その翌年に願いを込めた。
そして、その願いを叶えるために、一年間誠実に生きてきたんだ。

   *   *   *

 12月に入ると、街はクリスマスカラーに染まる。
大きなツリーが飾られ、綺麗な装飾や、美しい電飾で彩られた街を、私は遠い景色を眺めるようにして見ていた。
 そう、未だにクリスマスの予定が入らない。
 毎日毎日、残業の日々。
 今年のクリスマスも職場で過ごすことになりそうだ。
 そう考えながら、今日も残業をしていると、上司が声を掛けてきた。
「とおや君。12月24日はあいているかね?」
「係長。クリスマス・イヴの予定を聞くなんて野暮ですよ」
「そうかすまない。で、予定はあるの?」
「今のところ…ありません」
「それは良かった。12月24日に本社の課長が来られる…。わかるな?」
「え?」
「早速、手配に取りかかれ」
「ちょっと待って下さい。24日は世界の子供達が僕を待って…」
「これは命令だ」

 なんて事だ。まさか12月24日に接待とは。
これがサンタからのプレゼントなんて、悲しすぎる。
今から場所を決めて、人を集めて………ん?

 人を集める=美女を集める

 もしや、これはこのチャンスで多くの美女を集めろという神の思し召し?
サンタめ、なかなか粋な計らいをしてくれるじゃないか。
「接待」という大儀名分を使って、早速女性に声を掛けなければ。

「吉田さん。12月24日はあいてる?」
「ごめんなさい。その日はパーティーなの」

「瀬川さん。12月24日はあいてる?」
「ごめんなさい。その日は合コンなの」

「藤野さん。12月24日はあいてる?」
「ごめんなさい。その日は彼氏とデートなの」

 なんて事だ。まさか誰一人あいてないとは。
それどころか、断られる度に俺の心に傷が!!
仕方ない、男にも声をかけてみるか。

「根本さん。12月24日はあいてる?」
「いや。彼女と約束があるな」

「八木さん。12月24日はあいてる?」
「いいえ。その日は用事がある事になってます」

「本山さん。12月24日はあいてる?」
「あいてるけど」
「実はその日に、接待があるのですが…」
「うん………頑張れ」

 なんて冷たい連中だ。
俺一人でどうしろっていうんだ。
そもそもこの時期に支店に視察なんて、嫌がらせか?
人間は上に立たないと、他人に人生を狂わされてしまうということか。

   *   *   *

 別係の人や仕事の関係者にも声をかけ、男性だけだがなんとか人を集める事ができた。

「係長。24日の件ですが、6時より南国居酒屋酔イドレ天国を予約しました」
「ご苦労さん・・・実は言いにくいのだが」
「はい、何でしょう?」
「私もちょっと所用があってな。すまんが、欠席する」
「は?」
「すまんすまん。ちょっとこれが会いたいといって聞かなくてな」
 そう言って係長は、嬉しそうに小指を突き立てた。

「へぇ………」
「ん?どうした?」
「いえ、何でもありません。では、その日は仕事ということにしておきますね」
「うむ。なにか聞かれても、うまく言っておいてくれ」
 こうして、今年のクリスマス・イブは、多くの中年男性に囲まれて過ごす事が決まった。

 よい子になれるのは、幼かったあの時だけ。
怒りを抑えきれない私は、とてもよい子になれそうにない。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン