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黒江 うさぎさん

はじめ、まして。くろえ、うさぎと、もうし、ます。 なんでも、かきます。 けっこう、ほんとうに、なんでも、かきます。 あと、おしゃべり、にがて、です。 よろしく、おねがい、します。 Twitter→@usagi_kuroe いろんな、ところで、しょうせつ、かいてて、それを、かえんに、てつだって、もらって、ほうこく、しています。 よかったら、みて、ください。 あ、かえんは、わたしの、しんせき?きょうだい?そんな、かんじ、です。 たくさん、たくさん、てつだって、もらって、います。

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For whom is death?

17/10/09 コンテスト(テーマ):第144回 時空モノガタリ文学賞 【 事件 】 コメント:0件 黒江 うさぎ 閲覧数:80

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 町から離れた山道。
 ツタの絡んだガードレール。
 その根本に、花束を添える。
 あの子が好きだった、アザレアの花。
「…あいつが好きだった花か」
「…うん」
「じゃあ被ってねぇな」
 隣に立っていたあいつはフゥーと煙草の煙を吐き、ビニール袋を花束の側に置く。
 中身は、多分マカロン。
 あの子が一番好きだったお菓子。
 私は膝を折り、手を合わせ、目を瞑る。
 去年は来れなくてごめんね。
 でも、今年は来たよ。
 …ちゃんと、来れたよ。
「…アンタは手を合わせないの?」
「…神なんていねぇよ」
「アンタは神じゃなくて仏でしょ仏教徒」
「ま、どっちも信じちゃいねぇけど」
「うわぁ」
 くくくと笑うあいつと、ふふと笑う私。
 あいつは煙草の煙を吐いて、私は手を合わせ続ける。
「…うし、帰るぞ」
「まだ帰らないよ」
「いや、帰るぞって」
「帰らない」
「結構冷えたし、風邪引くぞ」
「…あの子は、こんな寒空の下で五時間も…裸で放置されていたんだよ」
「…嫌な事思い出させるな」
 あいつは煙草を道端に捨て、グリグリと踏み潰し、新しい煙草に火を着けた。
 …今から五年前、あの子はこのガードレールに寄り掛かった状態で見付かった。
 全裸に剥かれ、レイプされ…殺された状態で。
 享年十五歳。
 抵抗した後は無かった。
 当然だ。
 あの子は病気のせいで、まともに体を動かす事が出来なかったのだから。
 殺害時刻は深夜二時。
 発見されたのは同日七時。
 …あの子はこの寒空の下、抵抗する事すら出来ず殺され、全裸で五時間も放置されていたんだ。
 …不意にあいつが膝を折り、煙草を咥えたまま手を合わせる。
「神は死んだんじゃないの?」
「生き返った」
「それは良かったね」
「…犯人も捕まったし、それを伝えたくて、な」
 あの子をレイプした犯人は、つい先日捕まった。
 捕まった男性は、ざっくり言えば狂人。
 捕まった時も別の少女をレイプしていた所を現行犯逮捕され、その男性のDNAとあの子の体内に残っていたDNAが一致したそうだ。
 彼は口元に笑みを浮かべ、目を閉じ、手を合わせる。
 私もまた、目を閉じた。
 …ねぇ。
 今日、終わらせるよ。
 全部全部。
 …全部、終わらせるよ。
「本格的に冷え始めたな。
 とっとと帰るぞ、リン」
「…ねぇ」
「ん?」
「…どうしてシンタは、ここにユウを捨てたの?」
 あいつは…シンタは何も言わず、吸っていた煙草を花束の前に置いた。
「…なんのつもり?」
「線香のつもり」
「あんた仏壇に煙草置いてんの?」
「まぁ良いだろ」
「良い訳無いでしょ」
「良いんだよ」
 シンタはくくくと笑う。
 さっきと、今までと…五年前と変わらない笑み。
「…どうしてシンタはユウを殺したの?」
 答えない。
「あんなに仲が良かったのに」
 答えない。
「付き合ってたんでしょ?」
 答えない。
「ねぇ」
 答えない。
「…」
 答えない。
「…答えろッ!シンタッ!」
「リンはユウの姉なんだろう?」
「そうだよッ!
 だから理由を聞いてるんでしょッ!?」
「だったら俺が理由を言う必要も、リンが理由を聞く必要も無い」
 シンタはくくくと笑う。
 変わらない笑み。
 どうして?
 どうして?
「どうしてシンタはそんな風に笑えるの!?
 まるで…まるで、自分は罪を犯してないって言うみたいに!」
「なぁリン、知ってるか?
 この道、ユウのお気に入りの散歩ルートだったんだぜ?」
 シンタは煙草に火を着け、フゥと煙を吐く。
「んで、ここがユウのお気に入りの場所なんだ。
 ほら、ここなら街が一望出来るだろ?」
 紫煙が街へと流れて行く。
 魂の尾みたいだ。
 ぼんやり、そんな事を思った。
「…俺がユウを殺したってなんで分かった?」
「…ユウの日記を見付けたの。
 殺される数日前に、シンタに殺して欲しいって書いてあった」
「それだけか?」
「…直接の死因が安楽死剤の投与だったの。
 まるでユウを苦しませない様、ユウの体を可能な限り傷付けない様…ユウを想って殺した様な殺し方」
「ご明察。流石刑事の卵」
「ユウの死因を知る為に刑事になったんだもの。これぐらい出来て当然よ」
「執念深いな」
 シンタはくくくと笑い、煙草を捨て、踏み潰し、歩き出す。
「どこに行くの?」
「自首だよ。
 リンにばれたんだ、逃げ切れるとは思ってねぇよ。
 …エスコート、頼むぜ」
「…ねぇ、シンタ」
「なんだよ」
「…ユウは、最期、どうだったの?」
「…笑ってた。
 幸せそうな、笑顔で」
「…そう。
 …シンタ」
「…なんだよ」
「…ありがとう。
 ユウを殺してくれて」
「…ああ」

 今は刑事一課に勤める私の、初めての功績は、
 私の妹が愛し、私が親友と呼んだ殺人犯を、自首させた事だった。


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