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鈴木 案菜さん

壁打ち書き。

性別 女性
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教科書の家出

17/10/08 コンテスト(テーマ):第144回 時空モノガタリ文学賞 【 事件 】 コメント:0件 鈴木 案菜 閲覧数:77

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彼女の国語教科書がなくなったことに気がついたのは、放課後だった。教科書は自分のカバンや机には見当たらなかった。彼女はひどく焦った。部活の先生には事情を説明し、教科書探しに精を出した。
教室のロッカーや教卓、掃除用具入れ、トイレ、ゴミ箱など思い当たるところを探したが皆無であった。日は暮れてきて、部活をしていた生徒たちが帰宅の準備を始めていた。
彼女は事の顛末を国語教師に話し、教科書が見つかるまでの間、教師が使っている教科書をコピーして使用することを許された。
「今日の二時限目にはあなたが教科書を使用している姿を、私はこの目できちんと見ていましたからねえ。あなたはいじめたれたり、いじめたりしていないわよね。誰かが盗むってことも考えにくいわね。変な事件ねえ。担任の先生には私から伝えておきます。あと、明日の朝までにはコピーをしておくから、今日はもう帰りなさい」
教師は彼女にそう伝え、彼女が国語科研究室を出ていくのを見送った。
「それで、あなたはいつまで隠れているつもりなのですか」
国語教師が呟くと、国語教科書がカーテンの隙間からのっそりと現れた。
「彼女が数学や英語にばっかり興味を持つのがいけないんですよ。僕も彼女に予習をされたい」
国語教科書は夕陽に照らされ、いつもよりも赤さを身に纏っているように見えた。


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