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嗚呼、愛しのアホどもよ

17/10/08 コンテスト(テーマ):第144回 時空モノガタリ文学賞 【 事件 】 コメント:0件 ヒカゲヒナタ 閲覧数:150

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それは突如としてもたらされた

「おい、聞いたか。来年から女子のスカート丈が長なるんやって」

思いも寄らぬ情報に、校内の男子達は驚愕した。この学校は近隣の学校と比べてもかなりスカート丈は長い方なのでそんな事は起こり得ないと誰もが思っていた。というよりもスカート丈が長くなるなんて発想自体が存在しなかった

「大事件やないか!!」

勝村はクラス内に響き渡るようないい声でそう言うと、3つ前の席に座る北見の下に駆け込む

「北見、どうしたらええ?」

こういう時、勝村は必ず北見に意見を求める。それは彼が保育園からの幼馴染であると同時に過去、水泳部偽装入部事件や柔道部黒帯パッチワーク事件、更衣室スケルトン化計画など数々のおバカ騒動を繰り広げた戦友でもあるからだ

「勝村、こんなんアカン。こんな事したらダメに決まっとる」
「お、おお!北見。」
「先生んとこに直談判に行く」
「俺も行くわ、北見」

慌ただしく教室を飛び出した2人は職員室を目指し駆け出した。
職員室に入ってくる2人を見つけた担任の中西が眉間にシワを寄せながら、来るなと右手を上げるジェスチャーを見せたが、2人は構わず中西に駆け寄り

「先生!!来年からスカートが長なるってほんまですか」
「ああ、よう知っとるな」
「やめてくれ、先生。やめてくれよ」

勝村と北見は中西の両腕をそれぞれで掴みながら精一杯の抗議をした。他の教師達は笑いながらその様子を眺め「アホが来たわ」と毎度の事というように傍観している

「お前ら来年3年やろ、こんな事しとらんで勉強せえ」
「最後の年に、こんなんずるいわ先生」

中西は勝村と北見の手を振り解くと「また、アホな事したら容赦せんで」と2人の背中を押すようにして職員室の外へと追い出した

肩を落としながら教室に戻ってきた2人は、帰りを待ち構えていた仲間達に直談判の結果を報告した

「アカンかった」

その言葉に仲間達からは音にもならない溜め息が漏れた。彼らも勝村や北見ほどではないが「男子(アホ)」なのだ。

すると北見が

「世論を動かすしかない」

突飛な発想にみんな呆気に取られていると、続けて

「大事なんは民主主義やろ、演説して世論を動かすんや」
「演説って…なぁ」

過去の事例から2人は必要以上に大ごとにしてしまう癖があると知っている仲間の間には徐々に温度差が生まれ

「俺は辞めとくわ。彼女になんか言われてもあれやし」
「俺も辞めとく」

と熱くなる2人を背に世間体を気にして積極的に演説に参加しようとする者は少なかった


翌朝、校門前での演説に集まったメンバーは結局6人程しかいなかったが、登校して来る生徒に向けて勝村は、いつにも増していい声で演説を始めた

「スカートを長くして偏差値が上がるんか?違うやろ。むしろ、やる気の低下で学力が下がってしまうと俺は思う」

演説に足を止める者は殆ど居らず、女子生徒に関しては「アホがおるわ」とその反応は冷ややかであった。そんな中、スーツを着て高そうなカメラを構えているおじさんを見つけたメンバーの1人が、手書きの登りを持ちながらチラシを配っていた北見に尋ねた

「あれ誰やろ?」
「ん?ああ、俺が呼んだんや」
「誰なん?」
「東根新聞の記者さん」
「新聞呼んだんか!」

やはり、大ごとにしてしまう北見の画策により翌日の朝刊に大きくこう書かれた

『実るか青春!スカート丈戦争』

事の経緯を説明する記事と共に、演説する勝村とその後ろで登りを持ちチラシを配る北見の写真が掲載された。もちろんのことながらこれを見たそれぞれの親達は朝から我が子に雷を落としたのであった


勝村宅

「お前、こんな事して恥ずかしいやないの!」
「オカン、これは戦いなんや」
「アホが!!」


北見宅

「何しとんねん!!」
「オカン、よう撮れてるやろ」
「アホが!!」


その後、担任の中西と校長からの呼び出しで大説教を聞くハメになってしまった勝村と北見だが、この事件を面白がった地元新聞社が次々と続報を出し、いつしか騒動は全国紙にまで広がりを見せた

この一連の騒動が世論を動かしたかは定かではないが、スカート丈の極端な延長は歩き易さや学校生活の観点から見直され、この学校では現状維持という結論が下された。これにより勝村と北見は男子生徒から絶大な人気を獲得し逆に教師や女子生徒からは今まで以上に大きな「アホ」の烙印を押されてしまうという結果になってしまった



そして

「おい、美術部がヌードデッサンやるんやって」
「大事件やないか!」

愛すべきアホ達の戦いは今日も終わらない。


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