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セレビシエさん

受験生です。 小説と生物が好きです

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ラスト・チャンス

17/10/07 コンテスト(テーマ):第145回 時空モノガタリ文学賞 【 財布 】 コメント:2件 セレビシエ 閲覧数:369

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「これ、落としませんでしたか?」
圭一が声のする方に振り向くと若い女がいた。髪は短く黒髪で少年っぽい感じだなと圭一は思った。手には赤い財布を持っていた。安物そうだった。
「あ、違いますよ。僕のじゃないです」
圭一は少しだけ笑ってそう言うと、また元の方向に振り向き直した。女はそうですかと笑っただけだった。圭一は少しだけ、財布を自分のものだと偽って、中に入っているお金を盗んでやろうかとも思ったが、ああ安物そうな財布では、入るものも入っていないだろうという結論になって財布は貰わないことにしたのだった。

翌日、圭一が同じぐらいの時間に、女に声をかけられた場所を通ると[その道は圭一の通学路だった]また、声をかけられた。
「これ、落としませんでしたか?」
振り向くと、昨日の女ではなく、今度は少し年のいった茶髪の女がいた。しかし手には昨日と同じ安物そうな赤い財布を持っていた。圭一は少し気味が悪くなって、自分のじゃないと言って足早にその場を立ち去った。

家に付くと、圭一はあの財布が気になりだした。よくよく考えてみたらどこかで見たような気がするのだった。しかし、どうにも思い出せないし、何より気味が悪いので、出来るだけ考えまいと努めた。しかし、今度は女たちの方が気になりだした。やはりあの女たちもどこかで見たことがあるような気がしてきたのだ。けれどそれも思い出せないまま、結局日付けは変わってしまった。

翌日圭一は通学路を変えて学校へ向かった。そうしたら幸いにして後ろから声をかけられることはなかった。

それから一ヶ月が経った。圭一は財布のことなど忘れかけていた。しかし気を抜いていつもの通学路に戻すと、またあの道で声をかけられた。
「これ、落としましたよね?」
強い口調だった。圭一はぎょっとして、おそるおそる振り返ると以前声をかけてきた女二人が立っていた。最初に声をかけてきた若い女のほうの手には赤い財布が握られていた。
「だから僕のじゃないって……」
「いいえ、貴方のモノです。私たちは覚えています、貴方がそれを落としたのを」
若いほうの女はそう言うと、圭一の前に赤い財布を突きだした。仕方なく圭一はそれを受け取った。圭一は中身が気になったので開けてみた。小銭が何枚かと何枚かのカード、そして1枚のレシートが入っていた。レシートはショッピングセンターのもので包丁とゴム手袋の2点を購入したらしく、日付けは3年前のものだった。ここで圭一はハッとした。そしてようやく財布や女たちのことを思いだした。しかしその事実は彼を震い上がらせた。何故なら女たちは死んだはずだったからだ。圭一は、女たちは自分が殺した多くの人間たちの二人だとこのときようやく思いだしたのだ。目を上げると女二人は居なかった。圭一は怖くなって財布を放り投げて家へ走り帰った。
家へ帰ると、手にべっとりとした血が付着していることに気付いた。どうやらあの財布についていたらしかった。
翌朝彼のもとに警察がやってきた。圭一が放り投げた財布に大量の血液が付着、そして包丁のレシート、更には圭一の個人情報が書かれたカードが入っていたからだった。
警察に連れていかれる途中に、圭一はあの女たちは自分に最後のチャンスを与えたのかもしれないと思った。


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このストーリーに関するコメント

17/10/07 木野 道々草

とても面白かったです。本作品は2000文字よりも短いと思うのですが、読み応えがあり、このような掌編をまた読んでみたいと思いました。赤い財布とは、血が付着した財布だったのですね。

17/10/08 セレビシエ

木野さんへ
ありがとうございます!長さとしては1000文字くらいしかないです。💦
コメントのおかげでモチベが上がりました!また読んでくれると嬉しいです。

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