1. トップページ
  2. 悲劇のヒロイン

柘榴さん

性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

悲劇のヒロイン

17/10/02 コンテスト(テーマ):第144回 時空モノガタリ文学賞 【 事件 】 コメント:0件 柘榴 閲覧数:152

この作品を評価する

 5年前、僕の幼馴染が誘拐された。公園で、僕の目の前で。
 捜査は難航し、今でも彼女は見つかっていない。
 彼女は僕の目の前で男に連れ去られた。責任を感じた僕はショックでしばらくは食事も出来ず、外にも出れなかったが、5年という歳月が僕の心を癒した。
 彼女には悪いと思うが、高校生らしく友達も作り、部活に打ち込み、そして彼女もできた。
 けれど何人違う女の子と付き合っても、幼馴染の亜希への好意が薄れる事はなかった。

 そんなある日、朝から母親が血相を変えて僕の部屋に駆け込んできた。

「亜希ちゃんが見つかったって……」

 一瞬、誰の事かと思った。
 けれど、すぐに思い出した。亜希、5年前に姿を消した僕の幼馴染。

 その日、すぐに僕は亜希の入院する病室へと足を運んだ。5年ぶりの再会という事もあり、少し緊張もしていたが、病室へ入った瞬間にその緊張は吹き飛んだ。

「久しぶり……だね」

 ベッドに腰掛けている少女は紛れもなく亜希だった。
 5年前からは大人びており、より女らしい雰囲気になっている。
 だが、僕の緊張を吹き飛ばしたのはそんなことではない。
 僕の幼馴染には、左腕がなかったのだ。

「鎖で左腕を縛られててね、逃げるために自分で左手を切り落として逃げるしかなかったの」

 何を使って、どうやって自分の左腕を切り落としたのかは怖くて聞けなかった。

「……けどね、別に逃げる必要は無かったんだ。誘拐されて監禁もされてたけど、私に溺愛したおじさんだったから何不自由なく生活もできてたし、私もあの生活に不満はなかった。ましてや左腕を捨ててまで逃げ出すような場所じゃなかった」

「なら、どうしてそんな犠牲を払ってまで」

「君が好きだから」

 彼女は笑顔でそう言った。その笑顔は少し悲しそうだった。

「私を見て可哀想、不幸な子だって同情したでしょ?君は優しいから、私みたいな哀れな子に同情する、憐れんでくれる。だから、そんな私のお願いを断ろうなんて思わないよね」

 彼女は、逃げ出すために左腕を切り落としたのではない。可哀想な、哀れな、悲劇のヒロインとなり、それを武器にして僕に告白をしている。

「……君が好き。私の左腕としてずっとそばにいて。可哀想な幼馴染の、たった一つの願いだよ」

 そんなの、断れるわけがないじゃないか。
 僕は頷く。そして、静かに一言告げた。

「そんなことしなくても、僕は君が好きだったよ」


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン
アドセンス