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和倉幸配さん

ショートショート好きが高じて、自分でも書いてみたいと思うようになりました。精進して、少しずつ上達したいと考えています。よろしくお願いします。

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ドラマチックな恋愛

17/10/02 コンテスト(テーマ):第144回 時空モノガタリ文学賞 【 事件 】 コメント:0件 和倉幸配 閲覧数:229

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 彼と付き合い始めて、もうすぐ六年になる。

 今でも毎週、休みの日にはデートをしている。でもそれは、朝起きたら顔を洗うのと同じで、もはや習慣みたいなものだ。
 付き合い始めた頃は、前の日からワクワクして一晩中洋服選びをしていたが、最近ではそんなこともすっかりなくなっていた。

 いわゆる倦怠期というやつだろう。
 大学時代に交際がスタートして、二人とももう二十代後半になった。これだけ長く付き合えばとっくにプロポーズされていても良いはずなのに、彼はそんな素振りを全く見せない。二人の仲はまるで、交通渋滞に巻き込まれた車のようだ。

 私は考えた。私たちの間にはちょっとした「事件」が必要だと。そうすればきっと何かが動き出すだろう。恋愛はやはり少しくらいドラマチックでなければ。

 私は、彼の前から姿を消した。
 別に行方をくらましたわけではない。普通に仕事に行って、普通に家に帰るというこれまで通りの生活をしていたが、彼との連絡だけを全て絶ったのだ。
 デートをキャンセルして、それからは彼からのメールや電話にも返事をしなかった。家の電話にかかってきても、取り次がないよう親に頼んだ。共通の友人を通じて、私の様子を探ろうともしたみたいだが、それにも一切答えなかった。
 ここまですれば、彼は何かを感じてくれるだろうか。彼が行動を起こしてくれるきっかけになれば良いのだが。

 それからしばらくたったある週末、彼が突然私の家にやって来た。
「一体どうしたんだ。心配したんだぞ」
「ごめんなさい」
 そう言って、私は目を伏せる。
「何かあったのか」
「ううん、何でもないの。ただ最近、あなたの気持ちがわからなくなって、それで……」
 俯いた私に、彼はしばらく何も言わなかった。何か思案しているようだった。
 ややあって、思い切ったように彼は言った。
「そうか、わかった。俺の気持ちをちゃんと伝えるから、一週間待ってくれないか」

 次の週末、彼と久しぶりのデートをした。
 いつもと変わらないデートコースだったが、彼は終始、少し緊張したような面持ちだった。
 そして、帰り際に彼は、私に向かって居住まいを正した。
「結婚して欲しい。君を幸せにするから。俺についてきてくれないか」
 そう言って、小さな箱を差し出す。多分、指輪が入っているのだろう。
 私は、この瞬間をずっと待っていた。
 そして、一呼吸置き、微笑んで答えた。
「お断りします。私達、お別れしましょう」

 呆然とする彼を残して、私は踵を返し、歩き出した。
「これで私も、新しい出会いに向かって動き出せるわ」
 私は、前だけを見て、羽ばたくように歩き続ける。
「プロポーズされた日に終わる恋愛なんて、最高にドラマチックじゃない」


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